ロシア軍の“奇妙なコンテナ”の正体
ウクライナ侵攻作戦で、劣勢を伝えられるロシア軍が最新兵器を惜しげもなく投入したため欧米側がその門外不出の秘密を知ることになった。
(@UAWeapons)はツイッターで23日、戦場に遺棄されていたロシア軍のコンテナの写真を次のようなコメントと共に公開した。
「ウクライナ軍はキエフ近くで奇妙なコンテナを発見し、その正体を解明した。それはロシア軍の電子戦システム1RL257Krasukha-4の指揮命令所で、早期警戒管制機のレーダーや偵察衛星のレーダーを混乱させるためのものだった」

そのコンテナは擬装のため草木で覆われてはいたが、慌てて退却したためかぞんざいに地表に放り出されていた。
この電子戦システムはウクライナ軍のドローンに対しても使われていると考えられていたが、その実体は不明だったので、すぐに米軍に引き渡されて陸路ドイツのラムスタイン空軍基地に運ばれた後、米本土へ空輸されるという。
ロシア軍の「囮(おとり)」兵器
同様に米軍がロシアの最新兵器を入手した例は他にもある。
3月5日、爆弾処理の専門家の組織CAT-UXOを名乗る組織がツイッターに写真を掲載して次のように情報提供を求めた。
「これはウクライナで発見された正体不明の兵器です。これに関して別の画像や技術的情報、さらには用途が分かれば教えてください」

それは、長さ約40センチの尾翼のついた白い筒型の物体で、今回のロシア軍のウクライナ侵攻が始まって以来、戦場でしばしば発見されるようになり軍事専門家の間で注目されていた。
やがてニューヨーク・タイムズ紙電子版が14日、米国の情報関係者の話としてこの物体はロシアのイスカンデルM型短距離を迎撃させず目標に命中させるよう補助する「囮」兵器だと明らかにした。
通常、発射されたミサイルはレーダーで補足し、自動追尾のミサイルで迎撃する。これに対して攻撃側は、追尾をかわして目標に命中させるためにPENAID(侵入を助ける)と呼ばれる兵器の開発が進んでいることは知られていたが、大陸間弾道弾のような大型ミサイルのためのものと考えられ、短距離ミサイルに装備されていることが分かったのは今回が初めてだという。
ニューヨーク・タイムズ紙が引用した米国の情報関係者によれば、このPENAIDの「囮」はイスカンデルM型ミサイル弾頭に組み込まれており、ミサイルが目標に向かって飛行中に敵側のレーダーに補足されたことを探知すると発射され、迎撃システムを混乱させる電波を発射したり熱源を露出して赤外線誘導の迎撃ミサイルを迷わせるという。
ロシア軍の“極超音速ミサイルの不発弾”
さらに、今回の作戦で初めて登場したロシア軍の極超音速ミサイルの不発弾も米国が入手したと考えられる報道があった。
3月9日ウクライナ当局は一枚の写真を次のようなコメントと共に公表していた。
「Kramatorskで発見された短距離極超音速弾道ミサイルの不発弾」

それは、ロシア軍が攻撃機の胴体下に抱かせて飛行する写真の極超音速ミサイルに似た形状の物体で、元の形をとどめて林の中に横たわっているものだった。
これが極超音速ミサイルだとすれば、西側にとって貴重な情報を提供するものだが、なぜかその後このミサイルについてウクライナ当局の追加の説明がないばかりか、この写真を公表したウェブページにもアクセスできなくなってしまった。
もしかしたら、すでにドイツ経由で空輸され米国の技術者たちがバラバラに分解してその秘密を探っているのかもしれない。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】