障害のある人たちが、犬や猫と暮らすグループホームが全国で増加し、現在900カ所以上が運営されている。福井県内にも2020年に、初めてのペット共生ホームが誕生した。
ホーム内の様子にカメラが密着。そこには、動物たちが生み出す安らぎと絆の空間があった。

動物たちと暮らすことが心の支えに

夕方5時、仕事から帰宅した女性が真っ先に向かったのは、ケージ内で落ち着く猫のところ。

グループホーム「おーるわん」では動物が“同居”
グループホーム「おーるわん」では動物が“同居”
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福井市内のグループホーム「おーるわん」は、障害がある人たちが地域との関わりを持ちながら、自立した生活を目指す施設だ。
ただ、ほかの施設と大きく異なるのは、犬や猫などの動物が“同居”していること。

ペット共生ホームに入所する女性:
猫じゃらしとか、手作りしたおもちゃで遊ぶ。楽しくて大好きです

ここで暮らす動物たちは、1匹の保護犬と5匹の保護猫たち。
甘えん坊のラブラドールレトリバーの「サン君」。

社長の椅子がお気に入りの「てんちゃん」。
おとなしいけど食いしん坊の「のんちゃん」。

保護猫の「のんちゃん」
保護猫の「のんちゃん」

一番人懐っこく、おしゃべりな「みーこちゃん」。
好奇心旺盛、やんちゃな「コクちゃん、ハクちゃん姉妹」。

命を救いたいと、施設の社長が迎え入れた。

この施設は2020年12月にオープンし、今は3つの建物に20代から60代までの27人が生活している。多くは仕事に通うなどして日中は外出していているが、帰宅後はそれぞれの部屋と共同スペースで思い思いの時間を過ごす。

入居者たちが大切にしているのは、動物と触れ合う時間だ。

ペット共生ホームに入所する女性:
今まで家でペットを飼っていたけど、亡くなってしまった。ここに来て平和です

入所する男性:
犬を3匹飼っていた。ゴールデンレトリバーも死んで、さびしい思いをしていたが、この施設に来て、サンちゃんとかと遊ぶようになった

動物と触れ合う入居者たち
動物と触れ合う入居者たち

ペットを失った入所者も、ここで動物たちと暮らせることが心の支えになっている。また、自分が飼っていたペットとともに入居できることも安心につながっている。

動物と接することで気持ちのバランスを

社長の石山大作さんは警備会社を経営してきたが、人も動物も幸せになれる取り組みをしたいと、県内初となるペット共生型の障害者グループホームを設立した。警備会社での経験を生かし、防犯カメラを完備。スタッフは24時間常駐する。

警備会社での経験を生かした設備も
警備会社での経験を生かした設備も

障害者と動物が共生する施設を運営・石山大作社長:
いざ仕事としてみんなと生活していくと、徐々にお客様というより仲間、友達、家族という感じで、他人事でなく自分事になる。なんとかしてあげたい、何とかしなきゃという思いが日々高まった1年半だった

石山大作社長
石山大作社長

グループホーム制度は、1989年に障害者ができる限り地域に出て普通の生活を送れるようにと国が創設した。現在、県内には障害者を対象としたグループホームは106カ所ある。

精神的に不安定な日や体調の悪い時もあるが、こちらの施設では動物と接することで、入居者が気持ちのバランスを取っている。

ペット共生ホームに入所する男性:
僕に懐いてくれる。自分がイライラした時には癒される

サン君の朝の散歩。動物の世話は原則スタッフが行うが、仕事が休みの時は入居者も同行する。動物を介して、入居者同士だけでなく、スタッフとの人間関係もうまくいっているという。

動物を介して入居者とスタッフの関係も良好に
動物を介して入居者とスタッフの関係も良好に

障害者と動物が共生する施設を運営・石山大作社長:
入居者とスタッフ、人と人とのつながりがあるが、そこにペットがいることによって共通の話題で会話するようになったり、元気のない入居者がいれば、犬猫のもとへ連れていって励ますとか、人間にはできないことが犬猫にはあると思う

今では散歩中、近隣住民からも声をかけられることが増えてきた。動物たちの無邪気で愛らしい姿に癒されるのは、入所者だけではなくなってきている。
現在、施設の拡大も目指していて、障害がある人たちの自立と、動物の保護をさらに広げていきたいとしている。

(福井テレビ)

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