感染「警戒度」わずか2週間で引き上げ 

「新規陽性者数の増加比でありますが、2週間連続して100%を上回っている、と。増加比そのものが上がってきているという状況があります。」 

東京都の新型コロナウイルスモニタリング会議では、新規感染者数の7日間平均が、先週の1698人から2337人に大きく増加した、とのデータが示された。 

感染拡大のスピードを示す増加比は138%で、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、増加比が上がっていることを強調した上で「感染が再拡大している」とした。都は4段階で表す感染状況の警戒度を一段引き上げ、上から2番目にした。感染状況は、今月16日に警戒度を引き下げたばかりだったので、わずか2週間での引き上げとなった。 

大曲氏「感染が再拡大している」との見解を示した。
大曲氏「感染が再拡大している」との見解を示した。
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“波”は若年層から中高年層へ 

年代別に見ると20 代が 20.5%と最も高く、次いで 30 代が 18.1%。30 代以下が 6割を超える一方で、50 代以上の割合も、先週の18.7%から今週の21.5%へと上昇している。 

感染は、これまでも若年層に広がった後、中高年層に波及しており“いつか来た道”を繰り返すことへの警戒感も示された。 

新しい波が・・・再来週は5000人か 

「単純にかけ算すると来週は3000人をこえ、再来週は5000人」大曲センター長は、今後の見通しをこうのべたうえで「夏には増えやすい傾向があると思っています」とも述べ、感染拡大の要因として「ワクチン接種や自然感染による面積の減衰」「人の行動の活発化」「感染力が強いとされるBA.5等への置き換わり」をあげた。 

その「BA.5」は全体の25%まで増えており、同じく感染力が強いとされる「BA.4」も都内で初めて確認されるなか「新しい変異株による新しい波がきた、という言い方は言えるのかもしれません」とも。 

東京都モニタリング会議(30日午後3時ごろ 都庁)
東京都モニタリング会議(30日午後3時ごろ 都庁)

オミクロン別系統は“重症化”データも 

「BA.2に感染したとしてもBA.5に感染することは、あり得ると思います」 東京 iCDC 専門家ボードの賀来満夫座長は、「BA.4」「BA.5」は現在感染の主流となってBA.2に感染後も抗体をすりぬけて感染する可能性はある、との見方を示した。

また、今のところ「BA.4」「BA.5」は軽症が多いが、「いろんな動物実験、その他で、やや「BA.2」に比べて重症化が高いというデータも出てきている」とも指摘、感染例が増えたときに基礎疾患がある人や高齢者が重症化する可能性はあるという。 

賀来氏によると「BA.5」は従来のオミクロン株よりも重症化リスクが高いとのデータもあるという。
賀来氏によると「BA.5」は従来のオミクロン株よりも重症化リスクが高いとのデータもあるという。

夜の街の人出、会食感染とも増加 

「ここから急激かつ大幅にハイリスクな接触機会が増えていきますと、更に感染状況が急激に悪化する可能性が充分にあると思われます」 東京都医学総合研究所の社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は、夜の街の人出が先週から増加に転じ、去年の年末の高い水準に徐々に近づきつつあり、実効再生産数も急激に上昇している、との分析を示した。 

また、夜の人出は若年層だけでなく中高年層でも増えているということで、西田センター長は、今後幅広い年代での感染拡大にも懸念を示した。 会食による感染者は、先々週104人、先週122人、今週は173人と増えており、都は会食時の感染予防対策の徹底を改めて呼びかけた。 

西田氏によると、若い世代だけではなく、中高年の”夜の人出”も増えているという。
西田氏によると、若い世代だけではなく、中高年の”夜の人出”も増えているという。

去年の1ヶ月分が1日で・・・ 

「去年の6月の累計分が、たった一日で熱中症の患者さんが発生するという状況で・・・」 医療提供体制は下から2番目に据えおかれたものの、東京都医師会の猪口正孝副会長は、「今年は熱中症の発生状況自体が20倍から30倍と増えている」「救急搬送された患者が熱中症かコロナか確認しないといけない」ことなどから、救急医療への負荷が大きくなっている現状を伝えた。 

猪口氏は「搬送者が熱中症かコロナか確認しないといけない」と医療現場の現状を訴えた
猪口氏は「搬送者が熱中症かコロナか確認しないといけない」と医療現場の現状を訴えた

ピークは8月第一週か 

「8月あたまに1万人をこえるのではないか」 ある関係者は、今回の感染のピークを8月第一週と見る。 また、1万人を超えるとみるひとつの理由として、コロナ禍だった過去2年間の6月30日と7月30日の新規感染者数7日間平均の差をあげた。 

2020年の7月は6月の約4・7倍、オリンピック・パラリンピックのため行動制限があった2021年は約5倍となっていて、きょうの7日間平均2337人を5倍すると11685人となるので、と。 

ある関係者は「8月あたまに1万人を超えるのではないか」との見解を示した。
ある関係者は「8月あたまに1万人を超えるのではないか」との見解を示した。

「今年は行動制限がかかると思えないし・・・」 行動制限がかからないであろうこの夏に、感染力の強いと思われる「BA.4」と「BA.5」の増加、どこまで感染が増えるのか先行きが見通せない難しさを話していた。 

“三重苦”の夏 

「安全保障という観点で脆弱性がでているのは残念」 電力ひっ迫、円安などによる物価高についてこう話した小池知事。 そこにコロナの再拡大という“三重苦”となる。 

都はこれまでモデルナ社製のワクチンのみだった大規模会場での予約なし接種を週明け7月4日(月)からファイザー、ノババックスを追加する。 コロナだけでも抑え込めるのか、コロナ禍の3回目の夏となる今年は、過去2回とは違い、さらに難しい夏となることだけは間違いなさそうだ。 

小池都政は、”三重苦”の夏を迎えることになる。
小池都政は、”三重苦”の夏を迎えることになる。

(フジテレビ社会部・都庁担当 小川美那)

社会部
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今、起きている事件、事故から社会問題まで、幅広い分野に渡って、正確かつ分かりやすく、時に深く掘り下げ、読者に伝えることをモットーとしております。
事件、事故、裁判から、医療、年金、運輸・交通・国土、教育、科学、宇宙、災害・防災など、幅広い分野をフォロー。天皇陛下など皇室の動向、都政から首都圏自治体の行政も担当。社会問題、調査報道については、分野の垣根を越えて取材に取り組んでいます。

小川美那
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「お役に立てれば幸いです」 見てくださる皆さんが“ワクワク&ドキドキ”しながら納得できる情報をお伝えしたい! そのなかから、より楽しく生き残っていくための“実用的なタネ”をシェアできたら嬉しいなあ、と思いつつ日々取材にあたっています。
フジテレビ報道局社会部記者兼解説委員。記者歴20年。
拉致被害者横田めぐみさんの娘・キムヘギョンさんを北朝鮮でテレビ単独取材、小池都知事誕生から現在まで都政取材継続中、AIJ巨額年金消失事件取材、TPP=環太平洋経済連携協定を国内外で取材、国政・都政などの選挙取材、のほか、永田町・霞が関で与野党問わず政治・経済分野を幅広く取材。
政治経済番組のプログラムディレクターとして番組制作も。
内閣府、財務省、金融庁、総務省、経産省、資源エネルギー庁、農水省、首相官邸、国会、財界(経団連・経済同友会・日商・東商)担当を経て現在は都庁担当。