宮崎県串間(くしま)市の都井岬(といみさき)に生息する在来馬の一種・御崎馬(みさきうま)。ここに、御崎馬の監視員として働く女性がいる。
大自然の中で自由に生きる馬たちと向き合う中で、気づいたこととは…。

野生の姿に魅入られ…御崎馬のために関東から移住

宮崎県の最南端に位置する串間市の都井岬。約100頭の御崎馬が、日本で唯一、野生本来の姿でのびのびと暮らしている。

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ここには、日々、馬たちを見守る監視員と呼ばれる人がいる。
関東から移住してきた監視員の渡邉木直(わたなべ・きなお)さん(27)は、御崎馬に魅せられて、2020年に串間市に移住した。2021年4月から、都井岬で監視員の一員となった。

野生馬監視員・渡邉木直さん:
こうやって馬たちが本当に馬らしい姿で、のびのび自分たちで家族をつくって暮らしているのが、見ていてすごく幸せな光景だなと思って。それをずっと見ていたいなと思って(串間市に)来ました

監視員の一日は、岬のパトロールから始まる。パトロール中には、道路に落ちている馬ふんを掃除することもある。この日は、新人の監視員に仕事を教えながらのパトロールだ。

渡邉さんが監視員になって1年。その気さくな人柄は、周囲の人たちから愛されている。

准教授も「すごい」と唸る観察力… 遠くからどの馬か認識

都井岬で暮らす女性:
(渡邉さんは)とってもいい子ですよ。そして、もう馬のことになると一生懸命

宮崎大学で野生馬を研究する 小林郁雄 准教授:
(渡邉さんは)馬好きですよね。馬大好きだし、すごく観察力があるので、自分が気付かないことを教えてくれるので、すごいなと思います

監視員は、御崎馬に割り振られた番号をもとに、日々の行動を把握する。

野生馬監視員・渡邉木直さん:
2週間ぐらいしたら、(どの馬か)大体みんなわかってきます

―――向こうの馬の番号は?

野生馬監視員・渡邉木直さん:
あれはこの子と一緒の群れの子なので、手前が94番かな。奥の右が6番で、その横が76番だと思います

遠くからでも馬一頭一頭をばっちり把握
遠くからでも馬一頭一頭をばっちり把握

監視員になる前から馬が大好きな渡邉さんは、番号に加えて、馬一頭一頭の毛色やたたずまいを覚えているという。

野生馬監視員・渡邉木直さん:
ここに来る前は(栃木県の)牧場で馬の飼育員のような仕事をしていました。そういう子たちって毎日、結構手入れとかもしっかりするのですが、でも都井岬の子たちは手入れを1回もしたことなくて、すごくひづめもきれいで毛並みも良くて、これが本来の姿なんだなって感動しました

「生きてくれていることが本当に奇跡」 気づいた命の尊さ

しかし、野生の馬を見守るからこそ、直面する現実がある。

野生馬監視員・渡邉木直さん:
そこに、全身じゃないんですけど骨があります。頭蓋骨と背骨…。すごく好きな子だったんですけど、残念ながら亡くなってしまって…悲しかったですね

雄の御崎馬の遺骨
雄の御崎馬の遺骨

ここで眠っているのは、2021年10月にこの世を去った雄の御崎馬だ。渡邉さんは、この1年で多くの馬との別れを経験した。

野生馬監視員・渡邉木直さん:
大人の馬も子馬もいつ死ぬかわからないし、きのうまで元気に生きてた子が急に倒れていたこともあったので、本当に生きてるのは当たり前じゃないんだなって…。だから、なるべく毎日たくさんの馬に会えるようにしています

愛する御崎馬を見守り続ける中で、この1年、渡邉さんが気づいたのは「命の尊さ」だった。

渡邉さんは御崎馬を見守る中で「命の尊さ」に気づいたという
渡邉さんは御崎馬を見守る中で「命の尊さ」に気づいたという

野生馬監視員・渡邉木直さん:
子馬から大人になれるのもすごいことですし、大人になってからも群れのボスになったり、お母さんになったり、そこまで生きてくれていることが本当に奇跡というか、その姿を見られることが幸せだなと思うので、それを見守れるだけで私はうれしいです

自然の豊かさと厳しさの中、命が巡る都井岬で、渡邉さんはきょうも御崎馬を見つめている。

(テレビ宮崎)

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