7月10日に投開票を迎える参院選。

去年10月の衆院選では、感染拡大への強い懸念から新型コロナ対策を公約の前面に打ち出す政党が多かったが、参院選では、ロシアによるウクライナ侵攻が続いているため、物価高や安全保障が目立つ形となっている。

ただ、ここにきて新型コロナの新規感染が増加傾向に転じつつあることで、再びコロナ対策に関心が集まりそうだ。

自民・立憲ともにトップから4番目に

去年の衆院選の公約で自民党がトップに掲げたのは「感染症から命と暮らしを守る」とした新型コロナへの対応。一方、今回の参院選では「毅然とした外交・安保で“日本”を守る」と「外交・安保」をトップに掲げて、コロナ対策は4番目となった。

立憲民主党は去年の衆院選の「政策パンフレット」では、「命と暮らしを守り抜く」としてコロナ対策をトップに掲載。しかし、今回の参院選の公約では「物価高と戦う」を冒頭で訴え、コロナ対策は自民党と同じく4番目の項目となった。

コロナ感染悪化で局面変化か

ところが、最近になり新型コロナの感染状況の悪化が目立ち始めている。

東京都では6月29日に新たに3803人が新型コロナウイルスに感染していることが分かった。これは先週の同じ水曜日と比較すると1474人増加。さらに翌30日も3621人の感染が確認され、先週木曜日から1208人増加、13日連続で前の週の同じ曜日を上回った。

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各党が公約を発表したのは6月上中旬だが、この時期と比べてコロナの感染状況が悪化したため、再びコロナ対策が参院選で関心を集める可能性がある。

各党のコロナ対策は

与野党各党が今回の参院選の公約に掲げているコロナ対策は、新たな感染症への備えや経済活動の本格化をにらんだ政策など「これから先の社会」を見据えている点が特徴的だと言える。

自民・公明両党の公約には、ともに将来の危機に備えた「司令塔機能」の強化が盛り込まれた。また、自民党は「社会・経済活動を一層進める」として、本格的な移動の回復などに向けた交通機関などの感染防止対策や、空港などの水際対策に万全を期すとしている。

公明党は新型コロナの後遺症を担当する外来や相談窓口設置の促進も訴えた。

政府のコロナ対策の検証迫る

対する野党だが、立憲民主党も「司令塔機能」を発揮するための法改正を訴えている。また「感染状況に対応しながら経済活動との両立を図る」との立場をとる一方で、政府の対策を専門家の見地から客観的に検証するための「コロナ対策調査委員会」の国会設置も盛り込んだ。

共産党は「これまでのコロナ対策の反省に立ち、感染爆発と医療崩壊を二度と起こさせないための対策に本腰を入れることを政府に求める」として、これまでの政府対応を批判。感染症病床などへの国の予算を2倍にし、ICUを支援する制度を新設し、数を2倍にすると訴えた。

2類から5類への引き下げ訴える

日本維新の会が訴えるのは、「コロナを2類から5類へ」だ。新型コロナの感染症法上の位置づけを結核などの2類相当から季節性インフルエンザと同等の5類にすべきと主張。その上で、濃厚接触者の隔離は撤廃し、「社会経済活動と感染対策を両立する」としている。

マスク着用見直し求める

国民民主党は「経済社会活動をコロナ前に戻すことが必要」と強調。「司令塔機能」の強化に加えて、移動制限のあり方や指定感染症2類の見直し、さらに科学的知見に基づくマスク着用の見直しを盛り込んだ。

NHK党も屋外などで感染リスクの低い状況では積極的にマスクを外すように推奨することや、感染対策を理由とした行動制限について慎重に対応するよう政府に求めている。

れいわ新選組は感染症と災害対策の司令塔としての「防災庁」の設置を訴え、予算と人員の充実を図る考えを示した。

社民党は新型コロナで医療現場が危機的な状況にあるとして、公立・公的病院の統廃合に反対し、保健所や保健師数の増加を訴えた。

経済社会活動の再開に政治が力強く舵を切れるのかは、今後のコロナの感染状況、さらに政治がどのような対策を講じられるかが重要となる。

(執筆:フジテレビ政治部)

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