は虫類・両生類に特化した動物病院が、静岡県の動物園に開院した。県内で初めてとなるこの動物病院で、どんな動物を診察しているのか、取材した。
静岡県内初・は虫類専門の動物病院

多くのは虫類を飼育・展示する、静岡県河津町の動物園「イズー」。

その敷地内に2022年6月、オープンしたのが、は虫類と両生類を専門に治療する動物病院だ。

イズー 白輪剛史 園長:
は虫類の飼育人口がかなり増え、病気で困っているという問い合わせを日々受けるようになりました。その中で、病院があれば救える命もあると思い、作ることにしました

病院には、動物のケガや病気を治療するため、超音波診断装置や自動麻酔器、それに血液の生化学検査機などさまざまな機器が備えられている。
院長を任されたのが、獣医の後藤正さんだ。

動物病院・後藤正 院長:
は虫類は外見から、それこそ血管がどこにあるか分からない動物で、治療の方法も変わってきます。扱える動物園が限られてきてしまう部分がありましたので、少しでもお役に立てればと思っています
イズーの飼育動物の健康診断

7月10日、病院では、園で飼育されているトカゲの健康診断が行われていた。
白輪園長:
これはカイマントカゲというトカゲだけど、調子が見るからに悪いんですよ。
トカゲは変温動物ですから、体温が一定ではないので、その分 薬の効きも悪い。だから獣医さんはいろいろ考えながら、薬の量を調整しながらやるんですね

は虫類はほ乳類と違い、体調の変化が分かりにくい生き物だ。種類は約1万にのぼるといわれ、生育環境も様々で、治療は簡単ではない。
後藤院長:
かなり衰弱が進んでいて、脱水ですね。体の水分がかなり少なくなっているのが一番の症状ですね。ここまで元気がなくなってくると、は虫類は中々大変になってきます
食欲がなくあまり動かなくなったヤモリ

さらに、この日は三島市の女性がペットのヤモリを連れてきた。連れて来たのは、ヤモリの一種「ヒョウモントカゲモドキ」だ。

後藤院長:
もう3年以上飼っているという事ですね。2カ月くらい前からエサを食べてないという事ですが、今まではエサは順調に食べていました?
飼い主:
割と食べていましたが、最近食べる量が減ってきました。前はコオロギを100匹以上食べていましたが、週1回あげても1匹2匹くらいしか食べなくて、それがもうゼロになってしまったんですよね

食欲がなく、あまり動かなくなったヤモリ。
は虫類は表情を見ても苦しさがわからず、飼い主が気付いた時にはもう手遅れというケースもあるという。まずは排泄物を採取する。そしてレントゲンを撮って、食欲がなくなった原因を探っていく。

後藤院長:
このレントゲンの様子だと、すぐに何か処置しなければという所は無いんですけど、エサを食べてないということもあるので、栄養剤を入れてもう少し様子を見て、また続くようなら次は便も一緒に持って来てもらいながら考えたいと思います
診察の結果、さいわい緊急を要する病気ではなかった。

飼い主:
は虫類を診てくれるところ自体が少ないので、これまではどうしても県外へ出なきゃいけませんでした。やはり県内にあれば行きやすいので、ありがたいと思います
苦しそうなカメ…その原因は

また病院には、飼い主から園に持ち込まれたミシシッピアカミミガメもいた。何だか苦しそうだということで、病院で診察を受けることになったという。
後藤院長:
卵も両方ありますね
白輪園長:
砂すごいな
後藤院長:
ちょっとひどいですね
白輪園長:
白いところは全部砂ですよ。飼っている時に砂を入れるから食べちゃうんですね。この個体はメスで、卵も見えます。この卵が腸の下の方にもいっぱい写っていますが、結局卵で圧迫してるし、腸でも圧迫してしまっています
このカメは、腸に石が詰まる重度の腸閉塞を患っていた。

後藤院長:
卵だけでもお腹の中が苦しい状態の所に、小石などが詰まっているので、かなり圧迫されていると思います。お腹を開けての処置が難しくなるので、薬などを使って徐々に砂を出して、様子を見ることになると思います
より適切な飼育につなげるために

病院では、体調を崩したは虫類や両生類を見て来た経験豊富な飼育員から、さまざまなアドバイスをもらえるのも大きな特徴だ。

イズー飼育員・渡部那智さん:
これまでのノウハウがあるので、それらも病院側と共有しながら、実際に飼育の現場にいたものも病院のサポートに入っているので、ほかの動物病院とも違った、より飼育につながるアドバイス・治療方針を提供できると思います
静岡県内で初めてとなるは虫類・両生類の専門病院。

病院がないためにこれまで救われなかった命が、一匹でも少なくなることが期待されている。
(テレビ静岡)