子どもたちの手から「里山の森」復活へ

愛媛県久万高原町で、日本の原風景ともいえる「里山の森」を復活させようという取り組みがある。子どもたちの代までバトンをつなぐ、半世紀以上かかるという壮大なプロジェクトを取材した。

薪を割ってたき火にくべたり、渋柿をかじってみたり。子どもたちがのびのびと自然を楽しんでいるのは、久万高原町二名地区にある「由良野の森」。

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NPO法人「由良野の森」鷲野宏代表理事:
ドングリの種植えをやるので、よかったら体験してみてください

NPO法人「由良野の森」鷲野宏代表理事:
先端の尖っているところあるでしょう。尖っているところから先に根っこが出てくる。そのあとにこっちから芽が出るんで、横にしといてあげた方が両方に出やすいじゃない

この日、子どもたちがプランターに植えたドングリ一粒一粒が、「由良野の森」を再び自然豊かにするための「希望の種」になる。

NPO法人「由良野の森」鷲野宏代表理事:
我々がやろうとしているのは、人工林がある放置されているところを、もともと70年くらい前にあった森に戻していきたいと

人工林の増加で、断水や土砂崩れのリスクも

「由良野の森」の周辺は、もともとブナなど天然の広葉樹林が広がっていたが、戦後の経済成長にともなう木材需要の高まりを受けて、次第にスギやヒノキの人工林に変わっていった。

NPO法人「由良野の森」鷲野宏代表理事:
下に住んでいる所があるんですけど、1カ月くらい断水することがあって。近所のお年寄りに聞くと、昔はすごく水があったところなんだよっていうことだった

人工林が増えるに連れて「緑のダム」と呼ばれる広葉樹林の保水性や生き物の多様性は失われ、土砂崩れなどの災害が発生するリスクも高まった。

NPO法人「由良野の森」鷲野宏代表理事:
ブナを植えて2年目のとこなんですけど。(苗を)150本くらいいただいて、それを植えているんですが

その後、国内の林業は衰退し、山間部の人口は減少。

放置されたままの人工林が増える中、鷲野さんらは4年前にNPO法人「由良野の森」を立ち上げ、ブナやミズナラの苗を植えて昔ながらの里山の森を取り戻す活動を始めた。

子どもたちが植えていたドングリも「希望の苗」として山に植えられる。

消費するだけでなく次世代のために

苗の水やりは町内の福祉施設に委託し、地元の雇用創出も目指している。

NPO法人「由良野の森」鷲野宏代表理事:
調べてみるとブナの種ってなかなか採れなくて、6年に1回くらいが豊作っていうことなので

ただ、ドングリは毎年採れる量にばらつきがあるほか、植えた苗はシカなどの格好のえさになるため、再生への道のりは決して平坦ではない。

NPO法人「由良野の森」鷲野宏代表理事:
50年とは言わない、もっとかかると思うんですけども。次の世代のためにちょっとでも進めておきたいというところですね

戦後70年で失われた風景を半世紀以上かけて取り戻す作業。そこには次世代を担う子どもたちの意識改革が欠かせない。

NPO法人「由良野の森」鷲野宏代表理事:
次の人が使うには誰かが用意しておかないといけない。消費するだけじゃなくて、次の人のために作っておくと。そういう体験のためのまき割りもやっています

子どもたちには「由良野の森」で楽しく遊びながら、世代を超えて自然を循環させる意識を持ってもらいたいという強い思いがある。

人工林を再び天然林に。その活動は環境問題や防災など、現代社会が抱えるSDGsの課題解決につながっている。

(テレビ愛媛)