連日の厳しい暑さの中、飲みたくなる冷たいビール。

福岡県北九州市の「ヴァイツェン」は、バナナのようなフルーティーな香りとやさしく滑らかな味わいが自慢。2回連続で日本一を獲得した門司港の地ビールだ。

北九州市で作られているこのヴァイツェンが、新たな進化を遂げた。

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1日100kgほど廃棄されるパンの耳

北九州市小倉北区にある「クラウン製パン」。北九州市を中心とした小中学校、約200校の学校給食用のパンも作っている。工場では、パンを大量生産するからこそのある問題を抱えていた。

次々と捨てられていくパンの耳で、あっという間に袋がいっぱいに。食パンの両端にある耳の部分は給食用に提供できないため、その多くが廃棄されてしまうのだ。

クラウン製パン・松岡寛樹さん:
多い日で1日に10袋以上出ますので、約100kg程度出ます。ちょっともったいないですよね。とはいえ100kgも出ると引取先がなかなかなくて、それも苦心していました

少なくとも週に1回は学校給食用の食パンを作るため、その度に大量のパンの耳を廃棄しなければならない。松岡さんは2年ほど前からフードロス削減に向けて試行錯誤する中で、パンの意外な歴史にたどり着いたという。

クラウン製パン・松岡寛樹さん:
パンの歴史の教科書の1ページ目を見ると、必ずビールの話が出てくる。大昔は古くなったパンを水につけるとビールになっていたという記録もありまして、もしかしたらパンはビールにもう一回再利用できるんじゃないか、と考えたのがきっかけです

小麦麦芽の代わりにパンの耳 味わい大切に

6月上旬、北九州市門司区にある醸造所では仕込み作業が行われていた。

門司港レトロビール・峯松幸之助さん:
パンの耳は全体で40kgあります。タンク一杯分なので350mlの缶で4000本くらいになります。原料の1割をパンの耳を使用してつくろうと思っています

こちらの醸造所で、パンの耳を使用してビールをつくるのは初めて。心配な点もあるようだ。

門司港レトロビール・峯松幸之助さん:
小麦が入るのでタンパク質が多い分、粘度が上がってうまく仕込みができるか。不安な部分があります

日本では大麦麦芽でビールを作るのが一般的だが、ヴァイツェンは芳醇な味わいにするため、主に小麦麦芽を使用している。今回はこの小麦麦芽の約1割をパンの耳に変えてビールを作ろうとしているのだ。

門司港レトロビール・峯松幸之助さん:
今、フードロスは社会的な問題になっていますので、そういう取り組みに携われるのは良いことなんですが、やっぱりおいしくないとやる意味がないので。おいしいビールを頑張ってつくろうと思います

食パンを有効活用したビール「ブレッドヴァイツェン」

そして、約1カ月後。ビールが完成し、報告会が行われた。

門司港レトロビール・峯松幸之助さん:
ビールが完成したので持ってきました

クラウン製パン・松岡寛樹さん:
ようやくですね

気になるその出来栄えは…。

クラウン製パン・松岡寛樹さん:
すごくまろやかな味ですね。この泡が残るというのが、パンの特徴なんですかね?

門司港レトロビール・峯松幸之助さん:
タンパク質が泡立ちをよくしていると思います

今回、新たに生まれた食パンを有効活用したビール、その名も「ブレッドヴァイツェン」。通常のヴァイツェンと違いはほとんどないものの、より苦みが少なくなっていて飲みやすいのが特徴だ。

門司港レトロビール・峯松幸之助さん:
やはりおいしくないと継続しないと思います。その点については今回、品質の良いものができましたので、十分楽しんでいただけるのではないかと思います

クラウン製パン・松岡寛樹さん:
こうやってしっかりと商品になったということで、次の可能性を感じています

ブレッドヴァイツェンは、北九州市小倉北区にある門司港地ビール工房や市内の酒店など12店舗で販売を始めた。

フードロスを減らすため北九州市の企業がタッグを組み、つくりあげたビール。今後も定期的にパンの耳を使った地ビール作りを続けていくそうだ。

(テレビ西日本)