富山県朝日町で今、教育現場が大きく変化している。キーワードは、デジタル技術を活用する「教育DX」と「地域との連携」だ。富山県内初の取り組みを実現し、最先端の「学びの形」を進める朝日町。その効果と狙いを取材した。

つまづきポイントを分析する「AIドリル」 一人一人に合った学習を

朝日町のさみさと小学校。6年生の理科の授業では、人の体についてさまざまな臓器の役割を学ぶというが、授業の進め方はちょっとユニークだ。

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調べたことをタブレットを使って自由にまとめ、その資料を共有しながら発表する。
そして授業の終盤、一斉に始めたのは、デジタルの教材「AIドリル」だ。朝日町教育委員会は、デジタル技術を活用する「教育DX」の推進を掲げていて、5月から、新たに町内3つの小中学校全てで「AIドリル」を導入した。

AIドリルの大きな特徴は、解いていく中で間違えやすいところをAI(人工知能)が分析し、つまずきの元となっている学年の内容までさかのぼるなどして問題を出すことだ。

さみさと小学校の松井和貴子教諭は、「“個別最適化”ということで、自分に合った学習ができる」と評価する。課題についても聞くと…

さみさと小学校・松井和貴子 教諭:
教員の方で、誰がどこが終わっているというのは確認することができるが、子どものつまずきについて確認したりというところで、どのようにみていけばいいか、もう少し私たちも勉強しなきゃいけない

さみさと小学校・松井和貴子教諭

また、AIドリルでは、小学1年生から中学3年生までの主要な教科の問題を、自分で選んで解くことができる。
家庭での自主学習に活用している6年生の野坂都怜亜さんは、こんな使い方も…。

さみさと小学校6年・野坂都怜亜さん:
中学校の問題はまだやってないけど、試しに今度やってみようかなって。来年中学校(進学)だから、中学校の勉強も知っておきたいなって

“下校時刻の繰り上げ”で教員の働き方にもゆとり

“個別最適”な学びにつながるAIドリルだが、教員の働き方の面でもメリットがある。

「AIドリル」は教員のゆとりも生み出す

さみさと小学校・松井和貴子 教諭:
以前は、きょうの授業に合わせたプリントを用意するなどしていたが、丸付けの時間が短縮されて、子ども達と過ごすことなどに時間を使える

教職員の病気休職者数は高止まりの状況

教員の過重労働は、教育現場で深刻な問題となっている。国の調査では、うつ病などの精神疾患で休職する教員がここ数年、毎年約5,000人いて、高止まりしている状況だ。富山県内でも毎年40人以上が、休職に追い込まれているという。

文部科学省は2020年、時間外勤務の上限を「月45時間」とする指針を示し、教員の残業の抑制を求めている。富山県内の公立学校の教員の時間外勤務も、2021年度は、2019年度と比べて小・中・高校それぞれで減少しているが、夏休みなどの時期も含めた1年間の平均のため、さらなる働き方改革が必要だ。

教員の働き方改革に向けて、朝日町では「教育DX」とあわせ、5月から、新たな取り組みをスタートさせた。

午後3時半、朝日中学校の3年生の教室で帰りの会が終わった。朝日町の3つの小中学校では、5月から時間割を見直し、下校時刻を繰り上げた。この繰り上げこそが新たな挑戦だ。

朝日中学校・岩崎將展 教諭:
最初は慣れないので違和感はあったが、下校時間が早くなったので、その分事務作業などが早くできる。教材など研究する時間もあるので、時間的にゆとりは増えた

今回、朝日中学校では、掃除の時間や部活動などを5分から10分短縮するなどして、全体で40分繰り上げた。

この取り組みの結果、生徒も教員に余裕ができたと感じているようだ。「以前、すごく忙しそうにしていたが、早く終わることで少しは楽になったんじゃないかな」「楽しそうに生徒と話している。余裕がみえる」と教員の様子を話す。

地域と保護者の協力が不可欠…持続可能な学びのモデル

しかし、下校時刻の繰り上げは、地域の協力で運行しているスクールバスを増便するなどの必要もあり、学校だけで判断するわけにはいかない。今回の実現には、「地域の力」が大きく関わっている。

朝日町では2022年度から、町全体で学校運営に取り組む県内初の制度を取り入れた。
それが、学校・地域・保護者が一体となって学校の運営を協議・企画する場を設ける「コミュニティ・スクール」だ。
併せて、部活動や登下校の安全サポートなどで地域ボランティアが連携する「地域学校協働本部」も同時に導入した。

学校だけでなく地域と保護者も協力

下校時刻の繰り上げは、この形があったからこそスムーズに議論が進んだという。

朝日中学校・勝田民 PTA会長:
今までの当たり前が、当たり前ではない時代ということで、先生方の働き方改革を家庭からもしっかり応援していく。ただそのときに、親御さんによっては、どうしていいかわからない人もいる。家庭の事情で子どもの面倒をみられないことも。そういうところは行政(町)、学校でも支援が必要ではないか

デジタル技術の活用や、地域との連携で進む「持続可能」な学びのモデルづくり。少子化や過疎化が深刻な朝日町だからこそ、最先端の取り組みを進めることで、それを強みにできると考えている。

朝日町教育委員会・木村博明 教育長:
朝日町は、今後20年先(の社会)を先取りしている町だと思っている。やがてどの地域も、朝日町のような問題が必ず起こってくるはず。ここをしっかりとクリアして課題を解決することで、これからの富山県、日本に対して「こんなことができる」「こんなことしたらどうですか」と、朝日町型モデルを発信できる可能性をもっている

学びを充実させることは、アイディア次第でできる。地方だからこそ、その地域ならではの学びが今求められている。

(富山テレビ)

記事 380 富山テレビ

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