保護責任者遺棄致死などの罪に問われている福岡県篠栗町の無職、赤堀恵美子被告(49)。

起訴状などによると、2020年4月、知人の碇利恵被告(40)に指示して、当時5歳だった碇被告の3男・翔士郎ちゃんに十分な食事を与えず餓死させたほか、碇被告から約200万円をだまし取るなどした罪に問われている。

碇被告が借金をしていたママ友が証言 ”証拠隠滅”も

8月29日、福岡地裁で開かれた初公判で、起訴内容について裁判長に問われた赤堀被告は、全て否認し無罪を主張した。

赤堀恵美子被告:
指示はしていません

裁判長:
詐欺や窃盗については、どうですか?

赤堀恵美子被告:
違います。お金を騙し取ったということはないし、窃盗の件も頼まれておろしてきたので、そこも違います

8月30日に開かれた第2回公判には、検察側の証人として赤堀・碇両被告の共通の“ママ友”が出廷。碇被告に度々借金を頼まれ、合わせて11万5000円を貸したことなどを証言した。

赤堀・碇両被告の共通の“ママ友”が検察側の証人として出廷
赤堀・碇両被告の共通の“ママ友”が検察側の証人として出廷
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検察:
どういった経緯で貸しましたか?

証人の“ママ友”:
赤堀さんが碇さんに「お金借りるんやけ、ちゃんと言わなよ」と言って、碇さんが正座をしました

検察:
誰がどう返済しましたか?

証人の“ママ友”:
赤堀さんが持ってきました

検察:
赤堀被告が持ってきた理由は

証人の“ママ友”:
赤堀さんが預かったから

碇被告が借金に訪れる際には、ほぼ毎回、赤堀被告が同席していたという。さらにこのママ友は衰弱した様子の翔士郎ちゃんを目にしていて、頭痛を訴える翔士郎ちゃんに対し、赤堀被告がこう話しているのを聞いていた。

赤堀恵美子被告:
目に見える症状じゃないし、本当かわからん。嘘つく時もあるもんね~

頭痛を訴える翔士郎ちゃんに対し、こう話したという
頭痛を訴える翔士郎ちゃんに対し、こう話したという

検察:
翔士郎ちゃんの様子は?

証人の“ママ友”:
立ち上がるのもきつそう、何かに捕まらないと立てないようで、ゆっくりと立ち上がっていました

体重10.2kgまで痩せ細り、餓死した翔士郎ちゃん
体重10.2kgまで痩せ細り、餓死した翔士郎ちゃん

5歳児の平均のほぼ半分だという体重10.2kgまで痩せ細って餓死した翔士郎ちゃん。翔士郎ちゃんが亡くなってすぐ、赤堀被告はこんなことを言い出した。

赤堀恵美子被告:
碇さんとのLINEを消してるから、消しとった方がいいよ。LINEの復元って出来るんかね?

証人のママ友は、赤堀被告に証拠隠滅ともとれる依頼をされたと証言した。

家庭訪問を「碇さんはうつ病」と追い返す

続いて出廷したのは、翔士郎ちゃんがかつて通っていた幼稚園の教師。教師は翔士郎ちゃんが亡くなる半年前に家庭訪問をした際の様子を語り、応対したのは母親の碇被告ではなく赤堀被告だったと証言した。

赤堀恵美子被告:
なんですか押しかけたりして。碇さんはうつ病で、そっとしてほしい

幼稚園の教師は赤堀被告に追い返されたと証言した。その翌日、翔士郎ちゃんを幼稚園に送ってきたのも赤堀被告だった。前日の家庭訪問について赤堀被告は…。

赤堀恵美子被告:
碇被告が過呼吸になった。家庭訪問されると困る。碇被告も家庭訪問に来てもらうのは困ると思っている

翔士郎ちゃんを心配した家庭訪問を頑なに拒み続けた赤堀被告。幼稚園が送った事務手続きの手紙についても「こういうことをすると碇さんが不安がる」などと強い口調で抗議し、一家と外部の関わりを排除したという。

赤堀被告との出会いは…夫の浮気調査と“ボス”の存在

そして、8月31日に開かれた第3回公判。母親の碇被告と、ママ友の赤堀被告がそれぞれ証言台に立ち、全面対決の構図となった。

検察側:
緊張してますか?

碇利恵被告:
してます

裁判長:
赤堀被告と会う前は専業主婦?

