ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、ビクトリア・カトリッチさんの家族3人が広島・福山市に避難してきた。慣れない土地で始めた新たな生活、決して遠い場所で起きているわけではない、確かな現実。

祖国に残る医師の父「早く会いたい」

「見せたい写真がある」と言って、彼女はスマートフォンの画像をテレビ新広島の記者に見せてくれた。

ビクトリア・カトリッチさん:
とても綺麗な桜でしょう。私のお気に入りの1枚です

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避難先の福山市で撮影した写真だ。ウクライナの自宅にも植えてあった桜。毎年庭で見ていたその花を2022年は遠く離れた異国の地で見ることになった。

ビクトリア・カトリッチさん(23)と7カ月の娘、ソフィアちゃん。そして、母親のタチアナさん(50)。ビクトリアさんは父を残して、ウクライナ南部オデーサの隣・ミコライフ市から3月、福山市に避難してきた。

ビクトリア・カトリッチさん:
昨日は少し疲れたけど、1日寝たら元気になりました。私たちは1日も早くウクライナに戻って、残している父にとにかく早く会いたいです

母・タチアナさん:
ここはとても落ち着きます。すごく静かで銃撃の音も聞こえません。ウクライナでは朝起きた時から、銃撃の音が聞こえます

避難の支援をしたのは福山市の不動産会社に勤める西谷友宏さん。3年前、ウクライナを訪れた際に高熱を出し、医師だったビクトリアさんの父親と知り合いに。そこから交流を続けてきた。

ビクトリアさんが住む家の近くにも爆弾が落ち始め、命の危険が迫っていたことから、ビクトリアさんに家族みんなで福山市へ避難するよう助言し、飛行機のチケットなどを手配した。

クレスト不動産・西谷友宏さん:
数日経って周りの環境にも慣れてきたところ。本人の気持ちを考えて対応したいと思います

食事など日々の生活をサポートしているのは、西谷さんの友人・齊藤かおりさん。来日間もない3人を自宅に招き、近くの公園に散歩へ出かけたり、ウクライナの家庭料理を一緒に作ったりと心のケアに努めている。

いまだ続くロシアによるウクライナへの軍事侵攻。罪のないウクライナの民間人に対する凄惨な行為が、次々と明らかになっている。

地方行政庁舎への攻撃で友人を失う

4月に入り、ビクトリアさん家族は福山市内のマンションに移った。気兼ねなく家族3人だけの時間を過ごしてもらうためだ。夕食は天ぷら。齊藤さんと母・タチアナさんが一緒になって作った。

支援者・齊藤かおりさん:
魚の天ぷらを食べましょう

タチアナさんはロシア語しか話せないため、スマートフォンの翻訳機能を使いながらコミュニケーションをとる。

母・タチアナさん:
勉強しています

夕食の前、ビクトリアさんが記者に色んな写真や動画を見せてくれた。

ビクトリア・カトリッチさん:
これは新年を祝うために作ったケーキです。これは釣りが好きな父のために作ったケーキです

ビクトリアさんの趣味はケーキ作り。家族や友人が喜ぶ姿を見るのが、何よりも好きだという。

その一方、友人から届いたウクライナ国内の動画も見せてくれた。これは3月29日、ビクトリアさんの家があるミコライフ市内の映像。画面の右下が急に煙に包まれた。ビクトリアさんによると、ロシア軍の攻撃で地方行政庁舎や住宅などが被害を受けたという。

ウクライナから避難 ビクトリア・カトリッチさん:
友人は地方行政庁舎で働いていました。この攻撃で友人を含む32人が亡くなりました

日々、スマートフォンに届くウクライナの情報。医師の父・アナトリーさんはウクライナの人々を助けるため、今も現地に残っている。

午後7時、夕食。初めて食べた日本の天ぷらを気に入ってくれたようだ。

支援者・齊藤かおりさん:
今日みたいにご飯を一緒に作って食べたり、ちょっとお出かけしたり。私にできることは大きいことではないけど、手伝いたいと思います

ビクトリア・カトリッチさん:
戦争が早く終わってほしいです。多く味方がついているので、私たちは屈しません

カメラの前で語った「私たちは屈しない」という言葉。一刻も早い平和を広島から願う日々が続いている。

【ビクトリアさん家族への支援】
福山市市民生活課 084−928−1050
クレスト不動産 084−925−1122

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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