赤字が続くローカル線については、最近JR西日本が収支を公表し、今後の在り方について議論が始まっている。
2018年、広島県と島根県をまたいで走っていた三江(さんこう)線が過疎化を理由に廃線となり、バスに姿を変えて地域交通をになっている。
バス路線に変わった広島県の地域は今、どうなっているのか。現状を取材した。

鉄道廃止でバスに…日中の乗客は

人口約5万人が暮らす広島県北部、山あいの町・三次(みよし)市。

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中心部にある三次駅を出発する一台のバス。
さらに北に位置する三次市・作木(さくぎ)町まで向かう。

1日あたり、上下線それぞれ5本が走るこのバスは、朝と夕方は通勤や通学で利用される一方、日中の時間帯はというと…

梅田記者:
こちらは三次駅です。これから出発するこちらの代替バス、実際に乗ってみたいと思います。バスの車内なんですが、乗っている人は私以外に誰もいません

午前11時半すぎ、乗客を誰も乗せることなくバスは出発。市内中心部を走り、住宅地のバス停を通るが…

梅田記者:
今、バス停を誰も乗ることなく通過しました。出発してからここまで、誰も乗ってくる人はいません

バスは最後まで誰も乗せることなく、約30分後に終点に到着した。

バスの運転手:
昼の時間帯は、乗ってる人が少ないですね。地域の方々に乗ってもらって、もうちょっと車内が盛り上がればありがたい

代替バス10路線は年間2億円超の赤字 

三江線の代替バスは、現在10の路線で運行されている。
しかし、すべての路線で赤字となっていて、赤字額は年間2億円を超える。

今回乗ったバス路線・作木線では、2021年度に1便あたりの利用人数が年間を通じてわずか3、4人程度にとどまっていて、厳しい地域の現実が浮き彫りになっている。

代行バスを運行する君田交通・松尾宏代表:
三次市内の病院に行ったり、買い物する方だったり、皆さんがどんどんご利用いただければと思う。今後も、学生さんやお年寄りに利用していただけるように努力していきたい

利用者の減少に歯止めがかからない実態。
過疎化が続く地域の交通は今後、どうなっていくのか。

JR西日本は2022年4月、利用者の減少が続くローカル線の収支を初めて公表し、広島県を走る芸備線や福塩線などを含めた17路線30区間で「単独で路線の維持が困難」とした。

今後の行方に注目が集まる中、5月には「存廃」についても視野に入れた踏み込んだ発言が飛び出すなど、ローカル線のあり方が問われている。
廃線となった三江線の沿線に住む住民は複雑な胸の内を語る。

代替バス沿線の住民男性:
三江線はほとんど使ってなかった
(Q.廃線になる前から?)
そうそう。ほとんど車。三江線がなくなって不便な思いをしたことはない

代替バス沿線の住民女性1:
三江線というのは、懐かしさと思い出があるから、そういう意味では寂しくなりましたけど、バスになったから便利とかは感じない。残してほしかったなとすごく思う。孫たちが学校に通うのには、バスより三江線のほうがしっかりしてる

(Q.代替バスは乗る?)
代替バス沿線の住民女性2:
乗ります。車もないし、病院に通って、帰りに買い物して帰る。バスがあるのは本当に助かります

バス路線維持の財政的負担は大きく…

住民の様々な思いが交錯する中、三次市は代替バスの必要性はあるとしながらも、財政的な負担の大きさを指摘する。

三次市地域振興部・中原みどり部長:
収益性で考えたときには、行政の支援が不可欠。維持費にかかる行政的な財政負担は大きなものがある。効率的な走らせ方として、再編などは考えていかなければいけない

鉄道からバスに変わったことによる、利用者の変化については…

三次市地域振興部・中原みどり部長:
利用者の数字で言うと、廃線前後でそれほど大きな変化ない。代替バスになってからも、移動手段としては確保されている

人口の減少が進む中、自治体にのしかかる重い負担。三次市には、「第2の三江線」になりかねない赤字ローカル線があり、今後の行方を注視している。

三次市地域振興部・中原みどり部長:
鉄道は中山間地域にとっては必要不可欠な移動手段であり、地域にとっても大切な資源。国の方向性や考え方が示されると思うので、それも踏まえながら今後議論していかなければならない

岐路に立つ地域交通。過疎化が進む中山間地域に必要な交通手段とは何なのか。他の赤字路線でも、今後の在り方について慎重な議論が求められている。

(テレビ新広島)

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