皆さんは”宇宙葬”をご存知だろうか?人やペットの遺骨を宇宙に打ち上げて散骨する自然葬のひとつだ。この宇宙葬、日本でも対応する企業が増えているという。

その中の1つ、茨城県つくば市にある宇宙葬ベンチャーの「SPACE NTK」は、4月1日にアメリカの宇宙企業「スペースX社」のロケット(ファルコン9)で人やペット計10体の遺骨の一部を宇宙空間に送ることに成功した。

スペースX社のロケット:ファルコン9(画像提供:SPACE NTK)
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遺骨は円筒形の専用のカプセルに納められ、これを小型の人工衛星「MAGOKORO(20cm×20cm×10cm)に入れてロケット上段に搭載。ロケットはアメリカのフロリダ州から打ち上げられると、ロケットの上段部分は切り離され、下段部分は元の発射台へと戻っていく。そして、上段部分は地上から500km~600 kmを周回し、5~6年後に大気圏に再突入し燃え尽きるという。

軌道図(画像提供:SPACE NTK)

今回、ロケットに搭載された人工衛星はこれだけではないが、「SPACE NTK」の葛西智子代表いわく、遺骨だけを納めたオリジナル人工衛星を宇宙に打ち上げるのは世界初だという。なお、今回の小型の人工衛星「MAGOKORO」は東京の町工場、加藤製作所で特注されたものだ。

小型人工衛星「MAGOKORO」(画像提供:SPACE NTK)

母の言葉「人は亡くなったら星になって輝き続ける」

いまや散骨の方法は、海などの地球に留まらず、宇宙にまで広がっているというのには驚きだ。詳しいプランの内容やどんな人が申し込んでいるのだろうか?「SPACE NTK」の葛西智子代表に詳しく話を聞いてみた。


――宇宙葬を始めようと思ったきっかけは?

幼い頃に私が「人が亡くなったらどうなるの?」と母に聞いた時、母が「空を見上げてごらん、人は亡くなったら星になって輝き続けて地球にいるみんなのことを見守ってくれるよ」と言ってくれたことが耳に残ってました。

それで、私も亡くなったら絶対星になろうと思ってたんです。成人して葬儀の世界に入って、小さい時に言われた母の言葉を思い出して、星になるってことは、宇宙に行く、宇宙葬なんじゃないかと思ったんです。この私の思いは私だけが思ってるじゃないはずだと思い、それで宇宙葬を広めていくことにしました。


――会社の創業はいつ?

2017年に創業しました。ただ創業したものの、当時、宇宙葬が日本ではできないことがわかりました。日本は当時、宇宙ビジネスに名も無い民間が入れなかったんです。それで、アメリカの宇宙開発会社のロケットを利用しないとできないことがわかってアメリカのスペースX社のロケットで行うことになりました。


――費用はいくらくらいかかる?

ご遺骨の量は3つのカプセルの大きさで選ぶことができます。小カプセル(50×50×50mm)は550,000円。中カプセル(50×50×100mm:ご遺骨の一部)は1,100,000円。

大カプセル(100×100×200mm:ご遺骨一体)は5,500,000円~です。ペットの葬儀費用は、遺骨の一部は550,000円、遺骨一体は1,100,000円となります。

また、遺骨を納めたカプセルを積んだロケットの打ち上げを見学する場合は別途費用が発生します。

遺骨を納めるカプセル(画像提供:SPACE NTK)

――遺族にはどんなサポートがある?

打ち上げが終わった後、ご契約いただいた方には、人工衛星の位置確認をお伝えするのと、ファルコン9の写真、記念品、スペースX号からの打ち上げ証明書をお渡しします。

遺族「やっと父の思いが叶いました」

――今回打ち上げられた10体の人とペットの割合は?

全部で10体、ペット5匹分と人が5人分です。5人のうちのお2人の方は、家族で宇宙旅行を楽しみたいということで家族の毛髪を一緒に入れて宇宙旅行を楽しんでいます。残りの3人の方は単独で遺骨だけ打ち上げた形になります。


――申し込まれた方に共通することは?

皆さん、生前、宇宙に憧れていた方。宇宙に行きたかった方。亡くなったら土の中じゃなく、できれば宇宙に行きたいなという方ですね。それで家族の方が叶えてあげたいと思ったというのが共通しています。


――体験した遺族たちの反応は?

打ち上げの瞬間を見てたんですけど、皆さん感動して涙を流して「ありがとうございます」と言ってくださいました。「やっと父の思いが叶いました。これからは父が上から見ているようで悪いことはできません。」という声や「(旅行好きの母に)初めて親孝行が出来た」という声もいただきました。

打ち上げの瞬間(画像提供:SPACE NTK)

――葛西代表の感想は?

ドキドキでした。皆さんからお預かりした遺骨が無事に打ち上がってくれるのか? 最初はワクワクしてたんですけど、だんだんドキドキしてきて、打ち上がった瞬間は「早く上まで行って」という感じでした。宇宙空間に到達した時、周りの人たちと抱き合いながら涙流してました。

思いを人工衛星に乗せて宇宙に届けるのは日本人らしい

――ここまでの苦労は?

とにかく初めて尽くしだったので手当たり次第にあたったというのがあったので、誰を信じて良いのか?とにかく人の巡り合いに苦労しました。後は資金調達。良いパートナーに恵まれてギリギリで解決したのでそういう点では勉強になりました。


――スペースX社に言われて印象に残っている言葉は?

研究、開発ではなく人の心を乗せるのは本当に初めてと言われました。日本人らしい、葛西さんらしいと。思いを人工衛星に乗せて宇宙に届けることができる、一般の人が宇宙に関わりを持ちやすくするためにも広めて欲しいと言われました。


――宇宙葬は日本の法律上、問題はないの?

散骨に関しては「葬送の一つとして節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪には当たらない」というのが、法務省の見解です。また、宇宙には法律が無いのと、弊社の宇宙散骨はアメリカのロケットで行うので日本の法律とは無関係になります。但しアメリカにご遺骨を持って行くのに、ご遺骨と遺骨証明書のご準備は必要です。

定員なし、集まった分だけ打ち上げる

――次回の申し込みの状況は?

ペット1匹とお母様の遺骨です。今回、新聞などにも取り上げられたことで問い合わせも増えています。


――申し込み人数の定員はある?

特にないです。集まったら集まった分、きちんと打ち上げられるように調整できます。ただし、申し込みの締め切り日があるんですけど、それに間に合わない場合は次になってしまいます。来年1月に予定している分に関しては、ずれる場合もありますが、8月の末日に間に合えばということになってます。


同社によると、この先も1年ごとに宇宙葬を予定しており、月の散骨も来年の夏以降に検討しているという。宇宙葬が身近な存在になる日も近いかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。

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