「暗い」とか、「怖い」というイメージを持たれやすい「廃墟」。そのイメージを変えるため、「廃墟」とされる場所をめぐって写真撮影を行い、魅力を発信するグループがある。
歴史を感じる場所、未来を考える場所だと感じてほしいー。
観光資源として、多くの人に足を運んでもらおうと活動するグループを取材した。
100年前完成の旧日本海軍施設…当時の姿のまま
険しい道を歩いて、カメラを向ける人たち。主に長崎・佐世保市で活動している市民グループ「佐世保廃墟倶楽部」だ。
佐世保廃墟倶楽部のメンバー:
こっちのほうが陽のあたりがいいのがあったが、部分的に生えていて、きれいですね。ひび割れの感じもおもしろい。今まであった新しいものもきれいだと思うが、朽ちながら自然と絡みつくのが、すごく美しいなと思う
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「佐世保廃墟倶楽部」は、いわゆる「廃墟」の「暗い」「怖い」というイメージを、「写真を見ることで変えてほしい」と、2014年に結成。県の内外の「廃墟」とされる場所を巡り、写真撮影を行っている。
2022年8月には、新型コロナの影響で中止となっていた写真展を、3年ぶり開催した。
この日、佐世保廃墟倶楽部が向かったのは、国の重要文化財「旧佐世保無線電信所=針尾送信所」。
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佐世保廃墟倶楽部・松邨勝也さん:
古い、古さ。これ以上古いものはない
佐世保廃墟倶楽部・カオススタイルさん:
かっこいいですね、造りがすごくいい造りをしている
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針尾送信所は、ちょうど100年前に完成した旧日本海軍の施設で、高さ136メートルの鉄筋コンクリートの無線塔が3基ある。100年経ったいまでも、ひび割れなど劣化はほとんどなく、当時の姿のまま残されている。電信室と呼ばれる通信施設も残され、「廃墟」好きにはたまらない場所だ。
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佐世保廃墟倶楽部・伊藤陽太共同代表:
一番有名なのは、長崎の軍艦島だったりするんですけど、やっぱり針尾の無線塔っていうのも全国的に有名で。好奇心をくすぐられるというか、とても楽しい。きれいに残っていくのもいいけど、少しずつ形を変えて崩壊していって、最終的には影も形もなくなって、それも廃墟の魅力の1つと思っている
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“隠されていたもの”に日の光を当て観光資源に
佐世保廃墟倶楽部のメンバーは10人。戦争遺構など、いわゆる「廃墟」で撮った写真や動画を、投稿サイトにアップしている。
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メンバーが次に向かったのは、佐世保市街と佐世保港を一望できる「弓張岳展望台」。弓張岳展望台からは西海国立公園に指定されている九十九島の島々の大パノラマを見ることができるが、メンバーのお目当てはもちろん絶景ではなく、展望台近くに残る「廃墟」だ。
展望台に隣接して残されているのが「田島岳高射砲台跡」。昭和19年(1944年)に作られ、来襲した敵機を迎撃する高角砲が装備された。周囲の穴倉は弾薬庫として使われ、高角砲がどこを向いていても素早く給弾できるよう、工夫されていたという。
昭和20年(1945年)6月29日の佐世保空襲では、計139発を発砲している。
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メンバーらは、コンクリートや砲台を固定していた金具や近くにある弾薬庫跡に使われているレンガなど、当時のものづくりの技術力の高さを感じていた。
「廃墟が今の平和のありがたさを伝えている。それが魅力の1つ」とも話す。
佐世保廃墟倶楽部メンバー:
連絡用通路のための「ずい道」。登って超えていかなくていいように、まっすぐ最短距離で作ってある。すごいですよね。この辺の砲台跡はみんなそう、砲台跡からつながっている、砲台同士でつながっているところもある
佐世保の周辺には、「廃墟」が保存状態の良いまま残されている。メンバーはシャッターを夢中で切った。
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佐世保廃墟倶楽部・MARIさん(活動名):
廃墟は怖いというイメージがあるし、廃墟に行ったらなんか出ました? とか聞かれることが多いが、そういうところじゃなくて歴史を感じる場所、未来を考える場所というのを感じてほしいなと思う。
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佐世保廃墟倶楽部・伊藤陽太共同代表:
今までは負の遺産として隠されていたものだが、それに日の光が当てられている観光資源として。だから多くの人に実際に足を運んでいただいて、たくさんの人に見て、色んなものを感じてもらいたい。来るだけでもすごく伝わるものがあると思う
メンバーの思いは、「廃墟を新たな観光スポットに」。
これからも「廃墟」の魅力を発信していく。
(テレビ長崎)