天文や雲、雪の結晶など、気象にとことん詳しい男性が石川県にいる。その知識の深さと幅広さも注目だが、何よりも好きなことを突き詰め、追い求めるその生き方が面白い!
自称「空の遊び人」という男性に話を聞いた。

出会いは大型台風14号が迫る中…

2022年9月20日、大型の台風14号が迫る県内。

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取材班が台風の情報をつぶやく、ある投稿を見つけた。

プロフィールを見ると「雲好き高じて気象予報士に…」とある。気になったので、会いに行った。

石川テレビ取材班:
初めまして、よろしくお願いします!

出迎えてくれたのは、つぶやいていた本人。金沢市に住む村井昭夫(むらい・あきお)さん(61)。

出迎えてくれた村井昭夫さん
出迎えてくれた村井昭夫さん

石川テレビ取材班:
村井さんって、何者なんですか?

村井昭夫さん:
自称「空の遊び人」と言ってますが、正確に言うと「無職」です。ははは。

石川テレビ取材班:
空の遊び人?空って、特に何に詳しい方なんですか?

村井昭夫さん:
一応、雲をいまメインでやってます。あとは、雪の結晶と天文の3本立てで…

自称「空の遊び人」を語る村井さん
自称「空の遊び人」を語る村井さん

本人はアマチュアと強調するが、気象予報士の試験にも合格したスゴイ人。部屋の棚には、気象に関する本や、自分で撮影したという南十字星の写真も…。

村井昭夫さん:
きれいでしょ、南十字星。最小限のカメラで撮ってきたんだけど、これを今度、きちっと撮りに行きたい。自分の時間を自分のやりたいことに費やせるっていうのは、とても大事なことだし、生きがいにもなるし、楽しいですね。

子どもの頃、星の魅力に取りつかれた村井さん。とにかく天体に携わっていたいと、大学卒業後は中学校の理科の教師になった。

結婚し、子どもが生まれた後も、休みを使って海外へ。

日食やオーロラを見に行くなど、飽くなき探求心を持ち続けた。

そんな村井さんが開発したのが、「Murai式人工雪結晶生成装置」だ。加賀市の「中谷宇吉郎 雪の科学館」に展示されていて、雪の結晶を人工的に作ることができる。

村井さんが開発した装置
村井さんが開発した装置

この装置は、世界で初めて人工の雪を作った中谷宇吉郎の装置から発想を得て作ったそうだ。この開発が後に、村井さんの人生に大きな転機をもたらす。

装置によって作られた結晶がモニター
装置によって作られた結晶がモニター

村井昭夫さん:
大学院に行くために2年間休職できるっていう制度ができて、それを利用して、ちょうどその頃、北見工業大学から雪の結晶でうちに来て研究しないかという誘いがあったんで行きました

46歳で大学院に入学し、雪の結晶の研究で博士号を取得することに…。

石川に戻ってからは再び、教師を続けていたが…

村井昭夫さん:
56歳になったころに、もう一度何か自分自身の視野とか知識深めることができないかと…。早期退職して専門の道というか、興味のあるところに深く入っていければいいんじゃないかと思って辞めました。

56歳からでも「興味関心」のために、まい進!
56歳からでも「興味関心」のために、まい進!

「辞めました」と、さらりと話す村井さんだが、家族はどう思っているのだろうか。

石川テレビ取材班:
早期退職されるって聞いた時、どう思われました?

妻・知子さん:
好きなことやるのはいいなって。やっぱり人生の中で一番大事なことだから、大賛成しました。

村井昭夫さん:
じゃあ、この後の生活どうするのって話にはならなかったですね。もう、ほったらかしなので、ははは

そんな村井さんが、7年前に建てたこだわりの自宅には…

村井昭夫さん:
トイレの中でも空が見えるっていう。

村井家のトイレの天井にも「空」
村井家のトイレの天井にも「空」

さらに、ベランダに出ると…

村井昭夫さん:
これは、うちの望遠鏡が入っている天体観測所になります。

ベランダに天文観測所!?
ベランダに天文観測所!?

ベランダには、念願の天文観測所。メインとなる望遠鏡の値段は外車が買えるぐらいだそうだ。

村井昭夫さん:
買うやつも、買うやつやと思うけど、ははは。お金じゃないんですよね。有り金、全部使ってでも何かしたいと思う。それが、アマチュアなんですよね

村井さんは現在、石川県立大学の客員研究員だ。給料は一切でないが、場所を借りて自分の好きな研究ができる。その村井さんが今、最も力を入れているのが「雲の分類」だ。

村井昭夫さん:
2017年にWMOという世界気象機関が新しい雲の分類を作りました。その分類で、日本の一部では混乱が生じているので、それを今、整理しようと思っているんです

WMOが発表した雲の名前は、ラテン語が由来。それを日本でどう呼ぶか、基準が定まっていないそうだ。そこで村井さんは、あらゆる雲の写真を撮影し、1冊の本にまとめた。

村井昭夫さん:
これが、今年3月に出した「新・雲のカタログ」という本です。100種類ちょっとあるんですけども、写真と簡単な解説が書いてあります

村井昭夫さん:
例えば、「波頭雲」という雲は、ラテン語で「フラクタス」と呼んでいるんだけど、日本語でどう呼ぶかはバラバラ。それを何とか統一できないかと活動しています

県立大学には、娘・七星さんも働いているというので話を聞いた。

村井さんの娘・七星さん:
元々、私が小中高通して理科が好きだったのが、完全に父親の影響。雲の形の名前を簡単に言えるようにはなりましたね

村井さんの娘・七星さん:
私は、自由にしているスタイルが、父にはとても似合っていると思うし、夜な夜な望遠鏡見たりとかしているのは、うらやましいなと思います

夜な夜な望遠鏡をのぞく村井さん
夜な夜な望遠鏡をのぞく村井さん

村井昭夫さん:
天気がいい時は、いつの間にか夜が明けて白々としている時もある。僕はアマチュア。学術的に役に立つというより、「遊び」なので、いかに楽しくやるかです。遊びのタネは、尽きないっていうやつですね。ははは

好きなことを、とことんやり尽くす…。まだまだ村井さんの「遊び」は終わらない。

(石川テレビ)

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