ロシアによるウクライナ侵攻を受け、日本の安全保障をめぐる議論が熱を帯びている。BSフジLIVE「プライムニュース」では、与野党4党の党首・幹部を迎え、日本の安全保障政策の針路について議論を深めた。

キエフに残る高垣氏「日本も同じ目に遭わないように」

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新美有加キャスター:
国連によれば、侵攻開始から3月20日までに民間人の死者は子供75人を含む925人、国内外の避難者は1000万人超。ここで現在もキエフに残る高垣典哉(ふみや)さんに話を伺います。ショッピングセンターなどがロシア軍に攻撃されたキエフの現状は。

高垣典哉氏:
近くには新興住宅街もある、一般市民が買い物をしに行くところが攻撃され、みんな怖がっています。

新美有加キャスター:
日本の政治に今求めたいことは。

高垣典哉氏:
私も1カ月前は、ロシア軍なんか絶対来ないと思っていた。爆弾を落とされていきなりこういう生活になった。日本も同じ目に遭わないように、準備を考えてほしい。

反町理キャスター:
今の話を受けて。

小野寺五典 元防衛相 自民党安全保障調査会会長​:
日本でいえば東京と大阪に突然ミサイルが撃ち込まれ、一気に攻め込まれるという状況。これから防衛力をしっかり高めていくことは政治家の責任。

小池晃 日本共産党書記局長:
国際人道法に違反するロシアの戦争犯罪。核大国の指導者が核の先制使用をこういう形で公言したのは初めてでは。こういう事態を絶対に起こさないため、外交の徹底に知恵と力を尽くすのが政治家の責任。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
平時からの外交の力が大事なのは間違いない。一方で、防衛力を改めて点検し直すことも非常に大事。日本在住のウクライナ人もその重要性を言っていた。

玉木雄一郎 国民民主党代表:
自分の国は自分で守るという原則を改めて思い出し、その上で常に同盟関係を点検する。ロシアは国連安保理の常任理事国である核保有国で、その武力による現状変更を止める術が我々にないという冷徹な現実。戦後の安全保障や平和主義の考え方を国民的に議論し直す必要がある。

新美有加キャスター:
高垣さんは、ゼレンスキー大統領にはまだ何か外交で解決できる余地があったと感じますか。

高垣典哉氏:
いや、大統領はそれなりのことはちゃんとやっていると思います。相手はまともじゃなく、正攻法で何を言っても無理です。 

敵基地攻撃能力の前提は「日本が攻撃された場合」

反町理キャスター:
まさかの状況に備えることが危機管理のポイント。どういう状況を想定し準備をしておくべきか。小池さんは外交で対応すべきだとの話だが。

小池晃 日本共産党書記局長:
我々は別に、急迫不正の侵害に際して日本は降参しろと言っているわけではない。だが、敵基地攻撃能力は、我が国が攻撃されていないときに海外での武力行使を行うことで、これは国際的に先制攻撃とみられても仕方がない。

小野寺五典 元防衛相:
日本が攻撃を受けるとき、近代戦では相手の領土から弾道ミサイルが直接飛んでくる。ウクライナもかなり遠くからロシアの攻撃を受けている。それが相手の領土にあったとしても、その場所を攻撃しなければ防げない。その能力が必要ではないか、というのが今回の政府からの提言。私たちはあくまでも専守防衛で、決して先制攻撃ではない。

小池晃 日本共産党書記局長:
岸田首相は、相手国の領空まで行っての爆撃も排除しないと。安倍元首相は、相手を殲滅する打撃力のことだと言った。

小野寺五典 元防衛相
小野寺五典 元防衛相

小野寺五典 元防衛相:
前提は我が国が攻撃された場合。攻撃されれば、爆撃機が飛んでこないように相手の航空基地を攻撃して殲滅することも、それが日本国民の生命・財産を守ることに繋がるなら行わなければいけない。自衛隊や政治は国民を守りたいと思って動く。隊員の皆さんが相手国の無辜の民を攻撃することはおよそ想定されないし、私たちが政治の立場でそのような命令をすることは当然ない。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
小野寺さんの立場は理解する。ただ今回の法制度は、もう一度点検しなければならない。後世になって、解釈の範囲で先制的なこともやれるようになってはいけない。

小野寺五典 元防衛相:
日本はしっかりとした法治国家。懸念がないようにしっかり国会で議論していきたい。

反撃能力、日米同盟、国を守る意識が重要な抑止力となる

反町理キャスター:
日本の安全保障、抑止力について。

小野寺五典 元防衛相:
今回、ウクライナが侵攻された背景には、アメリカのバイデン大統領やNATO(北大西洋条約機構)軍が軍事介入しないと表明したことがある。ウクライナ軍の装備の弱さを含め、抑止力が効いていなかった。反撃する能力があり、自分たちが国を守る意識が高く、同盟国がしっかりしていることが、抑止力となり平和を保つと説明して訴えていきたい。

