住んでいる地域で自然災害が発生した際に、水道やガス、電気が止まってしまう可能性がある。そのような事態に備えて、ある程度の備えはしておきたいところだ。

そんな時に役立つサイトが、今年4月に公開された。農林水産省が手がける「災害時にそなえる食品ストックガイド 単身者向け」(以下、「食品ストックガイド 単身者向け」または「単身者向け」)だ。

農林水産省が手がける「災害時にそなえる食品ストックガイド 単身者向け」
農林水産省が手がける「災害時にそなえる食品ストックガイド 単身者向け」
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単純にストックするべき食品を羅列するだけでなく、1人暮らしでもストックしやすいテクニックも紹介している。

ストックのポイントと制作のきっかけについて農林水産省食料安全保障室の光廣政男さんに聞いた。

ポイントは普段食べている食品の“ちょい足し”買い

食品ストックというと、アルファ米や缶詰パンなどの非常食を想像するかもしれない。

しかし、「食品ストックガイド 単身者向け」では、主食や主菜、副菜その他それぞれにおいて、「カップ麵類」「エナジーバー」「サラダチキン」など、日頃から食べている人が多く、1人暮らしでも比較的そろえやすいであろう食品が挙げられている。

「災害時にそなえる食品ストックガイド 単身者向け」より
「災害時にそなえる食品ストックガイド 単身者向け」より

「防災や備蓄というと、特別なものを準備しなければいけないと感じてしまいますが、我々が推奨しているローリングストックでは、いつも食べているものを“ちょい足し”買いすることで簡単に食品ストックをすることができます。例えば、普段の買い物で1食分多く買ってみる。それを何度か続けると、家庭備蓄で必要とされている最低3日分、目標1週間分の食品が自然とストックされていきます」

水に関しては飲料水と調理用水を合わせて1人1日約3リットル程度の備えを、好きなお茶や清涼飲料水と合わせて、かつ「水を必要とする食品(カップ麺など)をストックしている際は多めに」とアドバイスも加えている。

備蓄のテクニックについては、家族世帯と異なる部分もあるようだ。

「単身者は、家族世帯と比べると外食や中食が中心という方が多いと考え、コンビニ等で簡単に手に入る食品でストックする方法を意識的に掲載しています」

3日分のストックが確保されたら、それ以降は普通に買い物をし、賞味期限が早い食品から食べていく「ローリングストック」を行っていけばいいとのこと。

「災害時にそなえる食品ストックガイド 単身者向け」より
「災害時にそなえる食品ストックガイド 単身者向け」より

「紹介している食品に関しては、食文化・生活文化の研究者や防災に携わっている方などに監修として入っていただき、最近の動向を伺ったり、食料安全保障室の若手職員の意見を聞いたりしながら、決めていきました。食生活は人によって異なると思いますので、それぞれのライフスタイルに合わせて置き換えられる『ヒント集』になればと思っています」

また、ストック場所についても「食品ストックガイド 単身者向け」では「キッチンやダイニングの近くに収納する必要はありません。賞味期限がまだ先の食品は、クローゼットのスキマやベッドの下に収納しましょう」と、解説。

「災害時にそなえる食品ストックガイド 単身者向け」より
「災害時にそなえる食品ストックガイド 単身者向け」より

防災アイテムに関しても、1人暮らしの収納を考え、普段から使える調理器具やアウトドア用品など、手軽にそろえやすいアイテムについてもアドバイスしている。

「単身者用の住宅だと狭い、収納が少ないといった課題があると思い、食品だからといって必ずしもキッチンに収納する必要はない、ということも伝えたいと考えました。食品ストックを柔軟に捉えていただけたらと思います」

目指したのは“省庁っぽくないサイト”

「食品ストックガイド 単身者向け」が制作されたきっかけは、農林水産省が平成31年3月に公開した「災害時に備えた食品ストックガイド」(以下、「食品ストックガイド」)だった。

