全身の筋肉が動かなくなる難病ALS。TSKさんいん中央テレビが制作し、ALS患者を取材したドキュメンタリー番組「命の選択」~ALSとの闘い~が、フジテレビ系列27局から選ばれるドキュメンタリー大賞を受賞、先日表彰式があった。
大賞受賞後もTSKさんいん中央テレビでは、この患者のみなさんの取材を続けている。進行する病気と闘いながら、新たな選択へ進もうとする患者の姿を追った。

2021年12月。部屋に設置されたのは浴槽。入浴しているのは、島根・松江市のALS患者・吉岡哲也さん(59)。

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訪問入浴​スタッフ:
今お湯の温度はちょうどいいですか?

吉岡哲也さん:
ありがとう

妻・吉岡朋子さん:
今までは看護師さんに介助してもらいながらシャワーをしていたけど、座っている姿勢がつらくて、訪問入浴にするとお風呂もつかれるし

吉岡さんは、2021年度TSKさんいん中央テレビが制作したドキュメンタリー番組「命の選択」~ALSとの闘い~で取材をした1人。

患者の姿を通じ、生と死について深く問いかけたこの作品が、フジテレビ系列各局が毎年制作するドキュメンタリー番組の中で大賞に選ばれた。全身の筋力が衰え、多くの患者が2年から5年で死亡するといわれる原因不明の難病・ALSと戦う日々。

吉岡哲也さん:
恐怖というか、絶望感というか、余命5年とか言われて…

自らの言葉で伝えた恐怖と絶望感という言葉。TSKでは2020年から吉岡さんを取材。そして番組放送後も吉岡さんを取材している。

難病ALSに効果がある新薬が山形で発表

2022年3月12日取材。
2017年10月に発症したALS、4年が経過した。2022年になってから自分の力で歩くことができなくなり、年が明けてからまだ外出していない。

吉岡哲也さん(意思伝達装置で会話):
動けないとストレスを発散できません。それがストレスです

喉や舌の動きも悪くなり、いま会話のほとんどを意思伝達装置で行っている。
治療法が無いと言われてきたALS。
しかし、2021年12月に山形県である発表があった。

国立病院機構山形病院 ALS治療研究センター・加藤丈夫センター長:
この薬は、原因となるタンパク質の異常凝集を抑制できる世界初の薬

会見したのは、国立病院機構山形病院などで作る研究グループ。ALSの進行を抑える新薬の開発を進めていると発表した。

京都の製薬会社が、認知症のアルツハイマー病治療で開発した新薬だが、山形の研究グループはマウスを使った研究で、ALSの原因タンパク質にも直接作用し、進行を遅らせるのではなく、進行を止める効果があったとしている。

国立病院機構山形病院 ALS治療研究センター・加藤丈夫センター長:
多くの神経内科医にとってはALSというのは大きな山で、これを克服したいと考える神経内科医は日本にも世界にも多くいる。今回このような結果が出て、少し光が見えてきた

実用化されれば世界初となるこの新薬は、2年後の2024年にALS患者への臨床試験を始める予定。ALSの初期段階で進行を抑えることを想定した新薬の実用化は、5~6年後とされている。

症状が進行すると自力呼吸も困難に

取材を始めた2年前、2020年には日常の会話で長くしゃべったり、歩くこともできていた吉岡さん。発症から4年が経った今、多くの時間はベッドで横になり、マスク型の人工呼吸器を装着したままの日々を送っている。

2020年当時の吉岡さん
2020年当時の吉岡さん

吉岡さんは今後、病状の進行と共に、もし自力での呼吸が困難となった場合、喉の気管を切開し、二度と外せない人工呼吸器を装着する選択を迫られている。

野田貴カメラマン:
選択の一つに気管切開がありますが、それは考えていますか?

吉岡哲也さん(意思伝達装置):
まだ決断はしていませんが、多分人工呼吸器を付けると思います

ALS患者と家族は、病気の進行と共に命の選択を考え続ける日々と向き合っている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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