最近よく耳にする「DX」。「デジタルトランスフォーメーション」の略で、デジタル技術を社会に浸透させて生活をよりよく変革することだ。
一見、デジタルとは遠い存在のように思える畑や町工場でも、DXによる変化が起きていた。

鋳物工場でAI活用 カメラが教える稼働効率

明治時代から、静岡県で鋳物(いもの)づくりを続けている「栗田産業」を訪れた。
「鋳物」とは、熱で溶かした金属を型に流し込んで作られるもので、機械部品や日用品などに使われている。

DXに取り組んでいる栗田産業(静岡市)
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そんな「日本のモノづくり」を支える現場でも、今、変化が起きている。

栗田産業IoT推進室・森下篤史主任:
こちらのカメラは、溶けた鉄をどれだけ流し込んだかを量る重量計の表示板を読みとっています

工場内には小型カメラが数多く設置され、機器の数値や溶解炉の状況を常に撮影している。その映像はAI=人工知能が解析し、グラフ化される。

栗田産業・森下主任:
今までとっていないデータもありました。それをデジタル化してデータで見られるようにすることで、今の効率が良いのか悪いのかを把握しようとしています

社内のDX化を説明する森下主任

稼働状況を把握することで、効率的な電力消費や作業ロスの削減などにつながっているという。

栗田産業・栗田圭副社長:
設備も古いものだと30年物もあります。製造では問題なく動いているので、IoT(インターネット接続)のために買い替えるということはできないので、欲しいところを自分たちで選んでDX化する形をとっています

空からわかる野菜のサイズ “人の感覚”を数値化…年間1500万円以上削減 

DXは農業の分野でも進んでいる。
浜松市でブロッコリーの生産・販売を行う「アイファーム」を取材した。

杉村祐太朗記者:
浜松市南区のブロッコリー畑です。こちらでは、ブロッコリーの生育状況を空中からドローンで確認しています

「アイファーム」のブロッコリー畑(浜松市)

アイファーム・南波陽平オペレーター:
ブロッコリーのサイズがどうなっているのか、さらに全体を上から見ることで、成長具合のばらつきや病気になっているかか一目でわかる

畑を撮影するドローン。ブロッコリーの生育状況が一目でわかる

画像は1mおきに撮影され、AIで解析される。

アイファーム ・池谷伸二社長:
ぽつぽつとカラフルに色分けされているのが、ブロッコリーの生えている部分。解析技術を使うことによって、例えば14cm以上は赤色、12~14cmはオレンジ色、10~12cmは黄色と色分けされ、いま畑にどういうサイズのものがどういうふうに分布しているかがわかります

ドローン画像の色でサイズを識別(提供:SkymatiX,Inc.)

ブロッコリーは生育がばらつきやすく、収穫に適した時期も短いため、農家が畑を頻繁に見回る必要があったという。

従来は生育状況を見回り(提供:アイファーム)

しかし、ドローン画像とAIを組み合わせることで、30日後までの収穫量や売上の予測が可能になった。人件費に換算すると、年間1500万円以上削減できるそうだ。

アイファーム ・池谷伸二社長:
人によって感覚の違いがあります。それを数値化したり画像化することで共通認識ができるようになり、より精度の高い情報が共有できるようになるということで、今後の農業に期待しています

ドローン映像を説明する池谷社長

静岡県もDXを推進…「想像を超えるような」ビジネス創出へ

静岡県もDXの推進に力を入れている。

静岡県・川勝知事:
デジタル化などの技術革新に対応できる人材を育成していくことが、いま喫緊の課題になっています

2022年度当初予算に、市町への支援や行政手続きのオンライン化、さらにデジタル化をサポートする人材の育成など、約31億円の関連費用を盛り込んだ。

県デジタル戦略課・漆畑智絵主任:
デジタルは手段のひとつと考えている。デジタルを活用して業務を改善したり、課題を解決していく方に重きを置いて、変革に重きを置いてやっていけたらいいと思っています

「3次元点群データ」で膨らむ期待 既に県全域のデータを取得

県が特に力をいれているのは「3次元点群データ」の活用だ。3次元点群データとは、地形や建物の形状を、座標と色を持つ点の集合体として立体的に表現したものだ。

県のDX化を説明する増田室長

ひとつひとつの点が緯度・経度・標高という3次元情報を持っているので、位置や大きさを忠実に再現でき、いろいろな目的に活用できる。航空写真やアニメーションに匹敵する映像表現が可能だ。
県は2019年度から県内の計測を開始し、すでに全域のデータを取得している。

県建設政策課未来まちづくり室・増田慎一郎室長:
これは熱海の街中のデータになります。そのまま空から街の中まで入っていくこともできます。照明灯や標識や電線までも表現できています

3次元点群データで再現した熱海市内

点群データはインフラの更新計画やハザードマップの策定など、行政の幅広い分野で活用できるという。
また、オープンデータとして誰もが使用できる点でも、期待が膨らむ。すでにレースゲームの背景に組み込んで活用している人もいる。

3次元点群データを活用したゲーム

県未来まちづくり室・増田室長:
我々の想像を超えるような取り組みをしていると受け止めている。新たなビジネスを、ここから創出して頂きたい

様々な分野で進む「DX」。これまで抱えていた課題の解決、そして誰もがその恩恵を受けられる社会の実現に向け、試行錯誤が続いている。

(テレビ静岡)

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