愛媛・久万高原町で山と人々の暮らしを考えた次世代の林業への挑戦が始まっている。100年先も続く、新しい林業のカタチとは。

伐採するだけの林業では未来がない

全国有数の杉やひのきの産地でもある久万高原町。町内の森林のうち、植林地となっている人工林の割合は8割。愛媛一の林業の町でもある。

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久万高原町で、明治時代に初めて林業を始めた「久万造林」。5代目となる井部健太郎さんは、ある挑戦を始めた。

久万造林代表取締役・井部健太郎さん:
(現在の林業は)建築用の材料を育てる、畑に近い感覚になってる、今は。そうなってくると、今後、日本で新築が増えていくかというと間違いなく減るので。建築マーケットが収縮していく中で、新しい使い道を考えていかなきゃいけないし。
僕の場合は「黄金の森プロジェクト」というのを立ち上げて、それは100年、200年、ちゃんと次に残すためにやるには、今までの手法でいかない場合は変えていかないと続けられないと、僕は思っているので

新たな挑戦「黄金の森プロジェクト」。それは自社が所有する植林地にあった。

久万造林代表取締役・井部健太郎さん:
1.5ヘクタール、見えてる所が

一見すると、杉林に囲まれた中にぽっかり開いた広場のようだが、所々に小さな旗のついた竹の棒が立てられている。

久万造林代表取締役・井部健太郎さん:
一緒にずっとやっていただいている、「ひふみ」の小野豊君です

写真左:ひふみ・小野豊君 右:井部健太郎さん
写真左:ひふみ・小野豊君 右:井部健太郎さん

「自然と人が共存できるデザイン」をテーマに、小野豊さんは「ひふみ」として多田弘さんと芸術的な植物の空間を生み出す庭師。

「ひふみ」がデザイン
「ひふみ」がデザイン

30年、40年、100年後を見据えて植えられた木々

この場所には、小野さんたちのある仕掛けがあった。

ひふみ・小野豊さん:
日当たりに強いコナラの木を植えて、陰を作ってあげる。その下に陰の植物。最初のドラマは草から始まって、徐々に陰の植物が大きくなって照葉樹になっていくとか、ドラマを植林に入れていくということをしています

ひふみ・小野豊さん:
(井部さんの)山を見せてもらった時に、「山は私のものではない」と言ってくれたんですよ。「そこに住む神様が喜ぶ形に僕はしたい」って言ってくれて、それに僕はすごい感動して

この場所の全体像を見渡せる、とっておきのスポットが…石積みで円形に形どられたエリアを中心に、30年、40年、100年後を見据えて植えられた木々。所々に立てられた竹の場所には、山の多様性をもたらす、さまざまな樹木を子どもたちが植えた。

ひふみ・小野豊さん:
里山でも都市でも、教会だったり神社だったりというものがよりどころじゃないですけど、そういったものがあることによって、村とか町が成立していくんですよね。そういったのが歴史の中でどんどん減ってきていて、それと同時に里山もかなりの数減ってきてるんですよね。それが失われているのであれば、作ることもできるんですよね

山の多様性をもたらすため様々な樹木を植樹
山の多様性をもたらすため様々な樹木を植樹

ひふみ・小野豊さん:
この土地を大切に使うっていうことは、山を大事に使うっていうことにもつながります。それを視覚として立った人が感じて、「ここ、大事にしないといけないな」っていう部分を今回はデザインという形でさせていただきました

ずっと大切にしたい場所を作ることは、過疎化の進む地域に人をとどめることにもつながるという。

ひふみ・多田広代表:
木が喜ぶ場所をいかにして作るかっていうのを僕たちは優先してやってきたので、未来の人にとって価値のある山っていうのを作れるというのが、これで未来の人たちのために何かを残せるっていう気持ちがふつふつと湧いてきたっていうか

「木の幸せ」視点で林業を再構築するという挑戦。この場所の未来は…

久万造林代表取締役・井部健太郎さん:
ここは木を切って木を売ってお金にしてっていう場所ではなくて、場所を利用してもらって、例えば利用料だとか、そういう形でお金を得ていくところなので、こういうタイプの場所が今までの林業と違うのは、林業っていうのは間伐でも5~10年くらいは切ったらそこには(利益は)入らない

既存の林業のスタイルも維持しながら、収益を上げる場所を作り、将来その場所から人がいなくなっても山が荒廃しない仕組みを。創業150年、自然の恵みをなりわいとしてきたからこそ、いきついた挑戦でもある。

ひふみ・小野豊さん:
今、特に環境とかで見直されてる、これから自然と人間というものが絶対に関わり続けるわけで、どういう関わり方をするかというのが課題じゃないですけど、改めて原点に返るというところに来てるんじゃないかなと思います

久万造林代表取締役・井部健太郎さん:
こういうこともできますよっていうのを、みんなに知ってもらうというのはすごい大事なことだなと。この場所は共感率が高い。だいたい、この場所にきたら一発だもんね

業界の枠を飛び越えたからこそ見えてきた、新たな林業のあり方。井部さんが次世代につなげたいその風景に、将来、私たちはどのように関わっているのか。

(テレビ愛媛)