本業の鉄道部門ではなく「ぬれ煎餅」や「まずい棒」などの“物販”が度々、話題となる、千葉県の銚子市内を走る銚子電鉄。

2006年に「ぬれ煎餅を買って下さい。電車修理代を稼がなくちゃいけないんです」との切実な訴えが話題を呼び、副業として製造・販売していた、「ぬれ煎餅」が爆発的な売り上げとなり、経営危機を乗り越えた鉄道会社だ。
なお編集部では過去に、発売前の「まずい棒」を試食させてもらい、レポートしたことがある。
(参考記事:苦境の銚子電鉄が「まずい棒」発売へ!でも、何かに似てる?実際に食べてみた)
この銚子電鉄、コロナ禍で“鉄道部門”の利用者数は伸びていないのだが、“副業部門”の売り上げが好調で、2021年度決算では、2015年度以来の6年ぶりの黒字となった。
6月30日に報告された2021年度決算では、“鉄道部門”は乗車人員が前年度比8.6%増の29万5638人。乗車人員は増えたものの、営業収益は前年度比1.2%減の7763万円。
一方、「ぬれ煎餅」や「まずい棒」などの“副業部門”の売上高は4億5066万円。前年度比で13.3%増となったのだ。

その結果、純利益は21万円で、6年ぶりに黒字に転じた。2020年度は741万円の赤字だったことから経営状況が改善されたことになる。
“副業部門”はメディア戦略などが功を奏した
“副業部門”の売り上げが好調ということだが、なぜ2021年度は売り上げが伸びたのか? また、“鉄道部門”の利益を増やしていくため、今後どのような対策を考えているのか?
銚子電鉄の担当者に話を聞いた。
――6年ぶりの黒字だが、過去5年の赤字の金額は?
2016年度:2568万円の赤字
2017年度:3482万円の赤字
2018年度:1116万円の赤字
2019年度:1982万円の赤字
2020年度:741万円の赤字
――6年ぶりに黒字となった理由、どのようなことが考えられる?
2021年度における、わが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の再拡大に伴う「緊急事態宣言」の発出や「まん延防止等重点措置」による人流抑制の影響から、先行きが不透明な状況が続きました。
年度末に重点措置がようやく解除され、景気回復への期待感が高まりつつあるものの、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発する資源価格の高騰など、不安材料も多く、国民経済の先行きが懸念されております。
鉄道各社においても、コロナ禍の影響は甚大であり、出張や旅行での鉄道利用の落ち込みに加え、テレワークの普及による通勤需要の減少も相まって、規模の大小を問わず、苦境が続いております。このような環境下にあって、銚子電鉄は経済活動の停滞や移動制限などによる売上の減少に対応すべく、積極的なメディア戦略やSNSを活用したプロモーションにより、収益の増大に努めてまいりました。
その結果、“鉄道部門”の輸送人員はおよそ29万6000人(前期比8.6%増)となり、緩やかながら、回復基調を辿っております。
設備投資の面では、国、千葉県、銚子市による協調補助の下、長年の懸案事項であった「笠上黒生変電所」の更新工事を行い、3月中旬に無事、完成いたしました。
また、“副業部門”はメディア戦略などが功を奏し、売上高は4億5066万円(前年度比で13.3%増)。この結果、黒字を計上することができました。
――6年ぶりに黒字となったこと、どのように受け止めている?
基本的には、私たちだけの努力だけでなく、お客様が「まずい棒」などを買っていただいたからだと思っています。

――2020年には「赤字が消える!暗記セット」を発売していたが、赤字が消えたのはこれのおかげでもある?
2020年の年末ぐらいに発売しましたが、これが成就して、赤字が消えました。「赤字が消える!暗記セット」は、6年ぶりの黒字になってから、通常の1.5倍ぐらい、売り上げが伸びています。

――“副業部門”の売上高は前年度比13.3%増、この理由として考えられることは?
副業については、大型取引先などとの催事販売と積極的な販促により、業績好調を維持することができました。他の業種とのコラボ、メディアなどへの積極的露出で話題性を高め、販売先の拡大に繋げてまいりました。
その結果、副業の売上高は4億5066万円(前年比13.3%増)となり、相当の収益増加となりました。
鉄道事業と同様に、緊迫するロシア情勢の影響から、生産コストの増大が懸念されますが、「ぬれ煎餅」の製造販売を軸として、一層の収益拡大に努め、地域の重要な社会資本である“鉄道事業”を支えてまいります。
――他業種とのコラボ、具体的には?
バンダイナムコさんの「アイドルマスター SideM」とのコラボです。
――副業で特に売上を伸ばしているのは「ぬれ煎餅」と「まずい棒」?
はい。「ぬれ煎餅」と「まずい棒」です。
鉄道部門は「車両など設備の老朽化」が課題
――一方で“鉄道部門”の営業収益は前年度比1.2%減、こちらはどのように受け止めている?
1年を通じて、厳しい経営状況が続いたものの、2021年度は旅客数全体では2万3524人の増加(前期比8.6%)となり、徐々に業績回復の兆しが見えてまいりました。
今後、ロシア情勢などにおいて、ガス、電気などの値上げが確実とされる中、冗費(=無駄な費用)の抑制に努め、鉄道事業の安定を図ってまいります。
――今後、「鉄道部門」の営業収益を増やしていくためには、どうすればよい?
今後は、車両など設備の老朽化をどうするかが課題と考えています。2022年度は、沿線の住民のニーズを考慮したダイヤ改正を行い、利便性の向上を図ると共に、「各種メディア及びSNSを駆使したPR」を通じて、観光需要を喚起し、鉄道事業の業績回復に努めてまいります。

――「各種メディア及びSNSを駆使したPR」とは、具体的には?
古い駅舎の改修などを行い、駅に人を呼び込むような仕掛けを考えています。車内の一部を改造することも考えています。

――今回の決算を受け、株主総会ではどのような声があがっている?
「引き続き、頑張ってほしい」など、応援の声が多かったです。皆さんのおかげで黒字になったと感じています。地域と共に、銚子電鉄は走り続けないといけないと思っています。
「ぬれ煎餅」や「まずい棒」など“副業部門”の売り上げが好調で、6年ぶりに黒字に転じた「銚子電鉄」。2022年度は本業の“鉄道部門”の利益も伸ばし、走り続けていってほしい。