しまなみ海道の島・今治市大島で暮らす、重松悦照さん(91)。
80年以上を大島で過ごす中で、最近さまざまな海の変化を目の当たりにしているという。
瀬戸内の海で今、何が起こっているのだろうか。

昔に比べたら「透明度が良くなった」瀬戸内海

標本のように並べられた貝は、しまなみの海道の島・大島の海岸で集めた貝殻。子どものころから海岸を歩いて貝を観察するのが好きだった重松さん。
近年、海の様子が特に大きく変わってきていると感じている。

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重松悦照さん:
沖縄のタカラガイ。こんなもん、ここにおらんかったのでびっくりしたんですけど。殻を帯びたようなサンゴもありました

重松さんが感じる海の変化は、それだけではないという。

重松悦照さん:
昔に比べたら、すごく透明度は良くなっとんです

青く澄んだ海、そして瀬戸内海にサンゴとは。
大きく潮が引いて干潟が出現する日に、海岸を観察してみると…

重松悦照さん:
(タコを捕って)おった!

タコやウニなど、豊かな海の恵みに出会うことができた。

重松悦照さん:
これもそうですね、サンゴ

岩場に目を凝らすと、黒っぽいサンゴ礁のようにも見えるものが。

重松悦照さん:
昔、これはいなかったんです

きれいな紫色で、触ってみるとやわらかな弾力が。ひょっとして、これもサンゴだろうか。

サンゴをはじめとする海洋環境を研究する黒潮生物研究所の目崎拓真所長によると、「キクメイシモドキ」というサンゴだという。

黒潮生物研究所・目崎拓真所長:
キクメイシモドキに関しては、世界で最も北まで分布できるサンゴ。日本海側の佐渡島まで生息が確認されてるくらい。全般的なサンゴとしては透明度が高くて栄養が少ない所がいいんですけど、キクメイシモドキに関しては少々濁りがあっても生息できる、環境の適用能力がものすごい高いサンゴのひとつ。
おそらく瀬戸内海でも、昔から適応して暮らしているとは思います。瀬戸内海に関しては(サンゴの)情報が非常に少ないので、今回の情報も新たな生息地点が1カ所見つかったということでは、非常に希少な記録になってきます

そして、紫色のサンゴのようにも見えるものは。

黒潮生物研究所・目崎拓真所長:
海綿っていう、全く別のグループになります。サンゴとは全く違う生き物。ムラサキカイメンは、本州・四国・九州では一般的にどこでも見られるような海綿ですね

今ではほとんど捕れなくなった「アサリ」

重松悦照さん:
手応えがない

重松さんが探しているのは二枚貝のアサリ。昔は晩御飯のおかずになればと、楽しんでいた潮干狩り。
今では、ほとんどアサリは捕れなくなったという。

重松悦照さん:
どういうわけかアサリは1個もない。(昔は)多い人は、こんなバケツいっぱい堀りよったよ

今治市大島では、昔は潮が引くとアサリを求めて潮干狩りをする島民でにぎわっていたという。
しかし、この日も探せど探せどアサリは姿を見せてくれなかった。

二枚貝やエビといった甲殻類の育成研究を手掛ける水産技術研究所によると、瀬戸内海のアサリの漁獲量は、最盛期といわれた1980年代の200分の1以下になっているという。

国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所・伊藤篤さん:
最近よく言われてきてるのは、海水温の上昇であったり、それともちょっと関連するんですけど、捕食者、貝を食べる魚類が増えてきたりとか

アサリを餌とするクロダイ。海水温の上昇によって、クロダイがこれまでは食欲が落ちていた冬も餌を食べるようになったことも原因のひとつと考えられている。

国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所・伊藤篤さん:
あるいは海がきれいになった結果、二枚貝の餌となる植物プランクトンが減ってしまったっていう説もあります

重松悦照さん:
海がきれいになることはいいことやね。いいことやけど、それにともなって、昔から海岸にいた獲物、島の人はそれを収穫しては楽しみのひとつにしてた。それがなくなったのは寂しい思いがするね

国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所・伊藤篤さん:
昔から海を見てきている人の意見はとても大事、ヒントになります。海は変わってきてるんだろうなとは思ってます。変わってきてるでおしまいじゃなくて、変わった海に何ができるのか考えなきゃいけない

わたしたちにできることが、どう海洋環境を守り、気候変動の緩和につながるのか。
その仕組みを知ることも、SDGsへのアクションのひとつになるのではないだろうか。

(テレビ愛媛)

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