西日本豪雨の発生当時、現地で被災者の救助や復興活動などにあたった陸上自衛隊の姿…みなさんも覚えているのではないだろうか。
実は松山駐屯地の2022年の新人隊員の中に、当時 被災者として自衛隊の支援活動を目の当たりにして入隊を決めた隊員がいる。
“次は自分が助ける側になりたい”…そんな思いで厳しい訓練に臨んでいる。

「今度は自分が人を支えたい、助けたい」

松山市南梅本町の陸上自衛隊松山駐屯地にある「第110教育大隊」。新人隊員が学ぶ教育専門の部隊。

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2022年度に入隊したのは18歳から32歳までの約330人。4月から3カ月間、陸上自衛官としての基礎を学ぶ。

過酷な任務をこなすため、走り込みや筋力トレーニングなどの体力づくりは欠かせない。集団走でトップを走る1人の隊員がいる。

豊田諒真2等陸士(18)。宇和島市吉田町出身の豊田さんは、宇和島東高陸上部で2年生の時に全国高校駅伝に出場、京都の都大路を駆け抜けた。

そんな豊田さんが自衛官を目指した理由。それは4年前の西日本豪雨だった。
土砂崩れなどが起きて11人が亡くなった宇和島市吉田町。豊田さんの自宅も、床上浸水の被害に遭った。

豊田さんの母・美紀さん:
諒真は物がつからないように2階にどんどん持っていってっていうので。すごい動いてくれて、すごい助かりましたね

豊田さんの住んでいた立間地区は、断水や停電などライフラインが止まり、過酷な状況に置かれた。

陸上自衛隊2等陸士・豊田諒真さん:
被災した時にいろんな方々の協力だったり、ボランティア活動のおかげで被災した生活から普段通りの生活に戻れて、そこから「今度は自分が人を支えたい、助けたい」という気持ちから自衛隊志望を決めました

新人隊員の訓練は体力作りだけではない。この日は小銃を持って敵陣に突入する、実践的な戦闘訓練。周囲の状況を確認しながら、すぐに射撃の体勢を取ることができるよう反復練習を繰り返す。

続いて、隊形を組んで突撃訓練。グループが横一線になり、警戒しながら前進していく。3カ月の教育期間も後半戦。隊員たちには「集団」としての意識が刻み込まれていた。

陸上自衛隊2等陸士・豊田諒真さん:
やはり1人の力だけではどうしてもできないということが多いので。集団生活を、この2カ月間いて深く学びました

教育大隊では訓練の時も食事の時も、一日のほとんどを「集団」で過ごす。

同期の隊員:
最初来たときは夜寝れなかったんですよ

陸上自衛隊2等陸士・豊田諒真さん:
自分もそうです。最初はやっぱり

同期の隊員:
今は全然気にならない

陸上自衛隊2等陸士・豊田諒真さん:
正直、班員のいびきとか結構あったんで、最初は寝れなかったんですけど、もう今は慣れました

班員10人は、ひとつの部屋で共同生活をする。

同期の隊員:
豊田はどんくらいで走るん?

陸上自衛隊2等陸士・豊田諒真さん:
何が

同期の隊員:
東温持続走

陸上自衛隊2等陸士・豊田諒真さん:
そりゃ1位やろ

3カ月に及ぶ体力訓練の成果を競い合う記録会の日が近づいていた。

そして、記録会当日。小野演習場から隣接する東温市総合公園の山頂を目指す3kmのコース。先頭集団をキープした豊田さん、最後の力をふり絞り、坂を駆け上がる。

結果は惜しくも3位だったが、10分23秒で自己ベストを更新。自衛官に欠かせない体力も着実に向上しているよう。

「災害派遣」への強い思い持ち北海道へ

6月26日、修了式の日を迎えた。

教育大隊長・土橋晃輔2等陸佐:
3カ月間の厳しい教育を乗り切ったという自信を胸に、全国の後期教育部隊に旅立ってください

教育訓練を終えた隊員たちは皆、たくましさにあふれていた。
地上戦闘を行う「普通科」、戦車などを扱う「機甲科」など、これからは全国各地の部隊に分かれて専門分野での訓練が始まる。
豊田さんは、北海道名寄駐屯地にある第3即応機動連隊普通科の所属が決まった。有事の際や災害の発生時などに真っ先に派遣される部隊。

陸上自衛隊2等陸士・豊田諒真さん:
(北海道は)いろいろと装備が他と異なって最新鋭なので、そういった武器戦車を活用した訓練を行っていきます

豊田さんの母・美紀さん:
すごく離れちゃうので、さみしいのはさみしいんですけど、成長したんじゃないですかね、3カ月間で

7月1日、新たな訓練地への旅立ち。

陸上自衛隊2等陸士・豊田諒真さん:
北海道という、本当に分からない所でどう動けるのかということを学んでいって、立派な自衛官となって、災害派遣にも参加できるような自衛官になりたいと思っています

陸上自衛隊・豊田諒真2等陸士。「災害派遣」への強い思いを胸に歩き出した自衛官への道は、今、始まったばかり。

(テレビ愛媛)

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