福島県の南に位置し、栃木県との県境にある西郷村。
首都圏へのアクセスもよく、製造業を中心に発展してきたが、今後推計される人口減少に危機感を募らせている。
そこでいま、県外からの転入者を増やそうと「移住促進」に向けた取り組みが進められている。

結婚を機に移住 抜群のアクセスで都内へ通勤可能

埼玉県出身の伊藤貴一さん(39)と琴美さん(37)。
結婚を機に、2020年から福島・西郷村で暮らしている。

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妻の琴美さんは、東京の企業に勤めている。
コロナ禍でリモートワークが中心だが、出勤には新幹線を利用し、通勤時間はドア・トゥー・ドアで2時間弱。

伊藤琴美さん:
日帰りで、もちろん通勤ができるので。遠いという感じではないですね

一方、夫の貴一さんも勤務先の栃木県のパン店まで車で通勤している。

伊藤貴一さん:
都心にも近いし、県でも一番南なので、埼玉にも帰りやすくて首都圏へのアクセスもいい。それで、東北道のインターもあるということで、西郷村に決めました

福島県の南に位置し、栃木県との県境にある西郷村。
東京まで、東北自動車道の白河ICから約2時間。さらに、東北新幹線・新白河駅からは1時間20分ほどと、首都圏との抜群のアクセスから企業誘致などを進め、製造業を中心に発展してきた。

人口は50年前から倍に増加し、高齢者の割合が福島県内で最も低い自治体。
しかし…

西郷村企画政策課 長谷川寿之課長補佐:
自然動態の方で減少、死亡とか。そういった中では減少している。自然動態の減少は年々大きくなっている状況なので、伸び率は減少している

西郷村が危機感を募らせているのが、今後推計される人口減少。
高齢者の割合が最も低い西郷村でも、人口は40年後に現在の4分の3にまで減少するとみられている。

独自支援策で進める「移住促進」 仕事とプライベートの両立も

これまで「移住促進」に力を入れてこなかった西郷村。
2割ほどに留まる県外からの転入者を増やそうと、2021年度に支援策を拡充。

「日本で唯一、新幹線の駅がある村」を売りに、村独自で新幹線による通勤費の一部を補助し、新築や中古住宅を取得する場合も補助金を支給している。

西郷村企画政策課 長谷川寿之課長補佐:
東京圏の通勤圏内である西郷村というのは、さまざまなライフスタイルが実現できる村であり、リモートが発達した現在でも、仕事とプライベートの両立に非常に適した村だと考えています

西郷村へ移住した伊藤さん夫婦。
埼玉県の実家ともアクセスがよい点は、精神的にも大きなメリットだったという。

伊藤貴一さん:
両足を一気に自分の生活拠点だったところから抜くという移住ではなくて、近いところ、すぐ帰れるところにするということで、片足を元あったところに突っ込みながら、移住してよさを知っていくというのでハードルが下がるかなと思ったんですよね。「移住」という言葉よりも「引っ越し」に近い感覚で、西郷村に来ているなと

伊藤琴美さん:
徐々に暮らし方をシフトしていける感じなので、完全に切り替えて移住するより、すごく気持ち的には余裕がある

移住から定住へ…補助金など制度も拡充 課題は“知名度”

さらに西郷村では、子育て世代をターゲットに出産や入学祝い金の制度なども設け、一時的な移住ではなく「定住」に結びつけたい考え。

西郷村企画政策課 長谷川寿之課長補佐:
人口が増えることによって村の財政面が豊かになっていきますので、現在お住まいの方だったり、移住された方、全てにおいて、いろいろなサービスの提供ができるのかなと考えています

一方で、課題もある。
それが首都圏での知名度の低さ。

西郷村企画政策課 長谷川寿之課長補佐:
どうしてもやっぱり、「さいごうむら」と呼ばれてしまうんですね

村をどのようにPRし、隣接するほかのエリアとの差別化を図っていくか。
プロモーション動画なども含めた広報活動のほか、今後は積極的に首都圏での移住相談会も検討している。

「日本で唯一、新幹線がある村」の移住促進に向けた取り組みは、始まったばかり。

(福島テレビ)

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