全国の自治体で移住促進の動きが高まる中、東京から富山県に移った20代の女性がいる。

女性が移住を決意した理由は、デザイン事務所のユニークな採用方針だった。そこには、都会から地方への移住のハードルを下げるヒントがあった。

東京では営業職 伝統産業に魅力を感じて

銅器の街としても知られる富山県高岡市。

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7月25日。高岡銅器の着色所を見学に訪れたのは、伝統産業のPRなどを手掛ける市内のデザイン事務所「ROLE」に転職した桑原美波さん(26)。

鹿児島県出身の桑原さんは、大学卒業後に大手アパレルメーカーに就職し、東京で4年余り営業などの仕事に携わった後、転職した。

桑原美波さん:
貴重な着色体験をさせていただいて、すごくうれしかった。もうちょっと勉強して、今後は仕事でも着色所と交流できたらと思いました

伝統産業を扱う仕事内容に魅力を感じたことや企業理念に共感したことが、この会社への転職を考えたきっかけだという。

高岡銅器の着色を体験
高岡銅器の着色を体験

しかし、転職を決意した理由は別にあった。

桑原美波さん:
今後のキャリアじゃないですけど、もう少し力をつけていきたいと思っていたので、“留学”みたいな感じで働いてみようという気持ちになりました

「ここに骨を埋めるのか」と聞かれ…

このデザイン事務所では「留学」と称して、あえて「勤務する期間は3年」という期限を設けて桑原さんを採用した。

ROLE 羽田純代表:
来てほしいばかりじゃなくて循環を良くするというか。バンバン来てどんどん出て行かせる、というような。面白い才能がたくさん集まったら良いと思って始めました

デザイン事務所の代表を務める羽田純さん(38)も大阪出身の移住者で、旧高岡短期大学への進学を機に高岡に移り住んだ。

大学卒業後は伝統産業のブランディングに携わり、高岡伝統産業青年会の会長も務めた。

桑原さんの採用で、あえて設けた3年の期限。転職に伴う地方への「移住」について、自身も感じたハードルの高さを下げる狙いがあった。

ROLE 羽田純代表:
富山の人には、「富山で骨を埋めるのか」とか「ずっとここにいるのか」としきりに聞かれた。「ここで一生骨を埋める」という宣言をしないと、地元の人の仲間になれないのかなと思ったこともあって。“留学”は決められた期限を高岡に勉強しに来るようなもの。そうして高岡や富山県を存分に吸収した人が外に出ていく、といったことが起こせたらと思って

勉強しながら役に立てることを見つけたい

桑原さんは、ずっと高岡に住むという思いはあまり持っていないという。ただ、3年間の勤務期間、高岡で多くの経験を積み、自分の成長に繋げると決意している。

桑原美波さん:
短い期間を設けることで、自分がすごく行動しやすい。経験値が自分自身足りないと思っているので、自分で何かできるような人間になりたいと思って。小さい会社とか、ものづくりに近い場所に自分から行って、修行じゃないけど、勉強しながら役に立てることを見つけられたら幸せなのかな

デザイン事務所代表の羽田さんは、こうした期限を区切った「留学」の中途採用を今後も続けたいとしている。全国からユニークな人材を高岡に呼び込むことで、どのような効果が生まれるのか注目される。

(富山テレビ)

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