NBSのニュースで紹介してきた、ポーランドで避難民を支援する長野・千曲市出身の男性。実は自宅でウクライナの避難家族を受け入れている。一家が住んでいたのは、あの惨劇の街…。
今、避難民、そしてウクライナに何が必要か、日本に何ができるかを聞いた。

ポーランドで避難民を支援 ウクライナに物資発送

坂本龍太朗さんリポート:(3月18日、ポーランド・ツェレスティヌフ)
これは、これからポーランドからグリニャー二というウクライナの街に送る支援物資。テントや毛布、この箱の中には靴が入っています。これは男性の靴です。こういったものを20足、送ります

この記事の画像(12枚)

声の主は千曲市出身の坂本龍太朗さん。ワルシャワの日本語学校で教頭を務めるかたわら、ポーランドに押し寄せるウクライナ避難民を支援してきた。

坂本龍太郎さん(左)とウクライナから避難してきた人
坂本龍太郎さん(左)とウクライナから避難してきた人

そして、今は…

坂本龍太朗さん:
今、このバスでウクライナに向けて物資が出発しました。日本からいただいた支援金を使って買った物資がたくさん入っています

提供 坂本さん
提供 坂本さん

坂本さんは郡の役場と連携、今はウクライナにとどまっている人々に物資を送ることに力を入れている。

資金源は坂本さんの日本語学校と交流のあった坂城町や、出身地・千曲市の募金活動。寄付金はウクライナ支援の物資に充てられていた。

長野県千曲市での募金活動
長野県千曲市での募金活動

坂本龍太朗さん:
ウクライナ国内の姉妹都市などから、こういったものが必要というリストが来るんですよ。テントですとか、寝袋、マット、シーツ、食料、あと男性用の靴とか服とかも足りていない。
ポーランドに逃げてくることができた皆さんって、それなりに恵まれている。こちらで食べ物もあれば、暖かい部屋もあれば、屋根の下で暮らせる。
一番支援が必要なのは、マリウポリの子どもたちや、ウクライナ国内であすの食べ物もないようなところの支援。『目の前の支援』だけで満足していたら、本当に大切な命は救えないということ

坂本龍太朗さん(リモート取材)
坂本龍太朗さん(リモート取材)

惨劇の街の住民を自宅に受け入れ…「ショックを受けている」

その一方で、坂本さんは「目の前の支援」も続けている。坂本さんの家族と一緒に写真に収まっているのは、オルガ・ガルクーシャさんの一家。3月12日から坂本さんの家に身を寄せている。

坂本さんの家族とガルクーシャさんの家族(提供 坂本さん)
坂本さんの家族とガルクーシャさんの家族(提供 坂本さん)

一家が住んでいたのは首都・キーフ近郊のブチャ。320人の民間人が虐殺されたと言われ、世界を震撼させたあの惨劇の街だ。

オルガさんと娘、それぞれの夫は国に残り、軍の後方支援に当たっているそうだ。

坂本龍太朗さん:
ロシア軍が入ってきて、住民が外に出されたんですよ。パスポートを見させられて、そのあと家に帰るように指示されたところで、背中を向けたところで後ろから撃たれて亡くなったという方がいると聞いていますね。戦争が始まってすぐのこと。その時もうすでに、そういった虐殺が始まっていた。
(一家は)ショックは受けていますし、言葉がないというのが正直なところで。四六時中、ニュースを見ています、携帯で…。知り合いを見つけるのが怖いんだと思うんですよね、やっぱり。怖いんですけど、そこから目を背けられないというのが現実だと思いますね。ブチャから目を離すということに、彼らとしては祖国に対する裏切りのような気持ちもあると思う

ガルクーシャさんの家族(提供 坂本さん)
ガルクーシャさんの家族(提供 坂本さん)

不安とストレスを抱える避難家族。坂本さんは通訳となって、就労や支援を受けるのに必要な個人識別番号の取得や口座の開設、そして学校入学の手続きを助けてきた。

また近所の受け入れ家族を集めて、交流のための食事会も開いている。

提供 坂本さん
提供 坂本さん

今、坂本さんが感じている受け入れの大きな課題は、「言葉の壁」と「金銭的な負担」だ。

坂本龍太朗さん:
私たちの自治体でも、ポーランド語の講座を開いていまして、そこに皆さん行って勉強していますけどね。ただ、それも週に2回。どこに行ってもポーランド語というものは壁になりますね。仕事を見つけたとしても、そこでずっと通訳がいるわけではない。そうなると、自分たちでそれなりに自立していかなければ、今後の生活は正直言ってかなり難しくなる

坂本さんは日本からの寄付を物資の購入に充てており、避難家族の食費などは「持ち出し」で対応している。行政の支援もあるが、避難民が多すぎて対応できていない。

提供 坂本さん
提供 坂本さん

坂本龍太朗さん:
金銭的には相当な負担になっています。行政からの補助として、一人一日につき約1000円というのがあるんですけど、それをもらっているという家庭、戦争が始まって1カ月になりますけど、私の周りでは誰一人としていませんね

日本も避難民の受け入れに動き出し、県内にも前向きに検討している自治体がある。ただ、日本は遠すぎるため、坂本さんは「来日する避難民の数は限られる」とみていて、それ以上に期待したいことがあると言う。

「目に見える支援がウクライナの力になる」

坂本龍太朗さん:
ウクライナの国内が一番心配ですし、深刻なんですよね。目に見える物資を送るとか、そういうところでウクライナに支援してほしい。なんで目に見えるかが大事かというと、目に見えることによってポーランドや欧州だけではなく、アジアの日本も、ウクライナを支えているということを、ウクライナの皆さんに伝えるのが大きな力になる

坂本龍太朗さんリポート:
私たちの郡から35人の避難民をスイスに輸送します。しばらくこの施設で過ごした人が多かったので、本当に寂しい思いです

ウクライナから避難してきた人と坂本さん
ウクライナから避難してきた人と坂本さん

県民の思いも受け止め、ポーランドで活動する坂本さん。奮闘の日々が続く。

坂本龍太朗さん:
長野県の皆さんも、ウクライナというのは遠いんでしょうけど、心を寄せてくださる方々、本当にたくさんいらっしゃって、皆さんの思いを受け止めて、活動に生かしていければなと思っている

(長野放送)

長野放送
長野放送

長野の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。