全国的に教員不足が続く中、島根県大田市の高校では県立学校最高齢71歳の先生が、現役として学校の現場に立ってる。長年にわたり教育を支え続けるその原動力を探った。

教員歴50年以上 定年後も7校に在籍

和田育子先生:
おはようございます。お世話になります。私でいいんでしょうか?

午前8時、邇摩高校。出勤してきたのは養護助教諭の和田育子先生だ。

この記事の画像(11枚)

和田育子先生:
白衣に着替えられる先生は少ないんですけども、これを着ていると何があっても汚れても平気なので

さっそうと白衣に身を包んだ和田先生は現在71歳。島根県内の県立学校では最高齢の先生だ。教員歴は50年以上で、これまでに出会った生徒の中にはプロ野球選手も。

和田育子先生:
いい写真見せてあげます。これ和田毅選手でしょ、松坂大輔選手でしょ

学生時代からの夢をかなえ、20歳で養護教諭となった和田先生。60歳で定年となったあとも非常勤で養護助教諭として学校の現場で働いている。現役時代には5校、定年後も7校に籍を置いた大ベテラン。職員室へ向かう足取りも全く年齢を感じさせない。

50年以上教育現場を支えた
50年以上教育現場を支えた

全校生徒の健康チェック 休み時間は大忙し

養護助教諭はいわゆる保健室の先生だが、業務は多岐にわたる。

和田育子先生:
食事制限はないですので

教員:
わかりました、普通に飲食OKで

和田育子先生:
そう思ってちょっと遅い時間にしました

他の先生や職員の健康診断の日程調整、そして水道の水質検査などを駆け足で済ませていく。

和田育子先生:
朝はちょっとバタバタしますけど

養護助教諭として今、特に気を使うのが…。

和田育子先生:
コロナの関係で欠席が出てくると、ちょっと時間がかかりますね

全校生徒約250人分の健康状態をチェックし、パソコンに入力する。そして…。

生徒:
失礼します。先生、頭痛いです

授業の合間の休み時間。わずか10分だが、保健室には次々と生徒がやってくる。

和田育子先生:
和室貸してあげる

生徒:
和室?あれベットじゃないから、痛いんだよね。おやすみ~!

和田育子先生:
どこが悪いかってほど元気なのに、時々のぞくからね!

生徒ひとりひとりと言葉を交わす。多いときは1日に30人がやってくるという。

和田育子先生:
お昼は食べないです。ずっとそういう生活しているから大丈夫ですよ

続く教員不足で再雇用 世代を超えた生徒との交流も

和田先生が邇摩高校に着任したのは2月。しかし、ロッカーを見ると…。

記者:
お名前違いますよね

和田育子先生:
あ、これはですね、赤ちゃんが生まれた彼女の代わりにここに来ているので。産休補助なんです、私

定年退職後、和田先生は欠員が出るたびに声がかかり、今回もこの学校の養護教諭が産休に入ったため再雇用され、急きょ2月に赴任。ロッカーも前任の先生のものをそのまま使っている。

島根県では近年、慢性的な教員不足が続いていて、4月時点で欠員が32人。県教委は和田先生のように、60歳で定年を迎えた教員の再雇用を増やすなどして急場をしのいでいる。

邇摩高校 中澤雅美教頭:
養護教諭の補充を探すのは大変なんですけれども、いい先生に来ていただいて本当に助かっています

定年退職後も毎年、教員として現場に立ち続ける和田先生。その原動力とは。

生徒:
この前、お父さんが先生を見て「あの先生まだいるの!?」って言ってました

和田育子先生:
お父さんの名前、なんていうの?

生徒:
お父さんは…

和田育子先生:
あんたが娘!?

生徒:
はい!

和田育子先生:
あらぁ!そうか、元気なの?

生徒:
はい元気です、覚えてますか?

和田育子先生:
うん、お父さん覚えててくれたんだ!あらうれしい。よろしく伝えて

保健室から無限に広がる人と人とのつながりが、先生を後押ししていた。

和田育子先生:
やめる機会をなくしたこともあると思うんですけど、頼まれて断れなくて。でも多分、単純にこの仕事が好きなんだと思います

今年で72歳になるベテラン先生は、今日も保健室から学校を見守っている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

鳥取・島根の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。