ゼレンスキーの真似をしたマクロン

Twitterで面白い投稿を見た。連日プーチンと電話して疲れているフランスの大統領マクロンがトレーナー姿で公の場に出てきたのに対し、「ゼレンスキーの真似してる!」というコメントがついていた。マクロンはゼレンスキーに憧れているのだろうか。

フランスのマクロン大統領
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連日SNSを通じてメッセージを発信するゼレンスキーはこの戦争のヒーローであり、ウクライナに対し世界中から武器、食糧などの物的支援だけでなく義勇兵、ボランティアなども駆けつけて応援している。

ウクライナのゼレンスキー大統領

武力侵攻から3週間たったが首都キエフはまだ陥落していない。圧倒的な軍事力のロシアが「間合い」を詰めてはいるが、ウクライナ側は士気の高さと各国からの支援で持ちこたえている。

ロシア軍の攻撃を受ける首都キエフ

核を落とすのはウクライナか大西洋か

しかしゼレンスキーを応援はするものの、戦争に直接加わる国はない。NATOは飛行禁止空域の設定を拒否したし、米国はポーランドの戦闘機供与の提案を拒否した。ウクライナを見捨てるのかと怒る人もいるが、NATOの参戦はすなわち第3次世界大戦開戦であり、その先には世界核戦争の恐怖が待っている。

日本記者クラブで先日会見した東大専任講師の小泉悠氏はロシアの限定的な核攻撃もあり得るとの見通しを示した。小泉氏によると「核を落とす場所」はウクライナ国内の軍事拠点や産業集積地、大西洋上、ポーランドの支援基地などが考えられ、ロシアが打った場合、米国も一発だけ打ち返すのではないかということだった。

なんと恐ろしいことか!広島、長崎への原爆以来、78年目にして人類史上3度目の核使用が現実的になっている。しかも米露双方が打ち合う。世界はこの恐怖に耐えられるのか。

広島の惨状伝える原爆ドーム

僕はゼレンスキーとウクライナ国民を全面的に支持するが、一方で核使用の阻止は他のすべてに優先すべきことだとも思う。ただプーチンとの対話を続けるマクロンの憔悴ぶりから見て「核を使うな」という説得はうまくいっているようには思えない。

ゼレンスキーに降伏しろとは言ってはいけないが

日本ではゼレンスキーに降伏を勧める人がいて特にネットでボコボコにされている。また日本が同じような目に遭ったら私も戦う、と言ってる人もいる。確かに自らの命をかけて国を守る人たちに他人が余計な口出しをすべきではないのだろうが、もしみんな一緒に核戦争で死んでしまうかもしれないのなら、話は別だ。

核戦争は回避できるとしても、戦争が終わらなければエネルギー危機はすごいことになる。比較的マシな日本でさえ来年の電気代は上がる。自宅の電気代が1カ月1万円上がっても何とかなるかもしれない。だが大きな工場の年間の電気代1億円が1億5千万円とか2億円に上がるとそれは払えない、つまり破綻する。そしてそういう事はもう起こり始めている。

つまり世界はこのウクライナ危機で壊れつつある。だからプーチンが悪でゼレンスキーは善であるにしても、プーチンの指が核のボタンにかかっている以上、世界中の政治家たちはどんなことをしても核戦争を止めなければならない。それはゼレンスキーも同じだ。核で世界がすべて滅びれば、正義も名誉もまたすべてなくなってしまうのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫


フジテレビ報道局上席解説委員。2020年4月から立命館大学客員教授。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。

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