2021年の技能五輪、フラワー装飾部門で金賞に輝いた若きフローリストがいる。追いかけるのは、日本一に輝いた父の背中だ。

花の世界で活躍する父子

長野県佐久市の生花店「S・K花企画」。

女性客:
お誕生日なんですけど、祖母にやさしい感じの花束を…

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オーダーを聞き、手際よく花束を作るのは桜井春希さん(21)。

桜井春希さん:
ありがとうございます。またお願いします

女性客:
すごい素敵で、かわいいね。予想以上の花束を作っていただけて、とてもよかったです

春希さんは入社3年目だが、店イチオシの若きフローリストだ。2021年、全国の若手が腕を競う「技能五輪全国大会・フラワー装飾部門」に出場し見事、金賞に輝いた。

提供:桜井春希さん

桜井春希さん:
金賞の発表を見た時は、ほっとした

――喜びより安堵が大きかった?

桜井春希さん:
そっちの方が大きかったです。指導してくれた方に感謝したいという気持ちでした

春希さんが花の世界に身を置くのは、その生い立ちが深く関係していた。

桜井春希さん:
実家が生花店だったんですけど、花の業界の自分の父っていう存在が、意外とでかいんだなと

春希さんの父・桜井慎さん(49)は、上田市で生花店を営むフローリスト。

2017年の「フラワーデザイン競技会ジャパンカップ」で、優勝にあたる内閣総理大臣賞を受賞。つまり、日本一のフローリストなのだ。県内出身者では2人目の快挙だった。

桜井春希さん:
普段はお父さんって感じなんですけど、尊敬するひとりの「フラワーアーティスト」になりました

”親子2人の師匠”のもとで修業

県内で初めて「ジャパンカップ」で優勝したのは、春希さんが働くS・K花企画の会長、金沢茂さん(68)だ。

実は父の慎さんも若い頃、S・K花企画で修業していて、金沢さんに指導してもらった。つまり、金沢さんは慎さん・春希さん親子2人の「師匠」なのだ。

高校卒業後の進路で迷っていた春希さんを花の世界に誘ったのも金沢さんだった。

S・K花企画 金沢茂会長:
(父・慎さんに)「春希君を花屋にさせないか、うちに預けてみない?」ということで電話を入れて、卒業間際にうちに来ることになりました

桜井春希さん:
お花のことを全く知らなかったので、仕事をしていく中でお花のデザインがきれいだなって思えるようになってきて、自分だけのフラワーデザインを新しく作りたいなと

店の営業が終わると月1回、金沢会長によるレッスンがある。

金沢会長によるレッスン まっすぐ伸びるオクラレルカを生かした作品制作が課題

S・K花企画 金沢茂会長:
線で花を生きけてほしい

まっすぐ伸びるオクラレルカ。この直線を生かして、作品としてまとめるのがこの日の課題だ。春希さんは、ハート形の葉や花が特徴のアンスリウムを選び作品にしていった。

S・K花企画 金沢茂会長:
これさ、アンスリウムの葉っぱの前に生けてみて

師匠は、桜の枝を挿すようアドバイス。

S・K花企画 金沢茂会長:
そうそう、これが”線”になる

完成した作品の名は「直線と曲線」。

師匠のアドバイスを受け、桜の枝を挿した

S・K花企画 金沢茂会長:
桜が入っただけで違うよね。直線と曲線、めちゃかっこいいわ。この桜、効いたね

桜井春希さん:
自分には考えつかないデザインを毎回、教えてくれるので、いろんな作品のデザインを考える時の引き出しになる

春希さんは気づいたこと、気になったことをつぶさにメモしている。師匠のアドバイスと地道な努力が、春希さんを成長させている。

春希さんのノート 気付いたことをメモしている

S・K花企画 金沢茂会長:
丁寧だよね、仕事が。花を生けている姿が少しずつ、身についているなと感じました

ジャパンカップで賞をとり、父の店を継ぐ

春希さんの成長ぶりを父親の慎さんに見てもらおうと、2人に協力してもらった。

春希さんと父・慎さん

桜井春希さん:
長野県の自然の雰囲気を出したいので、草花を使ってブーケタイプの花束を作ります

上田市の店で、春希さんの作品づくりを慎さんに見てもらうことに。

草花を使ったブーケを作る春希さん

父・慎さん:
普段の仕事ぶりは一切見てないです。不思議な感じですね

春希さんはこの時期、野山で見かけるナズナやトルコギキョウなどで信州の自然を表現することにした。春希さんの制作を見つめる慎さん。その目は「父」ではなく「フローリストの目」だ。

父・慎さん:
あんまり出しすぎるとツンツンしちゃうから、少し削った方がいいかも。頭くらいのほうがいいかもしれない

約15分でブーケが完成した。作品名は「ナチュラル」。

野山で見かけるナズナやトルコギキョウを使い、信州の自然を表現

桜井春希さん:
うまくできたかなって感じです

父・慎さん:
ここまでできるようになったなと、思いながら見てました。全部白、グリーンにするだけでなく、少し強めの色を織り交ぜたところが春希らしいのかな

佐久と上田で離れて暮らす親子。同じ道を歩み始めた春希さんに慎さんは…。

父:慎さん:
不安、心配、務まるのかなって。やはり厳しい世界ですし、迷惑かけないでやっていけるのかなって不安はありました。同じ苦労とか喜びを共有できるというところも、普段の会話でできるのでうれしい

師匠のもとで成長し、父の背中を追いかける春希さん。最後に今の目標を聞いた。

桜井春希さん:
父と金沢会長が優勝したジャパンカップにまずは出場したい。ゆくゆくは最高賞を目指して取りたい。花の勉強を今後、何年かわからないけどやっていって、実家の桜屋に戻って継いでいきたい

(長野放送)

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