死者は東日本大震災を上回る7100人に上る可能性――。岩手県が9月20日、こんな推計を発表した。三陸・日高沖の日本海溝沿いで、想定されうる最大クラスの地震・津波が起こった場合の被害想定だ。

東日本大震災上回る死者7100人…津波などによる被害を県が推計

この被害想定は、県が2022年3月に発表した最大クラスの津波による浸水想定をもとに推計したもの。具体的には、国が想定を示している
1.日本海溝
2.千島海溝沿いでの地震
3.東日本大震災のマグニチュード9以上
の3つの超巨大地震をモデルに、津波などによる被害をシミュレーションした。

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それによると、「日本海溝沿い」を震源にした地震が、帰宅時間などと重なる「冬の夕方・午後6時ごろ」に発生した場合、死者の数は東日本大震災を上回る7100人に上ると推計されている。
このうちのほとんど、7000人は津波による死者で、久慈市で4400人、宮古市で2100人などとなっている。

一方、全員が発災後すぐに避難を開始し、積雪の影響がなければ、死者の数は922人となり、87%減らすことが可能という試算も示している。

この被害想定をめぐり、達増知事は「犠牲者を出さないことを震災以降の目的にしてきた」とし、「市町村とともに取り組んでいきたい」と話した。

達増知事:
予想されている犠牲・被害より少ない被害に持って行くためには、県と市町村が力を合わせなければならない

死者最多想定の久慈市「非常に厳しい数字」防災計画見直す方針

岩手県内で最も多い、4400人の死者が出ると想定された久慈市。9月20日、遠藤譲一市長が会見を開き「非常に厳しい数字」だとして、防災計画を見直す方針を示した。

なぜ、久慈市で被害が大きくなるのか。現地を取材し、その要因を探った。

県の被害想定の発表を受けて、20日、久慈市の遠藤市長は…

久慈市・遠藤譲一 市長:
久慈市分が半分以上ということで、大きな数字となっているので、これは市民にとっても非常に厳しい数字という受け止めをされると思う。死者を出さないような対策を市民とともに考えて、実行しなければならない

想定を受けて遠藤市長は、ハザードマップの改定や自主防災組織立ち上げの支援など、防災対策を見直す方針を示した。

今回、久慈市で4400人の死者が出ると想定されたのは、「日本海溝沿い」を震源とする地震で津波が発生した場合。
県の検討部会の委員で、地域防災を専門とする岩手大学の齋藤徳美名誉教授は、東日本大震災との違いを次のように指摘する。

検討部会・齋藤徳美 岩手大名誉教授:
今回は日本海溝部北部という、近い所での津波。当然高い津波が行って浸水域が広がる。東日本大震災での陸前高田の被害の形が、久慈で想定される

“避難場所まで間に合わない”との声も…避難ビルやタワーの整備検討

久慈市は、東日本大震災で被害が大きかった陸前高田市と同じように、中心市街地が海から近い平野部に形成されている。
想定では、久慈市役所で最大6.85メートル、つまり2階の天井付近まで浸水するとされている。

県の想定では、久慈市の沿岸地域に津波が到達するまでには、おおむね30分。
その間に高台などに避難をすれば命を守ることができるが、実際には、避難場所までどれくらい時間がかかるのか?取材班が計ってみた。

井上智晶アナウンサー:
久慈市内は近くに高い所がないので、すぐにはどこに逃げればいいか、なかなか分からないですね

土地勘のない井上智晶アナウンサーが、沿岸部から歩いて避難場所までたどり着いたのは、地震が発生したと想定した時刻から20分後。

移動に時間がかかる高齢者や障がいがある人は、間に合わないおそれもある。この現状について市民は、「老人が多いから、どう考えても間に合わない」と話す。

久慈市内には避難タワーが1つあるが、今回想定された津波より低く、現在は使われていない。

遠藤市長は、新たな避難ビルや避難タワーの整備について検討したいと話す。

久慈市・遠藤譲一 市長:
近場で避難するところ、高台がないので、高層の避難場所あるいは避難タワーを中心部に作っていく、確保していく対策が重要

また、市では高層の建物を所有する民間の団体に対し、避難場所としての活用に向け、今後さらに協力を依頼していくとしている。

(岩手めんこいテレビ)