能登半島の最先端に位置する、石川県珠洲市。ここで2020年12月頃から地震が頻発している。2021年9月には震度5弱を観測するなど、震度1以上を観測する地震は140回を超えた。いったい、何が起きているのだろうか?

2021年9月に震度5弱を観測 夕方のニュースで緊急地震速報
2021年9月に震度5弱を観測 夕方のニュースで緊急地震速報
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度重なる有感地震に危機感

珠洲市ではさらに地震の発生件数が増加。約140回のうち半分の70回(6月3日時点)は、2022年に入ってからの地震だ。珠洲市民の間では危機感が増している。

群発地震に不安を漏らす珠洲市民
群発地震に不安を漏らす珠洲市民

珠洲市民:
とても不安なので…日々。ちょっと揺れるだけでもうドキッとしますね。

珠洲市民:
もっとこれから(地震が)増えたらどうしようかと思います。

2022年6月、石川県珠洲市で地震に関するシンポジウムが開かれた。金沢大学の研究者らが開いたもので、約200人の市民が駆けつけた。

シンポジウムはほぼ満席に
シンポジウムはほぼ満席に

金沢大学 青木賢人准教授:
家の倒壊と家具の転倒、致命傷となる被害はこの2つです。不安に思っている方はぜひ、家具の固定だけでもお願いします。

珠洲市で地震が相次いで発生するようになったのは2020年12月頃から。2021年9月には震度5弱を観測するなど、震度1以上を観測した地震は約140回。一連の地震について研究してきた金沢大学の平松良浩教授が、最新の研究結果を報告した。

研究結果を報告する金沢大学の平松良浩教授
研究結果を報告する金沢大学の平松良浩教授

金沢大学 平松良浩​教授:
地震の原因となる「流体」というものが、珠洲市の地下部分にある証拠が得られました。

能登の群発地震 原因は「流体」

平松教授ら金沢大学のグループと京都大学地震研究所などは、2021年11月から2022年春にかけて珠洲市の地下構造の調査を行った。その結果、震源が集中している珠洲市の北西部から南東部の地下十数キロに、幅広く「電気を通しやすい」部分があることが分かったというのだ。

「電気を通しやすい部分」とは、岩などではなく高温の水やガスなどの「流体」。それが震源の位置と重なるというのだ。

震源と流体の位置がほぼ重なるとの結果。断層面に流体が入り地震が発生か
震源と流体の位置がほぼ重なるとの結果。断層面に流体が入り地震が発生か

金沢大学 平松良浩​教授:
断層面に「流体」が入って断層が動きやすくなる。その結果、地震が群発的に発生しているということが考えられます。

群発地震の調査結果を報告する平松教授
群発地震の調査結果を報告する平松教授

観測データはあくまでも暫定値だが、奥能登の群発地震の原因は珠洲市の地下にある「流体」であることが、ほぼ裏付けられたことになるという。

またこれまでの研究で、珠洲市の地下深くに約2000万年前の火山活動による巨大なくぼ地=カルデラがあることも確認されている。そのため、このマグマの通り道を利用して流体が上がってきたのではないかとの推測もできるという。

約2000万年前の火山活動による地形も影響か
約2000万年前の火山活動による地形も影響か

約2000万年前の火山活動の影響?

火山活動と聞いて、シンポジウムでは市民から新たな心配の声もあがった。

参加した珠洲市民:
流体という話があったんですが、ひょっとしたらマグマの通り道で爆発するんじゃないかと、過度な心配を抱くこともあるんですけど…

約2000万前の火山活動の跡について質問

金沢大学 平松良浩​教授:
マグマかもしれないというのは、私たち研究者間でもそういう話しをしない事はないんです。ただ、地震波の速度などを調べた別の研究データを見ると、よくある活火山の下にあるマグマだまりの特長のような地震波の速度の構造はしていない。だから、マグマという可能性はあまり考えなくてもいいんじゃないかと、今のところ考えています。

シンポジウムでは他にも、市民から様々な質問が投げかけらていた。

金沢大学 平松良浩​教授:
シンポジウムで市民の不安解消までは至らないかもしれませんが、少なくとも何が起こっているのかということを正しく知って、その上で自分たちに何ができるかということを考えて頂く機会になれば、うれしく思います。

いま一度、防災への意識を高めて欲しいと話す平松教授
いま一度、防災への意識を高めて欲しいと話す平松教授

災害はいつ、どこで起こるか分からない。群発地震が警鐘を鳴らしているのは、能登の人々に対してだけではない。

(石川テレビ)

石川テレビ
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