ベトナム人女性の挑戦。留学していた長野市にベトナム料理の店を開いた女性。新型コロナウイルスの影響で思うように日本で仕事ができない中、起業を決断し、本場の味を広めようとしている。

ベトナムの本場の味を…店主は元留学生

ベトナム料理の店「オールドサイゴン」
ベトナム料理の店「オールドサイゴン」
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1月29日、長野市の権堂アーケードに新たな店がオープンした。

店主:
「オールド・サイゴン」オープンします。いらっしゃいませ

「サイゴン」はベトナム最大の都市・ホーチミンの旧市街の名前。店主のファン・ティ・ホン・タムさん(31)の故郷だ。

ファン・ティ・ホン・タムさん:
(オープンまで)緊張です。3日ぐらい寝られなかった

店主のタムさん
店主のタムさん

店で提供するのは、ベトナムのサンドイッチ「バインミー」や麺料理「フォー」、現地ではポピュラーな練乳入りの甘いコーヒーなど。
本場の味を求めて、オープン初日は長野に住むベトナム人やベトナム料理好きの人が駆け付けた。

長野在住のベトナム人の客:
(バインミーは)サクサクしていておいしい、本場の味。朝にベトナム料理食べたい時があるけど、こういう店ができるとうれしい

バインミーをテイクアウトした日本人客:
パクチー食べたくて、増しちゃいました

ファン・ティ・ホン・タムさん:
(客が来て)めっちゃうれしいです。大切なのは、おいしい料理を出すこと。お客さんいっぱい来てくれるようにしたい

日本の接客に心打たれて留学

長野市の専門学校に4年間留学
長野市の専門学校に4年間留学

サイゴン育ちのタムさん。5年ほど前、日本を旅行した際に飲食店の接客に心を打たれた。

ファン・ティ・ホン・タムさん:
『いらっしゃいませ』とか、ずっとちゃんとあいさつしててびっくりしました。日本はすごいな、日本のサービス一番。卒業したら日本でサービスを勉強したいと思った

2017年、日本の接客・サービスを学ぼうと来日。雪山の景色に憧れていたこともあり、留学先には長野市の専門学校を選び、4年間、日本語やビジネスマーケティングを学んだ。

当初、卒業したらベトナムに帰る予定だったが…

ファン・ティ・ホン・タムさん:
静かな街とか私のタイプ。卒業したらまた日本で住みたいなと

コロナ禍のホテル勤務を経て…起業を決意

日本で学んだことを生かそうと、2021年春に静岡のホテルに就職した。
しかし、コロナ禍の真っ只中。客の来ない日々が続いた。

ファン・ティ・ホン・タムさん:
新型コロナの関係でお客さんが来ない。1週間で8時間働いて、ずっとひまだった。お客さん来ないから困る。自分でもビジネスしたい、ベトナム料理も作りたい。時間ある時に考えて、長野であまりベトナム料理の店がない。バインミーとかフォーとか、みんな食べやすいから作りたいなと思った

ベトナム料理をもっと多くの人に…。タムさんは慣れ親しんだ長野で店を開くことにした。

バインミーの具材の焼き豚
バインミーの具材の焼き豚

料理の仕込みは、毎日早朝から行っている。この日、炒めていたのは、バインミーに挟む焼き豚。ベトナムの魚醤やニンニクなどが入ったタレに8時間漬け込んである。

ファン・ティ・ホン・タムさん:
夜に味をつけて、朝に調理する方が柔らかい。朝味付けて、すぐに調理してみたけど、おいしくなかった

調理の経験はなかったが、起業を決めてから半年間、独学で習得した。

ファン・ティ・ホン・タムさん:
日本人の食べやすいように作ります。もし、ベトナムの味のままなら濃いかな

ベトナム人留学生がアルバイトで手伝う
ベトナム人留学生がアルバイトで手伝う

営業時間になると、ベトナム出身の留学生が手伝ってくれる。

店でアルバイトするベトナム人留学生:
ベトナムの料理を日本で紹介してくれて、うれしい。タムのおかげ

ファン・ティ・ホン・タムさん:
わたしのところに就職してください(笑)

故郷ベトナムから…両親が応援

日課はベトナムの両親とのテレビ電話
日課はベトナムの両親とのテレビ電話

長野で暮らして都合4年半。冬の街もお気に入りだ。

ファン・ティ・ホン・タムさん:
寒いけど、寒い方が好き。ベトナム暑いから。今年は雪が降るのが多い

タムさんは現在、市内のアパートで一人暮らし。
ビデオ通話の相手は、ベトナムにいる父・ルックさん(65)。開店資金の大半はアルバイトで貯めた金で賄ったが、足りない分はベトナムの両親が援助してくれた。

タムさんの父・ルックさん:
以前は全然料理していなかったのに、レストランをオープンしてびっくりした。心配だけど、頑張ってほしい

コロナ禍で2年以上直接会えていないが、家族との毎日の会話がタムさんの原動力となっている。

ファン・ティ・ホン・タムさん:
電話する時、お母さんとお父さんの顔を見たら疲れを忘れちゃう

オープンして1週間余り。今のところ長野のベトナム人が足を運んでくれていて、客足はまずまずだ。

ファン・ティ・ホン・タムさん:
ありがとうございました

客を見送る時のおじぎは、すっかり日本流だ。

コロナ禍で先行きは不透明だが、タムさんは前向きだ。自身が長野の街を気に入ったように、長野の人にベトナムの味を気に入ってもらえたらと話す。

ファン・ティ・ホン・タムさん:
もうちょっとメニューを多くしたい。日本人もベトナム人たちも、いっぱい来てほしい。コロナ終わって(生活が)普通になると思って、今は頑張ります

(長野放送)