玉木雄一郎 国民民主党代表:
日米同盟を中心とした拡大抑止、具体的な作戦計画や役割分担を詰めていくことが非常に大事。同時に中期的な課題として、自衛のための一定の反撃力、相手の領域内での攻撃能力の保有も検討・議論すべき。

玉木雄一郎 国民民主党代表
玉木雄一郎 国民民主党代表

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
「安全保障のジレンマ」、ある国が安全保障を強化し、相手国はそれを上回る準備をするという軍拡競争を懸念する。タガがなければいけない。

小野寺五典 元防衛相:
そのジレンマの中で「この辺でお互いに話をつけよう」とする戦術、話し合いでのいわばデタント(緊張緩和)が外交的に重要。相手が軍拡する中、こちらが何もしなければそれはできない。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
そこは今のところ、異論なしです。

小池晃 日本共産党書記局長:
今のような議論は結局、抑止力という名の下の軍事、核、力の論理。これは危険な方向に向かい、危険な衝突になっていく可能性が高い。

小池晃 日本共産党書記局長
小池晃 日本共産党書記局長

反町理キャスター:
では、話し合いでプーチン大統領を止められるんですか。

小池晃 日本共産党書記局長:
止められないですよ! だから言っているんです。この事態を解決するためには核兵器をなくすしかない。核抑止力が通用しない相手から世界が核の恐怖にさらされている。国連も無力ではなく、核兵器禁止条約の流れもある。ロシア非難決議に141カ国が賛成した。

小野寺五典 元防衛相:
決議でプーチンが侵略を止めるかというと、止めないじゃないですか。

核共有の議論では自民・国民ともに「日本にはなじまない」

新美美加キャスター:
核共有についてのFNN世論調査。「核共有に向けて議論すべき」が20.3%、「核共有はすべきではないが議論はすべき」が62.8%で、議論すべきだという方が83.1%。岸田首相は、政府は議論しないとしていますが、自民党の安全保障調査会ではどんな議論を?

小野寺五典 元防衛相:
NATO型の核共有をよく知る有識者の方からは、これは日本にはなじまないのでは、と。NATO型では、アメリカと当事国が了承の上で、それほど威力の大きくない戦術核を置いておき核攻撃をする。これは、陸続きでロシアのような強大な国が攻めてきたときに対抗するため。島国の日本にそのまま当てはまるわけではない。むしろ拡大抑止、アメリカの核抑止の有効性を見せることで抑止力を高めることの議論がかなり行われた。

玉木雄一郎 国民民主党代表:
我が党内でも核共有の議論はした。むしろ攻撃対象を国内に持つことによるデメリットが大きいのではないかと。また、核共有となると、現在の核の傘が有効に働かないのではという同盟国アメリカへの疑いのもとに新しいことをすることになる。信頼感を疑うことで拡大抑止が効かなくなるのではということで、現実的ではないという結論に。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行
逢坂誠二 立憲民主党代表代行

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
核共有の議論は非核3原則を否定することになり、誤ったメッセージとなる。やるべきではない。それよりも核に関していうと、日本には数限りなく原子力発電所という標的がある。本当に守れるのかの議論を真剣にしなければいけない。

小池晃 日本共産党書記局長:
ロシアに対して核を使うなと世界が迫るべきときに、唯一の戦争被爆国である日本で核共有の議論をすること自体が、世界の流れにとって大きなマイナスになる。核抑止の前提は崩壊しつつある。今までとフェーズが変わった。核兵器は悪魔の兵器だと一番説得力を持って世界に訴えることができるのは日本。せめて核兵器禁止条約にオブザーバー参加するとか。

小野寺五典 元防衛相:
私たちが直面している非常に辛い現実では、プーチンが核使用をちらつかせて脅しており、核の傘がない国は周りの国からも助けられずにやられていく。現実的に国を守るためにはどうすればよいかという議論。一定の力を見せながら最後は外交交渉で押し込むしか、プーチンを止める方法はないのではという議論をしている。

立憲・共産も「憲法9条だけでは守れない」がその意義は強調

新美有加キャスター:
視聴者の方からのメール。「ウクライナ危機を見て、憲法9条で国を守れると思いますか」。

玉木雄一郎 国民民主党代表:
解釈で相当のことができる。9条があるから何かができないというわけではなく、日米同盟の内容をしっかりさせて、備えを万全にしていくこと。

小池晃 日本共産党書記局長:
9条さえあれば平和を守れるとは私も思わない。ただ、軍事で平和は作れないとうたったことには非常に意味がある。軍拡競争を止める上で、日本は憲法9条のもと非軍事の支援に徹して、平和国家としての役割を果たしていくべき。

逢坂誠二 立憲民主党代表代行:
9条だけで全てができるわけではないが、専守防衛という考え方があるからこそ日本が他国からの信頼を得て、結果的に国を守っているという側面はある。

小野寺五典 元防衛相:
今の日本国憲法は、日本に戦争はないことを前提に作られている。攻撃を受けたときのことがおよそ想定されていない。有事にも機能するような憲法にするため、改正は必要。

BSフジLIVE「プライムニュース」3月22日放送