伝統芸能を受け継ぐ子どもたち。獅子舞やおはやしを継承する長野市下駒沢の保存会には、小中学生も所属。コロナ禍で停滞していた活動がこのほど再開され、子どもたちによる舞や音色が復活した。
伝統芸能を受け継ぐ小中学生「駒獅子会」

しなやかな獅子舞に、軽快なおはやし。披露したのは、長野市の下駒沢氏子保存会の小中学生メンバー「駒獅子会」。子どもたちが、子どもたちに伝統芸能の魅力を伝える「体験会」が、3年ぶりに開かれた。
獅子頭(ししがしら)を担当した小学4年の石坂さと美さん。久しぶりの充実感を味わっていた。
小4・石坂さと美さん:
やっぱりいろんな人に見てもらうとやる気がでるし、そういうところがよかった

下駒沢でも代々、獅子舞やおはやしは大人たちが中心となって受け継いできた。
しかし、仕事の多様化やライフスタイルの変化もあって、担い手が減っていった。

そこで…
下駒沢氏子保存会 世話人・塚田浩さん:
じゃあもう、子どもに声をかけようと。一回やってもらおうと思ったら、結構子どもが友達を呼んでくれたりとか、輪が広がっていって

育成会と協力して、2017年から太鼓や笛、獅子舞に触れてもらう「体験会」を開催。小中学生の会員を募って「駒獅子会」をつくった。練習は月4回程。次第に上達し、子どもたちは大事な担い手となった。

中でも「年長さん」から始めた石坂さと美さんは、小さな体で大きな獅子頭を自在に動かせるようになり、評判になった。
小4・石坂さと美さん:
(以前は)腰を低くするとめっちゃ小さくなって、“赤ちゃん獅子”みたいになった
練習再開 姉妹と母が一緒に…
活動は順調だったが、コロナ禍で2020年から練習も発表も激減。仲間を増やす「体験会」も開催できずにいた。

「久しぶりー、うれしいね」
6月6日、ようやく感染が落ち着いてきたことから1年ぶりに練習を再開。「体験会」の開催も決まった。
練習:
ちんとん、ちんとん、はい
「駒獅子会」のメンバーは現在20人だ。
中3・浅輪彩乃さん:
とっても楽しかったです!忘れていたところもあったんですけど(笑)
中2・高岡昊さん:
(伝統を)途切れさせない方がいいと思うので、ぜひ続けていきたいと思います

小4・石坂さと美さん:
もっといろんな人が獅子舞を楽しめて、獅子舞をやりたいっていう気持ちになってほしい
後日、さと美さんの自宅を訪ねた。さと美さんは3姉妹の一番上。宿題を終え、外で始めたのは獅子舞のトレーニングかと思いきや…
(Q.今のは何の練習?)
小4・石坂さと美さん:
ドッジボールの練習。
(Q.獅子舞じゃないんだ?)
獅子舞ではない
地域のドッジボールチームにも所属。
小4・石坂さと美さん:
ドッジボールも獅子舞も足をちゃんと使ったりするから、上手にやってる。
(Q.どっちのためにもなる?)
そう
さと美さんが保存会の活動にひかれたのは…
小4・石坂さと美さん:
秋祭りとか、ここらへんを回っているからすてきだなと思って始めました。一番最初に(太鼓を)たたいた時の音がめっちゃきれいな音で

妹のあさ美さんも太鼓を始め、いずれ笛を担当するのが目標だ。
(Q.笛、やってみたことある?)
次女(小3)あさ美さん:
ある。
(Q.どうだった?)
変な音しか出なかった。きれいな音を出したい
一番下のなな美ちゃんは…
三女(年長)・なな美ちゃん:
3歳のとき、獅子に頭かまれた。だけど、もう5歳だから大丈夫。
(Q.やってみたい?)
うん
母・さやかさんも保存会で三味線を奏でている。
母・さやかさん:
私も(さと美さんと)同時に始めました。同期です!最高ですね、子どもと一緒に習い事ができるなんてすごい楽しいし、良きライバルでもあり

この日も家族で練習へ。「体験会」に向けて気合が入る。
小4・石坂さと美さん:
体験会を本気で全力で頑張りたいと思います
3年ぶりの体験会…かっこよく、頼もしく

6月19日、体験会当日。久々の「正装」に子どもたちは…
中2・高岡昊さん:
やるぞっていう感じになりますね、やる気出ますね
小4・石坂さと美さん:
本番、本番が近づいているなって感じ、頑張りたい!

「では獅子舞、始めたいと思います。一同礼」
まず、さと美さんと中学生の昊さんが2人で獅子を舞う。体験会には、これまでに例がない60人以上が参加した。
続いて、おはやし。

妹・あさ美さんも舞台に立った。発表のあとは楽器や獅子に触れてもらう時間だ。
駒獅子会のメンバー:
やってみ、トントンって
体験した子ども:
たのしい!
「駒獅子会」のメンバーがPR。
体験した子ども:
(音が)きれいで楽しかったです
体験した子ども:
振動がすごかった、おもしろかったです

3年ぶりの体験会。メンバーは手応えを感じていた。
中2・高岡昊さん:
小さい子たちに、たぶん、かっこいい姿を見せられたんじゃないかな。
(Q.仲間、できるかな?)
できると思います!手応えはありました。1人でも多く増えてほしい
下駒沢氏子保存会 世話人・塚田浩さん:
頼もしいですね。これからやっていくにも、子どもの力はすごく大切だと考えています
伝統のバトンを受け取り、次へ伝えていく子どもたち。力強く再スタートを切った。
(長野放送)