北海道で最も長い路線の東端に、まるでアニメのような景色の中を走る列車がある。
JR根室本線(滝川~根室)のうち、釧路駅と根室駅を結ぶ135.4kmは「花咲線」と呼ばれ、別寒辺牛(べかんべうし)湿原を進む姿はまさに絶景。

(出典:根室市)
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8月の終わりごろにTwitterでも話題になったが、多くの人は、このような湿地帯によく線路を作ったなと感心するのではないだろうか?

そもそも釧路~根室間を結ぶ鉄道は1921年(大正10年)に全線開通。1991年に「花咲線」という愛称が付けられた。
1993年には、湿地の保存に関する国際的な取り決めであるラムサール条約に「厚岸湖・別寒辺牛湿原」が指定される。この湿原には、ヨシ、スゲ、ミズゴケ類が繁茂し、アオサギやマガモといった水鳥を始め、タンチョウ、オジロワシなどが生息。オオハクチョウなどの渡り鳥も飛来し、様々な鳥たちの天国になっているという。
そして2021年に開業100周年を迎え、魅力発信の取り組みを進めているという。

(出典:根室市)
(出典:根室市)

花咲線を走るのは「キハ54形」というディーゼルカーなので、送電線がなく広大な景観の魅力を存分に味わえる。
終点の一つ手前にある東根室駅はJR最東端の駅で、そこから線路は西に曲がり、最後の根室駅からは路線バスを使って日本最東端の納沙布岬へと足を伸ばすこともできる。

(出典:根室市)
(出典:根室市)

最近では2020年3月に冠水しました

それにしても湿地帯になぜ線路を敷くことになったのか?強い雨が降ったら線路が冠水するのではないか?
根室市の担当者に聞いてみた。

――なぜ湿原に線路を敷くことになった?

根室や厚岸からの水産物等を輸送するのに、陸路だと道路状況が悪く、海路だと濃霧で安全とは言えないため、線路の敷設が周辺住民より国に嘆願され、つくられました。


――地盤は安定しているの?

明治時代より道路の整備は始まりましたが、ひとたび雨が降ればぬかるみにより膝が埋まってしまい、また、冬は積雪に閉ざされてしまい、海路は濃霧迷朦の中を進む、危険な航路でした。陸路、海路ともに安全な旅行や物資の往還ができない状態でしたが、現在、地盤は安定しており、列車が安全に走行できる状態です。


――大雨が降っても冠水しない?

過去に大規模な低気圧の通過によって線路の一部が冠水したことがあります。直近の事例では、2020年3月に低気圧接近に伴う降雨と気温上昇の影響により、花咲線でも一部区間で冠水し、運転を見合わせる事象が発生しています。この際には、他にも釧路湿原を走る釧網線の線路も冠水しました。


――1日に花咲線は1日何本運行している?

1日あたり16本運行しています。

花咲線の車窓から取った写真(提供:根室市)
花咲線の車窓から取った写真(提供:根室市)

これからの季節も様々な見どころがあります

――列車からはどんな動物が見られる?

車窓からはエゾシカやオジロワシ、キタキツネなどの動物たちを目にすることがあります。
別寒辺牛湿原は、タンチョウやオジロワシ、ヒグマなど日本でも北海道だけでしか目にできない動物たちが息づく湿原です。


――これからの季節は、花咲線でどんな美しい風景が見られる?

今回ご紹介いただいた別寒辺牛湿原の他、「落石(おちいし)海岸」では、まるで異国のような断崖の丘と晴れているとブルーの海がどこまでも続く海岸線(と落石岬)が見えます。夏には冷涼な気候により生み出される海霧に覆われスコットランドの海岸線を思わせる光景になることも。他にも様々な見どころがあります。
 

花咲線の車窓から撮った写真(提供:根室市)
花咲線の車窓から撮った写真(提供:根室市)

――Twitterで話題になったことをどう思う?

花咲線では沿線自治体とJR北海道が連携して利用促進に取組んでおり、「地球探索鉄道花咲線」と題し、様々な情報発信を行っております。
皆様に花咲線の魅力が伝わり、直に体感していただくきっかけとなることを期待しています。
 

湿地帯ということで余計な心配をしてしまったが、過去に線路の一部が冠水したことはあるものの、地盤は安定しているそうだ。

鉄道の旅を考えている方は花咲線を目的の一つに加えてみてはいかがだろう?
旅行気分だけでも味わってみたい人には、花咲線の公式サイトが公開している動画がオススメ。
4分半のダイジェストと、2時間半の完全版が、それぞれ夏・冬バージョン用意されている。