コロナ禍となり、家庭や学校の環境が変わり、若い世代の不登校や自殺が過去最多となる中、孤立をなくして人とつながる場所を作りたいと、富山・高岡市で古本屋を営む男性がいる。男性が目指すのは、「話せる古本屋」だ。

憧れだった古本屋を開業…悩み相談も

午前11時前、高岡市の小さな古本屋に明かりがともる。
「古本なるや」の店主・堀田晶さん(48)は、サラリーマンとして働いていた頃、出張先で訪れた古本屋の空気感にひかれ、2018年に憧れだった古本屋を開いた。

空気感に惹かれ、古本屋を開いた堀田晶さん
空気感に惹かれ、古本屋を開いた堀田晶さん
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取り扱う本のジャンルは、手に取りやすいものや富山ゆかりの本など様々だ。いろんな人たちに立ち寄ってほしいという思いから、あえてテーマは決めていない。

棚には様々なジャンルの本が並ぶ
棚には様々なジャンルの本が並ぶ

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
話せる古本屋ということで、しんどさを抱えてる人たちが、気を張らずに話ができるような場所

同僚や後輩から悩み相談を受けた経験から、人の役に立ちたいと、堀田さんは生活困窮者の自立を支援する仕事もしている。(現在もNPO法人で週3回、電話相談で生活困窮者の支援に取り組む)

コロナ禍となり、不登校や引きこもり、DVの被害に苦しむ人など、なるやに相談に訪れる人は増えたという。

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
今まで感じなかったストレスが、暴力に進んでみたり、子どもに向けられたり。家庭内での話が増えた。話してもらうところから始めなければ、当事者はしんどくなる一方

将来への悩みを持つ大学生 話すことで出た答えは…

一人の大学生が店を訪れた。

店を訪れた大学4年生の山口優希さん
店を訪れた大学4年生の山口優希さん

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
いらっしゃいませ

山口優希さん:
こんにちは

大学で彫刻を学んでいる山口優希さん(大学4年生)は、1年間のヨーロッパ留学から帰国後、将来について悩むようになった。

山口優希さん:
自分が空っぽだと思うのが一番怖いみたい。何も得てないんじゃないかって思ったり

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
何も得てないってことは、絶対ないと思うけどね

山口さんの悩みを聞く堀田さん
山口さんの悩みを聞く堀田さん

自由に創作を楽しむ人たちを目の当たりにし、留学での成果を期待する周りの声に応えることができなくなった。

山口優希さん:
頑張らなきゃって思っているのかもしれないし、頑張らなきゃと思っていても、それを「いいね」って言ってくれる人がいるわけではないから…

堀田さんと何度か話をするうちに、まっさらな自分になって、「いま、ここでできることを追求していこう」と考えるようになったという。

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
自分で気づけたの大きいよね

山口優希さん:
そうだね。結構、フラットになった

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
いい顔しとっからね

山口優希さん:
本当?

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
いい顔しとられっちゃ

そして1時間後…

(Q.「なるや」はどんな場所?)
山口優希さん:

止まって分析できる場所。自分が生きてる時に、ただ走るんじゃなくて、なるやさんと話すことで、もう1回自分の中を見つめ直せる

山口優希さん:
また来ます。今度は本を買いに来ます(笑) じゃあ、また

「人と人をつなぐ場所でありたい」

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
調子はどうですか?

堀田さんは、SNSや電話でも相談に乗り、必要な支援とつなぐケースもある。

この日、電話をかけていたのは、DV被害者の女性だ。警察が入り、パートナーとの関係は解消された。しかし、精神障害の一つ「PTSD」を患い、今も不安を抱えていることから定期的に連絡を取っている。

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
外に出られたってこと? 震えみたいなものとか言うとったやん…

多くの人の悩みに応えるうち、自身も体調を崩すことがあるという堀田さん。この夏は2週間店を閉め、何もしない時間を作って、自らを見つめ直した。

多くの悩みに応えてきた堀田さん 自らを見つめ直す
多くの悩みに応えてきた堀田さん 自らを見つめ直す

そんな時、堀田さんを助けてくれたのは、話を聞いてくれる仲間の存在だったという。だからこそ、「人と人をつなぐ場所でありたい」と考えている。

射水市の障がい者就労支援施設の職員や利用者とも、仕事を依頼したことをきっかけに交流が生まれている。

施設関係者:
なるやさんからお仕事頂いて

「古本なるや」店主・堀田晶さん:
値札になる。ハンコ用意してもらって、ハンコ打つ作業そのものが、利用者の賃金になる

(Q.なぜ、そこまで?)
「古本なるや」店主・堀田晶さん:

なんなんですかね。本当に自分でも思います。喜んでくれたら自分もうれしいし、人の話を聞くことで自分のこともわかることで、良しとしてるんですかね

立ち止まり、誰もが自分を見つめ直せる場所。
「古本なるや」は、きょうも人と人をつないでいる。

相談は予約も受け付け、相談料を定めてはいるが、生活に苦しむ人や悩みを抱える人から取れないのがほとんどで、堀田さんは、朝早くからスーパーで棚出しのアルバイトをしているという。

1人で悩みを抱え込まず、話をしに来てほしいと、毎月「自殺について考える会」も開いていて、詳しくは「古本なるや」のウェブサイトに掲載されている。

(富山テレビ)