パートナーシップ制度。男性同士もしくは女性同士が人生のパートナー関係を宣誓する、いわゆる“結婚の宣誓”を行政が公に認める制度だ。福井・越前市は10月1日、県内で初めてこの制度を導入した。「素直にうれしい」ー。制度に申請した男性カップルは、この日のためにお揃いの指輪を購入していた。差別のない、誰もが暮らしやすい社会を考える。

相手がいないことにしたり、彼女に置き換えたり…男性カップルが感じる生きづらさ

裕紀さん:
ーープロポーズの言葉は?
覚えているよ。付き合おうじゃなくて一緒にいよう

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越前市に住む英明さん(43)と裕紀さん(33)、男性カップルだ。交際期間は2022年で6年目。取材に訪れた9月30日、翌日に越前市が導入する「パートナーシップ宣誓制度」の申請に向けて準備を進めていた。

英明さん:
都会の制度だと思っていて、まさか福井で導入されるとは。いいなとは思っていた

両親をはじめ、職場や近所の人たちからは、同性パートナーについて理解があると話す。ただ一方で、生きづらさも感じている。

英明さん:
カミングアウトができないと仲良くなれない。うそというか、隠してるというか

裕紀さん:
相手がいないことにしたり、彼女に置き換えたり、小さいうそが重なる。(相手)がいないことにするのに慣れてくる。そういう人は多い

日本国憲法では「婚姻は両性の合意にのみに基づいて成立」とし、同性婚は認められていない。越前市のパートナーシップ宣誓制度には法的効力はないが、市営住宅への入居や、税の証明書をパートナーが受け取る際に委任状が不要になるなど、一部では法律上の夫婦と同様の扱いとなる。

多様性をテーマに 様々な立場や年代の人が参加するファッションショー

9月17日、越前市内で多様性をテーマにしたファッションショーが開かれた。主催したのは、女性向けファッションブランドを展開する越前市の企業と越前市。性的少数者や外国人など、様々な立場や年代の人が参加した。

タイ人の留学生:
(実際に)やってみると、自分らしく感じられる。前はこうやっていいかな、変な人に見られてないか(心配だった)。服装から中身も女性だと気付いた

県内高校に通うブラジル人:
好きな人と住むことはいい。みんなが幸せなのが大事

参加した越前市の女性も「越前市が先に導入するのはいい。徐々に広がり、福井が良い県になって、多くの人に住んでほしい。新幹線も来ることだし」と肯定的に受け止める。

10月1日、パートナーシップ宣誓制度の正式導入の日、越前市役所前で記念イベントが開かれた。パートナーシップ制度は9月末現在、全国232自治体が導入している。北陸地方では石川・金沢市、白山市に次いで越前市が3番目となった。申請したカップルに渡される受領証の1つをデザインした大学生は。

受領証をデザインした大学生:
越前市を表現するために菊のイラストを使って、きれいな虹色で多様性を表現しました。太陽のようにみんなが明るく生活できればと願いを込めた

越前市民:
ジェンダーに限らず、難病などマイノリティーの方も、ジェンダーからボーダレスな社会が広がればいい

制度の導入に至った背景として、越前市の担当者は職員に対する研修や市民向けの講演会を開催するなど啓発活動を続けてきたと話す。

越前市 市民協働課・吉江久恵さん:
人権問題は簡単に理解を得られるものではない。地道な啓発活動が必要。少しずつ活動を続けてきて、市民にも意識が浸透してきた

受付初日の3日。男性カップルの英明さんと裕紀さんは、この日のためにお揃いの指輪を購入していた。

2人が申請書にサインすると、「おめでとうございます」と市役所の職員たちは拍手を贈り新しい門出を祝福した。2人の顔にも自然と笑みがこぼれる。

英明さん:
不思議な気持ち、うれしい。うれしくて自分たちは顔を出して、次に続けばという思い

裕紀さん:
パートナーとして認めてもらえたことが率直にうれしい

この日、受領証を受け取った女性カップルにも話を聞いた。

ハンドルネーム・竹内パンダさん(33):
やっと目に見える形になり実感が沸いてきて、それに恥じないよう2人で幸せな生活を築けたら

暮らしやすい社会になるために必要なことを尋ねた。

英明さん:
カミングアウトという言葉もなくなり、何も言わなくてもわかってくれる世の中になれば

ハンドルネーム・竹内パンダさん(33):
目指すところは同性婚。人はみな同じ生き物、差別偏見の壁が全てなくなり、皆がお互いの幸せを喜び合えるような社会になったらいい

越前市では10月5日までに、5組の同性カップルがこの制度を申請した。

(福井テレビ)

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