いついかなる時も…大国を率いる者のそばにある「核のボタン」

思えばここ数日、言葉は、エスカレートしてゆくばかりだった…

(2月24日)
プーチン大統領:

ソ連が解体され、能力の大部分を失った後もロシアは核保有国の一つだ。
我々を攻撃すれば、不幸な結果になるのは目に見えている

(2月27日)
プーチン大統領:

ロシア軍の(核)抑止力を、警戒態勢の高い戦闘待機任務に切り替えるよう命じた

(3月5日)
プーチン大統領:

西側の(経済)制裁は、宣戦布告のようなものだ

高まる緊張…
プーチン氏は、本当に“核のボタン”を、押すつもりなのか?

そもそも、プーチン氏と核との付き合いは1999年の大晦日、大統領代行に就任した時から始まる。
ブリーフケースに収められた核の発射ボタンはまさに、力の象徴だった。

以来、20年近くにわたり側を離れなかった、核のボタン…

2012年に二度目の大統領に返り咲いた時も、2015年に軍事フォーラムに参加したときも、そして2019年に北朝鮮から金正恩総書記を迎えたときも、プーチン氏の側にはいつも核のボタンがあった。

とは言え、それは決して、ロシアだけの話ではない。

2016年に広島を訪れ、被爆者の森重昭さんと抱擁を交わしたオバマ大統領でさえ…

番組スタッフ:
手に何か黒いバッグを持っていますね。アメリカの軍人の方、黒いバッグを持っています

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そう、側近の手には、やはり“核のボタン”。
大国を率いる者にとって、平和への祈りを捧げる時でさえ手放せないもの。

その“核のボタン”をちらつかせるプーチン氏について、トランプ政権で大統領補佐官を務めたボルトン氏は、こんな論文を発表した。

ボルトン氏の論文:
プーチン氏は今回の軍事作戦の大失敗により、権力から降ろされるか、または政権全体が崩壊するかもしれないと恐れているのかもしれない。このような死に物狂いの状況下でも、核兵器は新たな局面を作りだせるのだ

核兵器を使う可能性を捨てきれないと警告したボルトン氏。

「核のボタン」を押すとどうなる?戦略核と戦術核の違い

万が一、プーチン大統領が「核」を使うとしたらどんなものか?
軍事戦略の専門家である高橋杉雄氏によると…

防衛省防衛研究所 防衛政策研究室長 高橋杉雄氏:
ウクライナに使うとしたら、巡行ミサイルか航空機搭載型の核爆弾だと思いますよ。
その場合の爆発威力は、おそらく10ktプラスアルファ、つまり広島原爆級っていうことですね

なんと「戦略核」より規模が小さい「戦術核」ですら、広島に落とされたものと同規模だという。

しかも、その落とし方は広島と同じ「飛行機による投下」だというが一体、ナゼなのか?

防衛省防衛研究所 防衛政策研究室長 高橋杉雄氏:
飛行機の場合のメリットは、引き返すことができる。ミサイルを撃ったらもう止められないですから、その辺りも含めて、危機管理上、例えばギリギリで投下命令の中止がありえるっていうことだとすると飛行機を使うと思います

核を積んだ飛行機が上空にいるだけで西側に凄まじいプレッシャーをかけることができ、しかもプーチン氏から指令が出れば、30分程で落とせる態勢にあるという。

とは言え、そんなことをすれば世界を完全に敵にまわすはず。
そこで、考え得る使い方のひとつが…

防衛省防衛研究所 防衛政策研究室長 高橋杉雄氏:
特に人がいないような無人地域で爆発をさせて、我々は本気であるということを見せるというのが一つのパターン

そうなると…

防衛省防衛研究所 防衛政策研究室長 高橋杉雄氏:
核兵器が使われたけれども、核兵器で撃ち返さなかったっていう先例を作ることが望ましくない、アメリカとして。どうせ北朝鮮が核兵器使ってもアメリカは核使わないんでしょって言われることになりますから

対応を誤れば、アメリカは今後世界に睨みが効かなくなってしまうという…

誰がプーチン大統領を止められるのか…あの“親友”?

