ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア。今回の軍事侵攻は、日本海を挟んで山陰両県の対岸にあたるロシアとの交流にも影を落としている。
交流に取り組んできた関係者の今の思いを取材した。

山陰でも、ロシアとの関わりが深いのが島根・江津市。民間レベルでの交流が長い間続いてきた。

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安部大地記者:
江津市和木町とロシアで続く交流、きっかけは日露戦争の最中、この2km先の沖合で沈没したロシア船の乗組員を救助したことから始まりました

交流のきっかけは、日露戦争の最中の1905年。江津市和木町沖の日本海で、当時無敵を誇ったロシア・バルチック艦隊の特務艦「イルティッシュ号」が沈没、地元の住民が生き残った200人以上の兵士を救護した。

地区のコミュニティセンターには多数の史料が保存され、地域の史実を後世に伝えている。

和木地域コミュニティ交流センター・野田久雄センター長:
乗組員が着ていた服が象徴的。実際に上陸するときに着ていた。血の跡だと思う

この出来事の翌年にロシア兵をしのぶ習わしが始まり、「ロシア祭り」として今に受け継がれている。子どもたちが地域の歴史を学ぶ貴重な機会として、コロナ禍でも規模を縮小して開催していて、2022年は秋に延期されることになっている。

一方で、ロシアの人たちが江津を訪れての交流行事は、国境を越えての往来が制限され中止されている。

こうした中で起きたロシアによるウクライナへの軍事侵攻。和木地区の住民たちの心境は複雑。

和木地域コミュニティ交流センター・野田久雄センター長:
和木の先人が行った行為がベースにある。今の社会情勢でどうこうというわけではなく、つながりは大事にしながら、この歴史を起点に友好につなげていきたい

交流の灯を絶やさないためにも、コロナ禍とウクライナ侵攻の早期収束を願っている。

「交流がストップすると、ロシアの実情を理解する妨げに」

一方、影響は学術交流にも…

島根県立大学・山本健三教授:
タタールスタン科学アカデミー歴史研究所と深い交流を続けてきた。今後どうしたらよいかということで、非常に悩んでいる

こう話すのは、ロシア社会論が専門の山本健三教授。2015年に島根県立大学がロシア・タタールスタン共和国の研究機関と結んだ交流協定に基づいて、現地へ派遣された経験を持つ。

コロナ禍で中止された研究者の相互派遣などの交流は、ウクライナ問題もあって再開のめどは立っていないという。

島根県立大学・山本健三教授:
これはロシア国民の戦争ではないと、しっかり認識する必要がある。プーチン大統領の考えている世界秩序と、欧米が考えている世界秩序の食い違いが、この紛争の根底にある

今回の紛争は、ロシア国民の総意ではないと強調。長期化によって交流がストップすると、ロシアという国の実情を理解する妨げになるのではと心配している。

島根県立大学・山本健三教授:
生身のロシア人の姿がなかなか見えにくくなる。正しくまともな国際理解を阻害する。国家同士の関係だけではできないことがあるから、民間交流がある

平和の礎とも言える国同士の相互理解。その機会を保つため、民間レベルでの国際交流の重要性があらためて問われている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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