安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件から、8月8日で1カ月。逮捕された男は、犯行前日に安倍元首相を襲う目的で岡山を訪れていたことがわかっている。
なぜ岡山では犯行が行われなかったのか、犯行前日の動きを検証した。

なぜ凶行は岡山で起きなかったのか

安倍元首相が7月8日、奈良市で応援演説中に銃で撃たれ死亡した事件で、警察は、奈良市の無職、山上徹也容疑者(41)を殺人の疑いで調べている。 

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犯行の前日、山上容疑者は、安倍元首相を襲う目的で演説予定だった「岡山に行った」と話し、「遊説先を確認して、つけ回していた」と供述している。演説が行われる約1時間半前、会場近くの防犯カメラには、山上容疑者とみられる人物の姿が映っていた。

捜査関係者によると、山上容疑者は「岡山には3発発射できる銃を持って行った」と供述しているという。ではなぜ、岡山では犯行が行われなかったのだろうか?

この日の演説会では、会場の入口が新型コロナウイルス対策として1つに制限されていて、入口や受付周辺では、警察が頻繁に巡回などの警備をしていたという。

会場には定員を上回る約2,000人が訪れていて、演説会を開いた事務所は、受付で来場者に名前や住所などを書くよう求めていたが、手荷物検査はしていなかった。

山上容疑者は、「手荷物検査などがあって、武器を持って近づけなかった」と供述している。警察の警備や入口や受付周辺に大勢の人がいたことなどから、手荷物検査をしていると考え、会場に入るのを諦めたのではないかと危機管理にくわしい専門家は話す。

日本大学 危機管理学部・福田充教授:
岡山の選挙の演説会の会場の警備自体は、選挙前の要人が演説会をするときの警備体制と比べると一般的なものだったと思う。銃撃を成功させるためには、あらゆるリスクを排除しないといけない。
ひょっとしてこれだけ混雑しているということは、受付で何かいろいろ記入させられているのか、手荷物チェックがあるかもしれないと容疑者が考えた可能性がある。もっと良い状況にある別の日に、もう1回再チャレンジしようという判断が、容疑者の中で働いたのでは

「要人警護にコストをかける必要性」

会が始まる30分前の午後6時半ごろに会場に到着した安倍元首相。東京からのSPも含め、複数人の警察官が周囲を警備していたという。

日本大学 危機管理学部・福田充教授:
安倍元首相が車から降りたあと、すぐ入口のところに入ることができる。襲撃できるタイミングを作らせていないので、そこの警備は非常に良くできていたのでは

安倍元首相は約10分の演説を終え、午後7時10分には会場をあとにした。それから約1時間後、会場から駅に向かう山上容疑者とみられる人物の姿が映っていた。その日のうちに奈良市に戻った山上容疑者は、翌日、凶行に及ぶことになる。

岡山県警は、今回の事案について「要人警護は、その時々の情勢をふまえて、警察本部長の指揮のもと、関係警察署と連携し、所要の体制で行っています」としたうえで、「引き続き、警護対象者の身辺の安全確保に万全を期して参ります」とコメントしている。

首相経験者が白昼に銃撃されるという衝撃的な事件は、今後の警察の警備体制に大きな影響を与えると福田教授は言う。

日本大学 危機管理学部・福田充教授:
政府や自治体、公的機関が行っている危機管理や安全管理にコストをかけないということが、日本では長い間ずっと続いてきた。今後の要人警護を見直して、そこにコストをかけないといけないという改革は、警察をはじめ、政府の諸機関の中で、いろいろ検討されて、結論が導き出される可能性が高いのでは

(岡山放送)