存続か廃止か…。いま岐路に立つローカル線。JR西日本は、大きな赤字を抱える路線について初めて収支を公表した。

赤字ローカル線はどんなところを走っているのか?そして、存続させるには何が必要なのか?記者たちが実際に「赤字ローカル線」に乗って取材する。

赤字続くも…新幹線がやってくる

第2回は、京都府北部の東舞鶴駅と福井県の敦賀駅を結ぶJR小浜線。全長84.3キロの路線だ。2022年に全線開通100周年を迎える小浜線だが、1日の1キロあたりの乗客は991人。赤字額は年間で18億1000万円に…。

今回“小さな旅”をするのは藤井凌記者。小浜線の福井側の入り口、JR敦賀駅から出発した。さっそく乗車してみると、意外に利用客は多い印象だ。

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車窓からの眺めは抜群、電車はきれいな日本海を望みながら次の駅へ。

すると続々に高校生が乗車してきた。夏休みの午前、車内は部活動に向かう生徒たちでいっぱいになった。

小浜線は2021年、通勤通学の時間を避け、最大で2割の減便を実施。昼間の運行本数は1時間に1本程度だ。

通学に利用する高校生たちに話を聞いた。

(Q.減便になったと思うのですが)

女子高生:
帰るときに1回逃してしまうと、2時間くらい待たないといけないので

(Q.小浜線がなくなってしまうのではと言われていますが)

男子高校生:
小浜線が廃線になると不便になる人は多いと思います。本数を減らしてもいいから、少しは残して欲しいなと思います

生徒たちが駅で降りていくと、車内は途端にガラガラになった。

小浜線は沿線の人口減少に加えて、舞鶴若狭自動車道が全線開通したことにより利用客がさらに減った。と、ここまでは多くの赤字ローカル線が抱える課題なのだが…。

実は、ひとつ明るい話題がある。2年後、小浜線が接続する敦賀駅まで北陸新幹線がやってくるのだ。

JR西日本と小浜線の沿線自治体はこのチャンスを生かして、観光業で活性化を図ろうとタッグを組んで取り組んでいる。

取り壊し予定だった木造駅舎 憩いのカフェに

藤井記者が途中下車したのは、京都府舞鶴市の「松尾寺駅」だ。一日あたりの駅の利用者は68人(2019年)だ。

藤井凌 記者​:
こちらの駅舎は木造です。今どき珍しいですね。中に店があるようです

歩いていくと、そこにはレトロなカフェが。

元々取り壊す予定だった駅舎を利用し、NPO法人が無償で譲り受けてオープンした。地域住民や観光客の憩いの場になっていて、この日は平日にもかかわらず満席だった。

藤井凌 記者​:
(カフェの店内見ながら)木造の駅舎ですごく味がありますよね

お客さんに話を聞いた。

女性客:
もったいないですよね、この駅を壊すなんて。すごく素敵なお店になって、私はすごく良かったなと思います

NPO法人「駅舎と共にいつまでも」 福村暉史理事長:
この駅の活性化をどう図っていくかが大きな課題だと思っています。JR小浜線の活性化のために頑張っていきたい

駅の中に理髪店!? 「おかえり」と出迎える店長兼駅長

続いて藤井記者が降りたのは、1日120人あまりが利用する福井・小浜市の「加斗駅」だ。

藤井凌 記者​:
駅の中に理髪店が入っているのですね

塚本朝子さん:
そうなのですよ、切符を切りながら散髪もやっているのです

塚本朝子さんは駅舎内で理髪店を営みながら、切符の販売など駅の管理・運営を行っている。せっかくなので、藤井記者も髪を切ってもらいながら話を聞くことに。

(Q.元々の理髪店は、今とは違う場所だったのですか)

塚本朝子さん:
最初は、この駅の目の前のところで理髪店をしていました。駅の立ち退きになることが分かったら、JR西日本から駅の方で散髪をしてみないかと…。その代わり切符の方もしてもらわないといけないから覚えてもらって、ということになってこの場所に来ることになった。主人がいたときは、主人が散髪をして私は切符(駅)に専念していた

利用客が駅舎に来るたびに、塚本さんは温かく「おかえり。きょうは暑いね~」と迎える。こうして25年もの間、たくさんの利用客を見守ってきた。

しかし、JR西日本は経費削減のため近い将来、駅を完全無人化にする方針だという。

塚本朝子さん:
なくなるのは本当に寂しいこと。ずっと見守ってきたから、これからも自分の体が続く限り頑張りたいなと思います

地元の人々がさまざまな形で支えているJR小浜線。地方の厳しい現実の中、北陸新幹線を“起爆剤”に復活することはできるのだろうか。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年8月3日放送)

関西テレビ
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