年々進化を続け、人気が高まる冷凍食品。

消費額もうなぎのぼりですが、実はいま、この冷凍食品を「保管する場所」が不足する危機的な状況となっている。

果たして、私たちの食卓に影響はあるのだろうか。

冷凍食品が人気すぎて保管場所がない問題が発生
冷凍食品が人気すぎて保管場所がない問題が発生
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■過去最高1.3兆円の消費額「冷凍食品」

記者リポート:無印良品に来ています。ありました、冷凍食品コーナー。ずらっと商品が並んでいます。

人気の高まりが止まらない食卓の味方「冷凍食品」。

奈良県橿原市の無印良品では、冷凍食品の取り扱いが年々増加し、この店舗には80種類の商品が揃っている。

無印良品 イオンモール橿原・川中亜友さん:人気なのがこちらの唐揚げになります。醤油唐揚げと塩こうじ唐揚げの2種類。塩こうじが非常にふっくらしていて美味しいのでオススメです。

日本冷凍食品協会によると、冷凍食品の消費額は新型コロナの流行以来増加を続け、去年は過去最高の約1.3兆円となった。

そんな中、こだわり抜かれた「高級冷食」も登場している。

このお店で一番売れているのが…「リブロースステーキ」。

お値段はなんと3901円(税込)だ。

Z's MENU 阪急うめだ本店・高田里菜さん:フライパンで少し焼くだけで食べられる手軽さとお肉の柔らかさにすごく人気があります。ちょっと高級なので、贈答用ですとか、ちょっとご友人が来た時に出す形も多いのでそういったプレゼント用としても人気です。

去年の冷凍食品の消費額は過去最高の約1.3兆円
去年の冷凍食品の消費額は過去最高の約1.3兆円

■人気すぎて冷凍食品の「保管場所」が無い!?

盛り上がっている冷凍食品業界ですが、今、ある「危機」が迫っている。
それが「冷凍食品の保管場所不足」。

一体、どういうことなのか、取材班は大阪府茨木市にある巨大倉庫「GLP ALFALINK 茨木」に向かった。

記者リポート:こちらフットサルコートなんですが、実は広大な物流センターの敷地の一部なんです。

敷地内には3棟の倉庫があり、延床面積はあわせて約32万平方メートルと関西最大級!

もちろん、冷凍食品の倉庫としても活用されているが…

日本GLP 営業開発部・駒俊志さん:3棟あるうちの2棟の1階に関しては、ほぼ冷凍・冷蔵が入っている状態となっております。去年できた物件は100%埋まっておりますし、ことしできた物件も92%まで埋まっております。

完成は今月にも関わらず、3棟ある倉庫のほぼ全てのスペースが成約済。

こうした状況は、都市部で顕著となっていて、冷蔵倉庫などのスペースの埋まり具合を示す「庫腹占有率(こふくせんゆうりつ)」は東京では100%を超えるなど満杯の状態になっている。

冷凍食品を作っても、私たちの食卓に届くまでに「保管しておく場所」が無くなる危機が、すぐそこまで迫っている。

専門家はいまの状況が続くことで食卓への影響を指摘する。

日本経済研究所・河野瀬功研究員:冷蔵倉庫の供給がひっ迫して増すと「預かれる荷物」と「預かれない荷物」があって。この状態が悪化すれば、「商品点数の減少」と「商品単価の上昇」の可能性がありえる。

都市部では倉庫が満杯の状況
都市部では倉庫が満杯の状況

■作っても「倉庫に空きがない」冷凍食品メーカーも困惑

すでに、頭を悩ませている冷凍食品メーカーもある。

セルビスフーズ・大瀬戸美生工場長:(自社倉庫は)非常に手狭な一時保管庫のような形でして、外の冷凍倉庫会社に間借りさせていただいて。ことしに入ってから逼迫しているようでして、今まで取り引きがあったところも「数量制限をかけさせてくれ」だとか。

大阪府岸和田市にあるこちらのメーカーでは、おせち料理など、多くの冷凍食品を手がけていますが、倉庫の空きがなくギリギリの状態だという。

セルビスフーズ・大瀬戸美生工場長:業界同士の横のつながりで『どこか倉庫に空きがないか』と探すが、なかなか良いお返事をもらえることが少ないです。(作ったものを)廃棄をしないように、取引先にも本来だったお受けしてもらえないところを、早めに受け取ってもらうなど、工夫している。

冷凍食品メーカーの倉庫も満杯
冷凍食品メーカーの倉庫も満杯

■-25℃の倉庫は完全無人で管理

冷凍食品ブームの陰で、深刻な影響が出始めている「保管場所不足」の問題。

取材を進めると、解決の糸口になるかもしれない「画期的な冷凍倉庫」があるということで、埼玉県にある「LOGI FLAG TECH 所沢I」という倉庫に向かった。

X NETWORK・轟木和誠さん:ここが-25℃帯の保管区画になっています。

冬の南極より寒い、-25℃の世界で大量の冷凍食品が管理されている。

(Q.人が作業するのはきついんじゃないですか?)
X NETWORK・轟木和誠さん 人が作業するとなると10分~15分すれば、手足の先の感覚がなくなってくる人が継続して作業できる環境ではない。

この施設は24時間体制で、次々と荷物が運び込まれてきますが、無人で動いているのだ。

倉庫は無人で運用
倉庫は無人で運用

■まるでSF!1人で全てを管理できる近未来事務所

その秘密が、まるでSF映画に出てくる指令室のような事務所にあった。

X NETWORK・轟木和誠さん「ここにいながら、庫内の中・外を一括して管理できるような仕組みが整っている事務所です。この1画面で今、弊社の作業進捗状況が可視化できるようなモニターになっております」

そして、事務所でも徹底的な「無人化」が進められているようだ。

(Q.事務所に人はどのくらいいる?)
X NETWORK・轟木和誠さん:私1人だけですね。人手をかけずにやることで冷凍倉庫のビジネスとして成立していく。ここにいながら現場の全てを管理できる「次世代型の管理」にしていきたい。

知らぬ間に危機的な状況となっていた冷凍食品の「置き場所」問題。

最新技術を活かした倉庫が増えることで問題の解決へと導くことはできるのか。

まるでSF映画のような事務所
まるでSF映画のような事務所

■2030年には中小「冷食メーカー」倒産の危機?「行政が補助を」と鈴木氏

冷凍食品をめぐってはさらなる危機が訪れるおそれもあるということだ。

2030年までに冷凍庫で使われる「特定フロンガス」の全廃が決まっている。

日本経済研究所の河野瀬功さんは「大手の倉庫会社は『脱フロン』の対応を進めているが、資金面などから中小規模の会社は対応できず倒産の可能性もある」と指摘する。

ジャーナリスト・鈴木哲夫さん:「冷凍倉庫ビジネス」ですよね。倉庫だけを作るよな、行政の支援が必要かなと。一方で法律規制をするんだから、害が出るならそこに補助していくということで。冷凍食品はまだ続くんじゃないですか?輸出もすればいいんだから。経産省の管轄になるかもしれないけれど「倉庫ビジネス」への助成も考えていいと思います。

(関西テレビ「newsランナー」8月20日放送)

ジャーナリスト・鈴木哲夫さん
ジャーナリスト・鈴木哲夫さん
関西テレビ
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