10月から本格化した値上げの影響で、広島でも閉店に追い込まれる店が出ている。
新型コロナで落ち込んだ観光客の需要が回復しない中、追い打ちをかけたのが円安による食材価格の高騰だった。商品の値上げに踏み切れば、客足が遠のく悪循環に。やむにやまれぬ決断に至った事情を取材した。

円安で肉だけでなく全ての食材が値上りし最終決断

大手飲食チェーンや小売りで、ビールなどの飲料や食品など、10月から値上げされた品数は実に6500以上。24年ぶりの円安も重なり、まさに「値上げの秋」

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そんな中、苦渋の決断をした店がある。
広島市中区のステーキ専門店「ボトムステーキ」

赤身の肉の味と、しっかりした食べ応えのあるステーキが人気で、多くの常連客に愛されていた店だ。しかし、物価高騰を受けて11月での閉店を決めた。

赤身ステーキ
赤身ステーキ

Q:今までも値上げをしたことは何度もあったと思うが、閉店に踏み切った理由は? 

ボトムステーキ広島八丁堀店・丹下利孝店長:
最終的には円安による食材の高騰ですよね。今まではお肉だけが上がっていたんですけど、すべての食材が上がってしまったんで

新型コロナで落ち込んだ観光客の需要が回復しない中、追い打ちをかけたのが円安による輸入肉の高騰だった。

丹下利孝店長:
少々上げたんじゃ結局追いつかないんですよ。ちょこちょこ値段は上げたんですけど、これ以上お客さまに迷惑をかけるわけにはいかないし…

この店は、ほとんどの肉をアメリカかカナダから輸入していて、元々1枚およそ1000円で提供していた看板商品の「赤身ステーキ」は、仕入れ価格の上昇に伴い現在は1680円で提供している。5年間で価格が700円近く上がった。

2022年、すでに輸送費の高騰で1度値上げに踏み切っていて、さらなる価格転嫁は限界と判断したという。

丹下利孝店長:
少しずつお客さんが増えてきて、常連になってくださったお客さんもたくさんいるので、本当に申し訳ないんですけど…

食材だけでなく、光熱費も上がり…価格を上げるたび客足が遠のく悪循環

ソーセージやビールなど物価高騰は多岐にわたり、10月から食品を中心に暮らしに関わる幅広い品目に影響が広がった。店の価格を上げるたび客足が遠のく悪循環に陥り、人件費などを削っても企業努力だけで賄えないという。

丹下利孝店長:
光熱費、ガス代、水道代全部が上がっているんで。結局利益が元々薄いんですけど、それがもっと薄くなってしまいました。お店を続けても、客足が返ってくるのかは分からないし、コロナもいつ終わるか分からない状態なんで、はっきり言って先が見えないところがありますよね

ソフトドリンクとアルコール飲料の価格は10月から1杯最大50円上げざるをえなかったが、ステーキの価格は最後の感謝の意を込めて据え置く方針。しかし、常連客に惜しまれつつも11月、店を閉じる。

円安や海外情勢などさまざまな要因が絡みあって続く物価高騰の流れ。我々消費者はもちろんだが、店を経営する側も苦しい状況に立たされている。

(テレビ新広島)

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