では一体、誰ならプーチン氏を止めることが出来るのか?
長年、プーチン政権を見つめてきた名越教授は…

拓殖大学海外事情研究所 名越健郎教授:
必ずしもシロビキが全員、戦争に賛成したとは言えないんですね。

シロビキとは、力を持つ軍関係者などを意味し、プーチン政権においてはKGB時代の同僚などを指す。
パトルシェフ安保会議書記、ナルイシキン対外情報局長官、ボルトニコフ連邦保安局長官、ショイグ国防相。この4人の側近とプーチン氏により、今回の軍事侵攻も決定されたと見られているが、実はその1人が…

拓殖大学海外事情研究所 名越健郎教授:
例えば、2月21日の安保会議で全員、プーチン大統領が発言させたわけですけれども、ナルイシキン長官は、しどろもどろになって、外交交渉にまだチャンスを与えるべきじゃないかと言って、プーチン大統領はそれを制止したんですよね。これはかなり話題になっていて…

壇上に立ったナルイシキン対外情報局長官は、プーチン氏にとっては元KGBの後輩。

ナルイシキン長官:
最後のチャンスを…彼ら(ウクライナ側)に与えても…。
キエフが受け入れられるような条件を…

と、外交での解決を恐る恐る切り出したが、プーチン氏は…

プーチン大統領:
どっちなんだ。はっきりしてくれ

ナルイシキン長官:
私は支持をしたいと思っています

プーチン大統領:
支持をするのか?どうなのか

ナルイシキン長官:
…支持します、はい

あくまでも、力でねじ伏せたのだ…

拓殖大学海外事情研究所 名越健郎教授:
彼(ナルイシキン氏)の場合は対外情報局長官で、外国の情報がいっぱい入ってくるわけですね。ウクライナを攻撃した場合の結果ですね。欧米から最大級の制裁を浴びると、そういう波紋を憂慮して反対に回ったんじゃないかとみられていますね

とは言え…

拓殖大学海外事情研究所 名越健郎教授:
とりあえずプーチン大統領を阻止できる人っていうのは、なかなか政権内でも見つかりにくい。大統領がどういう人と会ってるのか、そのへんもよく分かんないんですよね。だから、国内で制止する人を探すっていうのは難しいと思います

では、国外にはいないのか?名越氏が挙げた、意外な名前は…

拓殖大学海外事情研究所 名越健郎教授:
メルケル(前)首相だと存在感、それから交渉力もあるし、プーチン大統領も一目置いてましたからね

去年12月、政界を引退したメルケル氏だという。

拓殖大学海外事情研究所 名越健郎教授:
同世代ということで、メルケル(前)首相はロシア語ができますよね、東ドイツ出身で。プーチン大統領はドイツ語ができると。やはり、メルケル(前)首相は西側を背負って交渉に臨むような存在感があったんですよね。

互いに国のトップとして16年間向き合ってきた2人。
2014年の“ウクライナ危機”では長時間の話し合いを続け、プーチン氏から停戦合意を引き出したという。

そのタフな交渉ぶりに、プーチン氏も…

プーチン大統領:
私たちには意見の不一致もあったが、その対話は最も困難な問題の解決を目指す、中身のあるものだった

それほど認めたメルケル氏も、今は昔…
プーチン氏がほのめかす「核の使用」を踏みとどまらせる人物はいないのか?
そう聞くと、名越氏が挙げたのは…

拓殖大学海外事情研究所 名越健郎教授:
やはり中国の習近平国家主席しかいないような気がしますね。プーチン大統領も習近平主席を「親友」と呼んでますからね。最も信頼できる人物と見なしていると。ロシアがこれだけ強硬になれるのも、中国のバックアップがあったからなんですね

だからこそ、習主席が停戦を求めれば聞かざるを得ないのではと言う名越氏。
しかも、いまの中国は…

拓殖大学海外事情研究所 名越健郎教授:
ロシアと同一視されたくないという意識が強まっているみたいで。例えば原発攻撃に対しては懸念を表明したりとかですね。これから中国は次第に早期停戦、そっちの方向に向かうんじゃないかという気がするんですね。

国内でも孤立しているとされるプーチン氏は果たして、核のボタンを押すのか、否か…?

いま、世界の秩序が揺らいでいる。

(「Mr.サンデー」 3月6日放送分より)

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