おいしそうな料理に使われているのは、イノシシの肉。
このイノシシ料理がふるまわれたのは、愛媛県松山沖の睦月島。
実は島では今、イノシシの被害が深刻になっている。

何度もイノシシが畑を荒らし…「心が折れた」

大きな鼻を使って土を掘りながら、人間を威嚇する大きなイノシシ。これは、松山沖の興居島と中島の間にある睦月島の映像だ。

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福吉貴文キャスター:
山の中に入って来ました。暴れ回ったイノシシによって掘られた穴がたくさんできています。こちらにも深い穴ができています。イノシシのどう猛さが伝わってきます

かんきつ農家・森本泰光さん:
3年ぐらい前に、柵をしとってもイノシシが何回直しても入ってくるんで、畑を荒らしてしまって。あの上、ずっとミカン園地やったんですけど、やめてしまいました。本当に心が折れてしまうという感じですね。駆除は、どんどんせんといかんかなと

鉄の柵と電気柵で二重にミカン園を囲むなど対策をとっているが、それでもイノシシの被害が後を絶たない。
その結果、ミカン栽培そのものをやめてしまった土地もあり、それがさらに悪循環を生んでいる。

島民を超える数がいる…

睦月地区イノシシ対策協議会・森本茂さん:
こういう荒れた畑が増えるということは、そこがイノシシのすみかになって、イノシシの害が増えてくる。こういう畑がいっぱいあるんですよ

かんきつ農家の森本茂さん(68)。
3年前に、島でイノシシの駆除に取り組む会を立ち上げた1人。

睦月地区イノシシ対策協議会・森本茂さん:
これが「箱罠」といって、おりの中に餌を入れておいて、イノシシが餌を狙って入るとそこに糸が張っていて、その糸に触るとドアがパシャっと落ちる

(Q.島のイノシシは?)
睦月地区イノシシ対策協議会・森本茂さん:

500頭いると言う人もいるし。いや、もっといるんじゃないかという人もいる。この島はね、人間の数より多いのは、イノシシとカラスとネコです

睦月島の人口は約190人。このうち8割余りは65歳以上で、5年後には人口が半分になるという予測もある。

一方で、島民を超える数がいて、農作物に深刻な被害を与えているイノシシ。高齢化と過疎化に加えて、イノシシ被害が島の大きな課題となっている。

睦月地区イノシシ対策協議会・森本茂さん:
まだまだ、地区の皆さんは駆除は誰かがやってくれることだという考え方の人が多いです。もっと自分たちの問題として考えていただけるチャンスにしたいなと

睦月島が直面するイノシシの問題を、島民みんなにも考えてもらいたい。そこで、森本さんは7日、島であるイベントを開いた。

まずは「イノシシ肉をおいしく味わってもらう」

イベントの主役は、島内で捕獲されたイノシシの肉。
慣れた手つきで手際よく肉をさばくのは、東京でレストランを営むイタリア人シェフのカルミネ・コッツォリーノさんだ。

シェフ カルミネ・コッツォリーノさん:
レモンすごい。地中海のレモンと変わらないですね

(Q.レモンをたっぷり入れますね)
シェフ カルミネ・コッツォリーノさん:

イノシシの野生のにおいを取るために、1時間くらい(浸します)

作っているのは、南イタリアの伝統料理「カチャトーラ」。味付けにワインを加えて、イノシシの肉をじっくり煮込む。

シェフ カルミネ・コッツォリーノさん:
今の人間は、育てられた牛とか豚とかの味しかわからない。でも、本来は100年前、200年前は、こうした肉は野生のものだったんです。いかにおいしく食べるか。脳みそ使って、イマジネーションを使って調理しなきゃいけなかった。だから(今は)物がおいしいんです

シェフの出身国・イタリアでは野生のイノシシ肉が身近な食材として親しまれていて、さまざまな調理法が生活に根付いている。

そこで、島民にまず手始めにイノシシ肉をおいしく味わってもらって、そこからイノシシ問題を考えてもらおうと、森本さんがシェフを島まで招いた。

睦月地区イノシシ対策協議会・森本茂さん:
試食。盛りだくさんのプログラムを用意しておりますので、ぜひ最後までごゆっくりお楽しみいただきたいと思います

イベントに参加したのは島民50人ほど。
約3時間かけて、じっくり煮込まれたイノシシ肉がパスタとともに振る舞われた。

(Q.これまで食べたことは?)
試食した島民:

全然ないです。きょうが初めて。何かおいしい。さすがシェフが作った料理です

試食した島民:
くさいんか思ったら、くさくないね。いい匂いがしよるけんね。おいしい

さらに、炭火で焼いたイノシシの肩ロースの焼肉も登場。

(Q.おいしい?柔らかさは?)
試食した島民:

これはラーメンの中に入っとるチャーシューやろ?

調理の方法によってはイノシシの肉の臭みもなくなり、おいしく食べられる。

地域の人が主体的に駆除に関わることが重要

そして、おいしい料理を味わったあとは、参加者を対象にこんなレクチャーが行われた。

中島イノシシ対策協議会・田村俊和さん:
このお皿を(イノシシが)踏んだら、ポンとこの輪っかが飛び上がって、イノシシの足をくくるわけです。この中に足を入れてくれないと、イノシシはかかりません

 

島民に説明されたのは「イノシシを捕獲する方法」。その狙いは、「みんなでイノシシに立ち向かうため」。

中島イノシシ対策協議会・田村俊和さん:
一番何が大切かって言ったら、イノシシのわなをどこにかけるかっていうことが一番大事なんです。イノシシの通りよる道を見て、これいつも通りよるなとか、あの辺歩きよるみたいやけん、ちょっと見てみたら?って(わな師に)言ってあげたらいいんじゃないかなと

島民たちもイノシシの被害の経験者だが、捕獲方法を知らない人も多い。今回のイベントは、食べることをきっかけに島が直面する課題を考える新たな機会となった。

睦月地区イノシシ対策協議会・森本茂さん:
地域の人が主体的にイノシシの駆除に関わらないと、イノシシの被害は根本的に解決できない。地域の皆さんの関心を強くしていただいて、われわれと一緒にイノシシと戦っていく

森本さんは、地域の人が関心を持つことが解決につながると話す

森本さんらのグループは今後、島民にイノシシの出没情報を提供してもらったり、わなを仕掛けるメンバーを増やしたりして、島民一丸となってイノシシ被害対策に取り組んでいきたいとしている。

(テレビ愛媛)

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