全国に出荷される約8割のプラモデルを生産している「プラモデルの街」であることを活かし、2020年に取り組みを発表した「静岡市プラモデル化計画」。
「もしもこの街がプラモデルだったら?」という遊び心から生まれた地方創生プロジェクト。その一環として、プラモデルでできたモニュメント“プラモニュメント”を街中に配置している。
その第2弾として3月13日、JR静岡駅の北口に公衆電話をモチーフにしたプラモニュメントをNTT西日本静岡支店が設置した。
設置された公衆電話は、外枠(ランナー)の中に公衆電話本体をはじめ、電話を置く台やそれを支える軸、受話器といったパーツが、「ゲート」と呼ばれる細い部分でつながっており、まさに組み立てる前のプラモデルのよう。
全てが公衆電話カラーの明るい緑色で構成されていて、本物には見えないおもちゃのようなかわいらしい公衆電話に、ワクワクする人もいるのではないだろうか。
なお、第1弾では“プラモデル化したポスト”など、4つのプラモニュメントを市内3カ所に設置しており、以前に編集部でも取材している。
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プラモデルらしさを追求したユニバ―サルデザイン
プラモデル公衆電話では、中央の横向きになっている物も含め3つの公衆電話の本体が確認できるが、この3台は実際に使うことはできるのだろうか?
まずはプラモデル公衆電話について、NTT西日本・静岡支店の池ヶ谷弦さんに教えてもらった。
ーープラモデル公衆電話のこだわった部分を教えて。
実際に公衆電話をご利用いただくうえで利便性を損なわないことに加え、多様な使用方法を想定し公衆電話の設置位置に高低を設けることで使いやすいユニバ―サルデザインとしました。
ーー公衆電話をプラモデル化するのに苦労した点はある?
プラモデルらしさを追求し、「つなぎあわせるダボ」や「ナンバータグ」あるいは「ランナーから切り離した際にバリが目立ちにくくするアンダーゲート」の再現や、どのようなパーツ構成が良いかなど議論を重ねてまいりました。
ーー実際に使用できるの?
左右の2台が実際にご利用いただけます。センターの横に寝かせたものは模型です。
コンセプトは「触って使える」
ーーJR静岡駅北口以外に設置する予定はある?
現時点では増設等の予定はございません。弊社公衆電話プラモニュメントに限らず、今後さまざまな企業や事業者様が参画され、多彩なプラモニュメントが市内に設置されていくことを期待しています。
ーーどういった声が届いているの?
弊社(NTT西日本)のお取引先さまからは、設置に関する費用感や設置までのプロセス関わるご質問・ご相談をいただきました。また、当該公衆電話プラモニュメントについてSNS等では「組み立ててみたい」「電話をかけてみたい」等書き込みが散見されます。
ーーそういった反響には、どう思っている?
実際のプラモデルに見立て制作をしましたので、そういったお声を頂けることは非常に嬉しく思っております。また、触って使えるをコンセプトとしたモニュメントですので、設置場所に来て実際に公衆電話を使って頂けると有難いです。
SNSでバズり、メディア露出多数
おもちゃのようなかわいらしいデザインのプラモニュメントは、実際に使用するのもワクワクするが、写真映えもするので静岡市に行った記念にもなりそうだ。
では実際のところ、地方創生プロジェクトとしての成果は出ているのだろうか?今回の公衆電話だけでなく、第1弾のポストなどのプラモニュメントの影響に関して、静岡市産業振興課・主査の佐野正貴さんに教えてもらった。
ーープラモデル化するものはどうやって決めているの?
本事業については、民間企業の静岡市プラモデル化計画への民間企業の賛同・協力によってプラモデル化が実現しています。
静岡市は、プラモニュメントの設置やプラモデルデザインの活用に関する支援制度を整備し、広く呼び掛けております。静岡市で指定しているわけではなく、今回の公衆電話モニュメントにつきましても、こちらの呼びかけにNTT西日本静岡支店様が手を挙げてくださり、実現いたしました。
ーープラモニュメントの反響は?
プラモニュメントの設置については、お披露目の前からSNSで話題となりました。SNSのコメントは好印象に感じていただいている内容が多く、また、「ニッパーで切りたい」などのコメントも数多くいただいており、皆様から今回のプラモニュメントのこだわりでもあるプラモデルらしさも感じていただけて良かったと感じております。
ーー設置したことで、何か影響・効果はあった?
以下のとおり、影響・効果がありました。
・プラモニュメントの設置をTwitterで取り上げて約1万リツイートされた投稿者もいるなど、SNSでいわゆる「バズる」と言われる状態となったこと。
・全国放送4回を含む14回のテレビ放映、新聞・雑誌等への掲載11回をはじめ、メディアの皆様にも多数取り上げていただいたこと。
・SNS等で、プラモニュメント巡りをした主旨のコメントが多数あがっており、プラモニュメントを見に多くの人が訪れていること。
ーーこういった影響・効果に対してはどう感じている?
SNS・メディアに多数取り上げていただいたことで、多くの人の「プラモデルのまち」としての静岡市に対する関心が高まったと考えます。こうした影響・効果を踏まえ、現在、本取組と同時に市内小学校や生涯学習講座を通じて、プラモデルやものづくりをテーマにした授業や講座を実施しておりますが、これらの事業と合わせて、特に市民の皆様の静岡市に対する愛着と誇り(プラモデルプライド)の醸成に繋げていけたらと思っております。
第3弾の予定は?
多くの人が静岡市に足を運ぶきっかけとなっているというプラモニュメント。最後に第2弾となるプラモデル公衆電話への期待を、設置したNTT西日本と、プロジェクトを進める静岡市に聞いてみた。
ーープラモデル公衆電話には、どういったことを期待している?
NTT西日本・静岡支店 池ヶ谷弦さん:
設置場所がJR静岡駅のコンコース北口と非常に人通りが多い場所で通勤通学の方や静岡市を訪れた方にも大変わかりやすく、新しい待ち合わせの場所や駅構内のランドマークとして多くの方に認知していただき、地域に愛されるモニュメントになればと思っております。
更には、静岡市で行われるイベントに活用するなど、他のプラモニュメントと合わせて回遊していただくような観光案内や、ご覧になった方が当該プラモニュメントをSNS等に発信していただくことで、当地への誘客につながるなど街の活性化に繋がればと期待しています。
静岡市産業振興課・主査 佐野正貴さん:
今回の公衆電話のプラモニュメントについてもSNS、メディアの皆様に多数取り上げていただき、第1弾と同様の効果を期待しております。また、今回は、民間企業主体で設置した第1号のプラモニュメントとして公民連携による事業推進の好事例となりました。これをきっかけに、民間企業の本事業への賛同・協力が促進されることも期待しております。
ちなみに、気になる第3弾の予定を聞くと「第3弾は今のところ、未定です。今後も民間企業の本事業への賛同・協力を働きかけていきたいと考えております」といった回答だった。次はどういったデザインの、どういったプラモニュメントが設置されるのか、楽しみに待ちたい。
なお、5月11~15日にかけて開催される、日本最大級の模型イベント「第60回静岡ホビーショー」で、一般公開日の5月14日(土)・15日(日)に公衆電話やポストなどをはじめとした全プラモニュメントをスタンプラリー形式で回ることで市内を回遊してもらう、プラモニュメントを活用した静岡市活性化イベントが行われる予定だ。