「日本の少子高齢化という社会の中で市場環境の変化がどうなるか読めない」。富山市に本社を置く医薬品パッケージ大手・朝日印刷は、日本国内の市場の先行きに懸念を抱きながら、15年前から海外市場への進出準備を始めていた。

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その目は今、急成長するアジア市場、とりわけマレーシアに向けられている。

東南アジアの中心に位置するマレーシア。人口3300万人のこの国は多民族・多宗教が共存し、街は活気に満ちあふれている。一人当たりのGDPは近年右肩上がりを続け、好調な半導体輸出と海外からの投資が経済を押し上げている。世界銀行の予測によれば、2028年から30年頃までには高所得国の水準に到達するという。

M&Aで海外進出、ゼロからのスタートは避けた理由

朝日印刷は医薬品や化粧品のパッケージを手掛け、国内でトップシェアを誇る企業だ。海外展開について、朝日重紀社長は「将来的に当社が海外に展開しないといけないという時期が来た時に、その時にやはり海外へ出ようというのでは遅い」と語り、早くから準備を進めてきた。

数年にわたる市場調査を経て、成長著しいマレーシアへの本格進出を決めた朝日印刷。「ゼロから作り上げるというところには非常に時間とお金がかかる」との判断から、工場を新設せず現地企業の買収(M&A)を選んだのである。

2019年に最初のM&Aを実施して海外向け医薬品パッケージ製造に乗り出し、さらに2023年にはマレーシア第3の都市イポーにあるキンタプレス&パッケージング社を買収した。

単なるコスト削減ではない、技術力に着目したM&A戦略

朝日印刷のマレーシア進出は、多くの企業が海外に生産拠点を設ける際の目的である「製造コスト削減」とは一線を画している。同社は経済成長に伴い高まるギフトや高級品向けパッケージの需要に着目し、その分野に強みを持つキンタプレス社を買収した。

「印刷、打ち抜き、のり付けという工程については朝日印刷とほぼ同じ技術レベルでやっているんですけども、フィニッシング、表面加工という部分では出来上がる見栄えが全然違ってくる」と、朝日印刷の担当者は現地企業の技術力を評価する。

特に「リジットボックス」と呼ばれる高級時計などに使われる硬い素材のパッケージは、朝日印刷グループ内ではキンタプレス社でしか製造できない特殊技術を要するもの。「これを我々の強みとしてグループ内でシナジー効果を大きく生み出していきたい」と、この分野に今後注力していく方針だ。

現地スタッフとの協働が生み出す新たな挑戦

キンタプレス社の工場では、トレーディングカードや紙袋など多様な製品も手掛けている。M&Aにより始まった富山の企業と現地スタッフによる新たな挑戦は、互いの技術を共有し試行錯誤を重ねながら進められている。

現地従業員は「朝日印刷と同じようにもっと良い商品を作り、一緒に働くことを望んでいます。高い技術が要求されるが、どのようにそれを成し遂げるか試行錯誤することでより知識を習得することができる。それが私たちにとっても良い挑戦になっている」と語る。

日本企業との協働に対しては「日本の会社の皆さんと一緒に働けることにとても満足しています。とても親切で困難があるときは一緒に解決してくれます」と、親日国ならではの相性の良さも感じられる。

現地ならではの課題と今後の展望

しかし、海外ならではの課題も見えてきた。「製造環境的にいうと日本と比べるとオープンな環境になっているところもあり、そういったところは東南アジアらしい」と現地担当者は指摘する。

現在の取引先は現地企業が中心で特別厳しい要求はないものの、「この先、日系のメーカーですとかグローバルメーカーとの取引を進めていくにあたっては、環境面での改善というところもしっかり進めていかなければならない」と、日本品質の実現に向けた課題も認識している。

さらに日本の紙が使えない環境での材料選定も課題だ。現地スタッフと協力しながら、これらの課題を乗り越え、今後はマレーシアからさらなる展開を目指す。

「今現段階ではインドネシアの市場のほうに少しずつ化粧品向けの包装資材、パッケージングの展開を考えている。ASEAN地域への拡大というところでマレーシア以外の国への展開も少しずつ広げていきたい」と、朝日印刷はASEAN全体を見据えた戦略を進めている。

日本国内市場の伸び悩みが予想される中、世界を照らす希望の光となりつつある東南アジアで、富山の技術と現地の強みを融合させた新たなモノづくりの挑戦が始まっている。

(富山テレビ放送)

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