今から約60年前に石川県小松市で生まれた、市民のソウルフード「小松塩焼きそば」。見た目はなんの変哲もない塩焼きそばだが、後をひくおいしさだという。一体、何が違うのか?その秘密に迫った。
人気店にご当地グルメの歴史を聞く
まずは、その味について客に聞いてみた。
常連客のサラリーマン:
小松市に来ると、まず「塩焼きそば」が頭に浮かびます。

常連客の男性:
焼いた香ばしさがそのまま感じられます。普通のソース焼きそばとは違うから、小松市の自慢ですね!

小松塩焼きそばのルーツに最も近いと言われているのは、小松市土居原町の「餃子菜館 勝ちゃん」だ。

創業から61年、小松市の中華料理界をけん引してきた名店で、昼時はいつも満席だ。

2代目の高輪宗己さん(56)は、25年前に先代から店を引き継いだ。

その高輪さんに塩焼きそばの歴史について聞いた。
竹内章アナウンサー:
30歳すぎで引き継いだとき、料理の道に入られてすぐで、もう店を引き継いだ?
勝っちゃん 高輪宗己さん:
はい。

竹内章アナウンサー:
ある程度、一人前にできるようになったと思ったのは?
勝っちゃん 高輪宗己さん:
今でも、これでいいのか迷いますね。うちは61年の歴史があるから、焼きそばや餃子など昔からのメニューは味を変えてはいけない。守っていかねばならない。そして、続けていかなければならい。一番神経を使いますね。

竹内章アナウンサー:
塩焼きそばが小松のソウルフードになったきっかけは?
勝っちゃん 高輪宗己さん:
うちの父と、もう閉店しましたが父の兄が「清ちゃん」という店を開いていて。兄弟2人で「何か新しいことをしないか」ということで始めたそうです。

勝っちゃん 高輪宗己さん:
実は、最初は「塩焼きそば」っていう名前じゃなかったんです。「チャーメン」という名前だったんです。
竹内章アナウンサー:
チャーメン?
勝っちゃん 高輪宗己さん:
「チャーハン」って炒めるメシ「炒飯」と書きますよね。炒める麺だから「炒麺(チャーメン)」と…。

勝っちゃん 高輪宗己さん:
その後、近所の中華料理店と一緒に頑張ろうって、名前も揃えて「小松塩焼きそば」になったそうです。

こだわりの太麺 具材の食感も大切に
その小松独特の塩焼きそばの特徴は…。
勝っちゃん 高輪宗己さん:
小松塩焼きそばは、独特の太い麺を使います。細い麺でやると、全然違う味になるんです。それが他の焼きそばとの違いです。

小松塩焼きそばの1番の特徴は、太い麺。地元の製麺所が作る特注品だ。
勝っちゃん 高輪宗己さん:
麺を作ってもらっているところは、もう一つの小松の名物「小松うどん」の製麺所。だから、麺に関してはプロフェッショナル。炒めたときもそうだけど、香ばしいというのかな、全国どこ行っても味わったことがないと思う。

具材の野菜にも、こだわりがある。
勝っちゃん 高輪宗己さん:
やっぱり料理の形状に合わせて、野菜の形を切り揃えるのが基本。焼きそば用の野菜は、太い麺に合わせた太さに近づける。

勝っちゃん 高輪宗己さん:
口に入ったときに、長すぎても口の中にまとわりついちゃうことがあるので。そんなことを考えながら具材は切っていますね。

仕上げに地元メーカーが作る甘めの醤油と、自家製スープで味を調えれば完成。

先代から受け継いだ、小松のソウルフード「小松塩焼きそば」を竹内アナウンサーもいただくことに…。

竹内章アナウンサー:
確かに細麺とは全然違って、麺のもちもち感がすごいですね。また、麺のもちもち感と野菜のシャキシャキとした感じがすごく良くてね。

勝っちゃん 高輪宗己さん:
ネギ一つでも硬いときとか、中にドロッとしたアロエみたいなエキスが入っている部分もあるので、それをどう生かすか。それはもう長年の感覚ですね。ただ漫然と同じ調理をしていたら、季節によっても、ちょっとずつ味も変わる。だから、なるべく味を守れるように日々気をつけています。

竹内章アナウンサー:
そのときの食材の状態に合わせて、炒める時間を変えたり?
勝っちゃん 高輪宗己さん:
自分でも不思議なんですが、これは感覚ですね。味を一定にするために気を使っています。

塩焼きそばは店のメイン「全責任を持って」
竹内章アナウンサー:
常に昔ながらの変わらない味をお客さんに提供すると…。
勝っちゃん 高輪宗己さん:
そう!それが大切だと思っています。
竹内章アナウンサー:
料理人の方は何人かいらっしゃいますが、基本的に「塩焼きそば」はご主人が担当している?

勝っちゃん 高輪宗己さん:
塩焼きそばは、一番のメインで怖いものだと思う。味が変わっちゃ駄目だと思うので。これに関しては、僕が全責任を持つつもりで担当しています。

竹内章アナウンサー:
それは、先代への思いということですか?
勝っちゃん 高輪宗己さん:
そうです。やっぱり歴史って大事だと思うんです。続けることが大事だと思っています。

料理人の魂もこもる小松のソウルフード「塩焼きそば」。この地でしか味わえない味をぜひ、これからも守り続けて欲しい。
(石川テレビ)