フードロスの削減と、子どもへの支援を同時に行う“移動子ども食堂”。その仕組み作りを取材した。
子どもたちの秘密基地 「仕組家」が無料開放する“三条ベース”
放課後の子どもたちが駄菓子を買って遊んだり、時には勉強したり…
この記事の画像(24枚)ここは、子どもたちが集う秘密基地、新潟・三条市にある「三条ベース」。
工場だったスペースを利用して子どもたちに無料開放する三条ベースは、高橋憲示さん(51)が設置した。
高橋憲示さん:
家では一人の子どもも、ここに来たら誰かがいる。子どもたちが、のびのび育つ環境を応援したい
子どもたちのための施設を考案した高橋さん。本業は?
高橋憲示さん:
これは抗がん剤治療中の患者へ向けて、見附市の企業と一緒に開発したニット帽子
高橋さんは様々な企業の特徴を見極め、新商品の開発や経営戦略を考えるコンサルティングで、“仕組家”を名乗っている。
高橋憲示さん:
燕三条地域は技術や素材がたくさんあるので、アイデアがあれば世の中のためになるものに変化する
仕組家・高橋さんが運営する三条ベース。子どもたちと交流する中で気がかりなことがあった。
高橋憲示さん:
子どもの貧困は、全国平均で7人に1人と言われている。おなかを減らしている子どもが非常に多いというのは、子ども食堂が全国に広がっているのを見れば分かる
高橋さんは仕組家として、課題の解決に動き始めた。
子どもの貧困解消へ“カレー”開発 さらにもう一つの問題解決も
三条市で飲食店を経営している関本秀次郎さんと高橋さんが試作をしていたのは、カレー。
見た目は普通のカレーだが、食材に工夫がある。
高橋憲示さん:
市場に出回らない規格外の野菜を入れたカレーを試作している
関本秀次郎さん:
規格外の野菜は何でもカレーにできる
さらに高橋さんが考案した仕組みには続きがある。
高橋憲示さん:
保存ができるようにカレーを缶詰にして、子ども食堂に活用する
フードロスと子どもの貧困を同時に解決する、カレーの缶詰が出来上がった。
カレー缶×キッチントレーラー “移動子ども食堂”実現へ
ある日、子どもたちが集う三条ベースに到着したのは、自動車にけん引されたキッチントレーラー。
2021年に設立された新潟県キッチントレーラー協会は、キッチントレーラーの普及のためのアイデアを高橋さんに相談。
そこで、仕組家・高橋さんが提案したのが、カレーの缶詰を使った“移動子ども食堂”だった。
キッチントレーラーを利用することで、厨房設備がなくても、どこでも子ども食堂を開くことができる。
新潟県キッチントレーラー協会 高橋英一 理事:
缶詰をキッチントレーラーにのせて、色々なところで子ども食堂を開くことができる
高橋憲示さん:
子ども食堂をやりたいという企業や団体・商店街などに100人分・5万円を出していただき、私たちが行って、子ども食堂の運営から撤収までを行う事業
地域貢献を考える企業と連携できれば、子ども食堂を色々な場所に展開することが可能に。
さらに、備蓄した缶詰とキッチントレーラーがあれば、災害時にも威力を発揮する。
新潟県 キッチントレーラー協会 高橋英一 理事:
缶詰を備蓄することで、災害時に被災地へキッチントレーラーで行き、食を提供できる
“夢と希望”がぎっしり詰まったカレー 保護者も笑顔に
この日は運用方法を確認するため、三条ベースで試験的に子ども食堂を開設。
仕入れる食材によって味が変化するカレー。その味は?
子ども:
うまい!
子ども食堂は、時間に追われる保護者にとっても…
保護者:
助かる。夕飯を作らなくていいというのが、すごくいい。その時間を他のことに使える
今回の試験運用には、道の駅「良寛の里 わしま」で所有するキッチントレーラーも参加し、道の駅で販売している商品を無料提供した。
良寛の里 わしま 伊藤一郎さん:
子ども食堂で食べたおいしさやうれしかったという気持ちが、将来的に「道の駅へ行ってみたい」ということになればいい
高橋憲示さん:
この缶の中には、夢と希望がぎっしり入っている
思いやりとアイデアが入った缶詰。もったいないをおいしく調理して、子どもたちへ届ける。
(NST新潟総合テレビ)