「『食品ストックガイド』で家庭備蓄の普及促進を進めてまいりました。家族世帯を想定して制作したのですが、さらなる推進を検討する中で、20~30代の若い世代の単身者にも意識してもらえるようにするべきではないかという話が出たのです」

光廣さん自身も単身者で、「食品ストックガイド」に携わるまでは家庭備蓄に関して強く意識したことがなかったという経験も、ひとつの気づきになったそう。

「家族世帯であれば、お子さんや高齢のご両親のことを考えて災害対応に関心を持つこともあると思うのですが、単身者だと日々の生活の中で家庭備蓄などを意識しにくいと感じたのです。そこで、少しでも関心を向けてもらえるように、単身者に特化したサイトの企画を始めました」

「食品ストックガイド 単身者向け」を制作するうえで意識したのは、“省庁っぽくない”サイトであることだったという。

「内容的には、『食品ストックガイド』と大きくは変わっていないのですが、より興味を持って見てもらいやすくするために、親しみやすいデザイン、平易な表現を意識しました」

左が「災害時に備えた 食品ストックガイド」の表紙、右が「単身者向け」のトップページ
左が「災害時に備えた 食品ストックガイド」の表紙、右が「単身者向け」のトップページ

「食品ストックガイド」の表紙と「単身者向け」のトップページを比べただけでも、その違いは一目瞭然だ。また、「食品ストックガイド」は冊子やPDFで公開していたが、「単身者向け」はサイトの形式に変更している。

「単身者の方にも手軽に目にしてもらえるよう、ワンクリックでつながるサイトで、ページをスクロールすれば情報が見られるつくりにしています。文字量も多くなりすぎないように内容を吟味して、今の形に落ち着きました」

なお、「単身者向け」と銘打っているが、「これから家庭備蓄に取り組む家族世帯にも、ぜひ活用してほしい」と、光廣さんは話す。

「最低限必要な情報をまとめた『単身者向け』のサイトを見ていただくと、家庭備蓄を始めやすいと思います。3人家族であれば、食品や水の量を3倍にして考えていただければいいので、単身者に限らず活用してもらえたらうれしいです」

食品ストックが非常時の“安心感”につながる

「食品ストックガイド 単身者向け」を公開してから、食品ストックにより興味を持ってもらいやすくなったという感触があるという。

「とある展示会で食品ストックのPRブースを出した際に、『単身者向け』をリーフレットにして配布したところ、イラストが目を引いたのか、手に取ってくださる方がとても多かったんです。非常に好評で、デザインから見直した甲斐があったなと感じています。

『単身者向け』は、内容を絞って構成しています。これを見てもっと知りたいと感じていただけたら、より詳細な内容が記載されている『食品ストックガイド』を見て、ステップアップしていただけたらと思います」

(画像:イメージ)
(画像:イメージ)

近年は、毎年のように大きな災害が発生している。防災や備蓄に対する意識も、以前よりは高まっているのではないだろうか。

「日本は公的な支援やボランティア支援が比較的早く届く国だと思いますが、発災直後は対応し切れない部分もあります。そのような状況下で、食品ストックが意味を持ってくるのです。一人ひとりが備えることで、より災害対応力の強い社会になっていくのではないかと考えています。

災害時はパニック状態になってしまうかもしれませんが、その時に最低限の水や食料があれば、気持ちが落ち着き、安心感を得られるのではないでしょうか。はじめから完璧を目指す必要はありません。まずは、“ちょい足し”買いを始めてみる。その行動をきっかけに、少しずつ防災や備蓄の意識を高めていってもらいたいですね」

災害時にそなえる食品ストックガイド 単身者向け
https://nippon-food-shift.maff.go.jp/foodstock/

■「災害時に備えた食品ストックガイド」
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/attach/pdf/guidebook-3.pdf

取材・文=有竹亮介(verb)