碇利恵被告:
はい

支配されていたとされる母親の碇被告が検察側の証人として出廷し、赤堀被告と相まみえることになったのだ。Tシャツに黒の長ズボンという出立で現れた碇被告は、はっきりした口調で赤堀被告と関わるようになったきっかけを証言した。

検察側:
赤堀被告との出会いは?

碇利恵被告:
次男のお遊戯会で、近くに赤堀がポツンといた

検察側:
最初の印象は?

碇利恵被告:
正直言っていいですか?ダサいなと思いました

出会った時点の関係は「支配」とは正反対の構図だったが、その後、赤堀被告は様々な嘘を重ねて碇被告を周囲から孤立させていったという。

検察側:
2017年、赤堀以外のママ友と関係が悪化とあるが、どうして?

碇利恵被告:
赤堀から、ママ友があんたの文句言いよるよと言われました。「次男が泣かせるから遊ばせたくない」とか

孤立に続いて始まったとされるのが、経済的な搾取。赤堀被告は翔士郎ちゃんを餓死させた罪のほか、碇被告に「夫が浮気をしている」などと嘘を吹き込み、浮気の調査費用などの名目で合わせて約200万円をだまし取るなどした罪にも問われている。

金銭を要求する際、赤堀被告は「ボス」と呼ぶ第三者を登場させていた。

検察側:
ボスとは?

碇利恵被告:
ボスはヤクザの元奥さんで、何でも子どものトラブルを裁判して、金で解決してくれると

検察側:
浮気調査の金額は?

碇利恵被告:
ボスが旦那の調査費用を出してくれていて「家が一軒建つくらいの額」と。3500万円くらいだと思っていた

検察側:
領収書とかの書面は?

碇利恵被告:
なかったです

検察側:
なんか変だなとかは、なかった?

碇利恵被告:
なかったです。赤堀に払ってると思ってなくて、ボスに払ってると思っていたので

翔士郎ちゃんへの暴力、食事制限はあったのか

経済的に困窮した碇被告の家庭は、食事までも管理されるようになる。餓死する5カ月ほど前、空腹に耐えかねて冷蔵庫の食べ物をつまみ食いした翔士郎ちゃんを赤堀被告は叱りつけ、投げ飛ばしたという。

赤堀恵美子被告:
お前は何でそんなことしたんだ!お前は5歳じゃない!お前はもう飯食うな!これから3日間は食うな!

亡くなる間際には、合わせて2週間以上も食事を与えられなかったという翔士郎ちゃん。

2022年6月に行われた碇被告の裁判では、赤堀被告による支配が認定され懲役5年の判決が言い渡されて、碇被告が控訴している。一方、碇被告が証言に立つ間、赤堀被告は終始メモをとっていて、ノートは文字でびっしりと埋め尽くされていた。

その赤堀被告が証言台に立った。

弁護側:
金を受け取っていたのは本当?

赤堀恵美子被告:
受け取っていません。(碇被告が)「ボスから金を借りているので支払いにあてている」とは聞いていました

また、碇被告が「ヤクザの元妻」だと証言していたボスの存在については。

弁護側:
面識は?

赤堀恵美子被告:
ありません

弁護側:
碇被告に聞かされていた?

赤堀恵美子被告:
はい、そうです。「男性の方」と

弁護側:
関係性は?

赤堀恵美子被告:
一緒になりたいと思っていると聞いたが、詳しい名前を聞いたことはないです

ボスは女性ではなく男性で、碇被告が話を持ち出した人物だと主張した。また、翔士郎ちゃんを投げ飛ばしたとされる暴力行為についても否定し、身体のアザの原因は碇被告の暴力だと証言した。

弁護側:
翔士郎ちゃんを掴んで投げたことは?

赤堀恵美子被告:
していません。アザが出来ていたので「どうしたと?」と翔に聞いたら「ママに叩かれた」と言っていた

さらに赤堀被告は、餓死につながる最大の要因である碇被告と子どもたちへの「食事制限」についても関与を否定した。

弁護側:
食事制限についてあなたが指示したことは?

赤堀恵美子被告:
ありません。どのようにやっていたかわかりません

9月1日に開かれた第4回公判。

母親の碇被告がこの日も出廷し、翔士郎ちゃんの痩せ具合について「亡くなる1カ月前から赤堀被告が毎日のように家に来て、翔士郎ちゃんの裸を見て確認していた」と証言した。さらに痩せたのは「ママのせいやけんね」と、翔士郎ちゃんに話していたと明らかにした。

支配の構図を全否定し、一貫して無罪を主張しているママ友の赤堀被告。果たして「支配」はあったのか。

(テレビ西日本)

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