ウクライナ侵攻をめぐり、ロシア軍が占拠している「チェルノブイリ原子力発電所」の電源が失われ、停電が起きていることが分かった。

ウクライナの国営原子力発電公社によると、これはロシア軍の攻撃によるもので、施設全体に電力が全く供給されない状態になっているという。

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予備電源が持つのは48時間…2万本の使用済み核燃料どうなる?

ウクライナのクレバ外相は「予備の発電機は48時間しかもたず、今後も電源供給がない場合には使用済み核燃料を冷却する機能が働かなくなり、放射性物質が漏れ出す恐れが高い」と警告をしている。

原発にある使用済み核燃料はどういう状況なのか?

チェルノブイリ原発は1986年に事故が起きて以降、すべての原子炉が停止となり、解体作業が続いている。その中には今も使用済み核燃料が約2万個保管されているという。通常、使用済み核燃料は常に熱を放出するため、冷やし続けなければならない。ただ今回は冷やすための電源がストップしてしまうかもしれない。

そこで原発に詳しい、東京大学の越塚誠一教授に聞いたところ、教授は「廃炉になって数十年がたち冷却がかなり進んでいる。電力が復旧できなくてもすぐに大事故が起きることはない」という。また、IAEA(国際原子力機関)も使用済み核燃料のプールに水が十分にあるなどの理由から、停電後も安全性に重大な影響はないとしている。

ロシア軍は原発を“人質”にしたか?

イット!では湾岸戦争なども取材したジャーナリストの柳澤秀夫さんに話を聞いた。

加藤綾子キャスター:
柳澤さん、ロシア軍の目的は何なのでしょうか?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
電気や外部電源が断たれた理由が何らかの外的な要因なのか、それとも故意にロシア軍が電力供給を絶ったのかよくわかりませんけれども、ひとつ言えることはチェルノブイリ原発はロシアの軍隊の管理下に置かれている。そこで起きているということを考えると、ロシアが原発を“人質”にとって「このあと何かあったら大変なことになるよ」という脅しの材料に使っているようにも見えるんですよね

原発職員は1日1食 床にゴロ寝の劣悪な環境に

チェルノブイリ原発では、ロシア軍に占拠された今も現状として、ウクライナの職員が監視される中で働いている。職員たちが施設内に閉じ込められていることも分かった。

こちらは2006年、チェルノブイリ原発で働く職員が家から通う様子を取材した映像。原発に向かう人たちは専用列車を使い移動をしている。列車内でにこやかに同僚と談笑したりする場面も見られ、交代制で通勤していた。

榎並大二郎キャスター:
それがロシア軍に占拠された今、施設内には原発の保安作業に当たる職員が100人以上。そして警備にあたっていた国家親衛隊の約200人が閉じ込められているといいます。生活ぶりですが、食事は1日1食、煮込みやパンなどの簡単なものに限られ、さらに原発内には宿泊施設がないため、床で寝ている人もいると。そのような劣悪な環境だといいます。占拠されたのが2月24日ですから、こうした状況がすでに約半月に及んでいるんです。ウクライナの地方当局は「肉体的にも精神的にも疲れ果てている。このような状態はミスを引き起こす恐れがある」と指摘をしています

加藤綾子キャスター:
肉体的、精神的に疲弊することで、攻撃などとは別の要因でも原発は危険な状態にあると言えそうですよね?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
そう思いますよね。ただでさえ原発の管理は神経を使うでしょうし。今回はさらに、ロシア軍の銃口を突きつけられて仕事をしなきゃいけないという状況を考えると、現場の人たちのストレスは並大抵のものじゃないと思います。そういう中で本当に予測のつかないようなことが起きないというふうには言い切れないような、そんな気がしますね

加藤綾子キャスター:
職員の方の安全がとにかく気になりますね

住民避難の間に…首都にロシア軍が迫る

ロシアのウクライナ侵攻をめぐっては、新たな動きもあった。人道回廊で住民が避難する間に、ロシア軍がウクライナの首都・キエフに接近していることが分かった。アメリカ国防総省によると、ロシア軍は東・北・北西の3方向からキエフに迫っていると指摘をしている。

さらに、避難に使われた人道回廊のルートの一つ、ザポリージャに向かうための出発点となっていた南部の都市・マリウポリがロシア軍に攻撃を受けた。攻撃されたのは小児科と産婦人科が入る病院だ。地元当局によると、攻撃は避難のための一時停戦中に行われ、少なくとも17人が負傷したという。

また、副市長の話では、マリウポリ侵攻が始まってからこれまでに市民1200人以上が死亡したと発表されている。こうした中、日本時間の午後5時から軍事侵攻後初となる、ロシアとウクライナの外相会談が行われる予定だ。会談の行方が注目される。

(「イット!」3月10日放送より)

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