福岡・北九州市で2021年、飲酒運転してひき逃げし、女性を死亡させた罪に問われている男の初公判が開かれ、男は起訴内容を認めた。

「失恋し、毎日酒を飲むように…」

過失運転致死などの罪に問われているのは、北九州市門司区の建設作業員・由井希被告(22)だ。

過失運転致死などの罪に問われている由井希被告
過失運転致死などの罪に問われている由井希被告
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起訴状によると、由井被告は2021年11月、北九州市小倉北区の国道で、飲酒した状態で普通乗用車を運転し、道路上に座り込んでいた片山桜子さん(当時31)をはねて死亡させ、そのまま逃走したとされている。

2月3日の初公判で、由井被告は起訴内容を認め、検察側はその後の冒頭陳述で「事件の2カ月前に失恋をして、毎日酒を飲むようになった」「友人から心配されても、飲酒運転をやめようとしなかった」と指摘した。

また、由井被告は当時、携帯電話で話しながら運転していて、事故の直後に「やばい」と知人に語っていたことも明らかになった。

酒の影響ないと過信 ためらわず車へ

被告は初公判を前に、拘置所で取材に応じた。

初公判前に取材に応じる由井被告
初公判前に取材に応じる由井被告

記者:
事故当時の状況は覚えていますか?

由井希被告:
相手が(道路に)座っていて…はねてしまって、どうしていいか分からなくなって…飲酒運転だったってこともあるので。見えてなかったんですよ

拘置所で取材に応じる由井被告
拘置所で取材に応じる由井被告

事件があった現場の道路上には、靴やマスク、そして車の部品のようなものが散乱していた。
なぜ飲酒運転をしたのか? なぜ救急車を呼ばなかったのか?

現場に散乱する靴やマスク
現場に散乱する靴やマスク

由井被告は、拘置所でTNC記者の接見に応じ、あの夜のことを語った。

記者:
飲酒運転の前、どこで酒を飲んでいた?

由井希被告:
友人たちと会って、公園でバーベキューをしていました。午後10時くらいから午前1時くらいまで

記者:
どのくらい飲んだ?

由井希被告:
缶ビール3本と、缶チューハイ2本です

事件前、現場近くの公園に友人たちと集まり、バーベキューを楽しんでいたという由井被告。約3時間の間に、缶5本のアルコール飲料あわせて約1.8リットルを飲み干したという。

そしてバーベキューが終わると、由井被告は、ためらうとなく車に乗り込んだ。

記者:
当日、酔っぱらいの程度は?

由井希被告:
フラフラもしていなかったし、判断力がちょっと鈍っていたくらい。運転は、自分ではできていると思っていた

酒の影響はないと過信し、車のハンドルを握ったのだ。

過去にも飲酒運転「罪悪感を失っていた」

さらに、飲酒運転は今回が初めてではなかったことも明かした。

由井希被告:
アルコールが回っていて…何回か飲酒運転を繰り返していて、罪悪感を失っていました

記者:
飲酒運転は、これまでに何回くらい?

由井希被告:
片手で数えられるくらい。これまでの飲酒運転も、友達の家に自分が勝手に行って飲んで、車に乗って帰っていた

記者:
いつからしていた?

由井希被告:
2021年の夏とか、そのあたりです。これまでに事故は起こしていません

記者:
自分は大丈夫だろうという気持ちがあった?

由井希被告:
ありました。当時も、運転できると思ってひとりで帰った

…今までは大丈夫だったから。

由井被告は、この安易な考えで飲酒運転しただけでなく、携帯電話で話しながらハンドルを握り、取り返しのつかない結果を招くことになる。

由井希被告:
被害者のことは見えていなかったが、ドーンという音がしました。いろんな考えが頭によぎって、最初は何していたか分からなかったです。人をひいてしまった、まずい、どうしたらいいか分からない。バレたらもっと大事(おおごと)するんではないかと思っていました

頭を抱え…事件の情景が蘇る様子も

事件発生時、被害者の片山さんは交際相手の男性と一緒だった。一瞬にして最愛の人を失った悲しみは、計り知れない。

由井被告は、車から降りて救護もせず、そのまま現場から逃走。

片山さんは病院に搬送されたが、死亡が確認された。
事件後、警察は小倉北区の駐車場で逃げた車を発見し、車内にいた由井被告を逮捕した。

記者:
警察に捕まった時の状況はどのような感じだった?

由井希被告:
自分がひいたかどうか曖昧で…お酒が入っていたので、ごまかそうとしたんですけど、警察の人に「自分が何やったかわかっとるか?」と言われて認めました

記者:
逮捕された時、誰の顔が浮かびましたか?

由井希被告:
家族の顔と、雇ってくれてる社長とかの顔が

静かに当時を振り返っていた由井被告が、突然頭を抱えたのは、被害者の話をした瞬間だった。

記者:
時折、頭抱えるしぐさをしていますが、片山さんをひいた時の情景がフラッシュバックする?

由井希被告:
します。(片山さんの)交際相手の目の前で助けずに逃げた。その人の怒りとか想像してしまうし、痛みとかも…。涙が出るほど想像してしまう

頭抱えるしぐさを見せた由井被告
頭抱えるしぐさを見せた由井被告

記者:
自分が交際相手の立場だったら?

由井希被告:
立ち直れないです。許せないと思います

改めて自らの過ちを後悔する由井被告。
最後に被害者・遺族に対する償いについて聞くと…

由井希被告:
人生を棒に振ったと思います。本当に大変な事をしたと思います

記者:
どう償っていく?

由井希被告:
今は、自分がどうこうして償えるとは思っていないですけど…。どうしていいか…。どうしよう、どうしようという感じ。自分が何も考えずに飲酒運転をした結果、取り返しのつかない事になってしまってすみませんでした

由井希被告:
今後は、お酒も一切飲まないし、自分には運転する資格はないです。運転することも酒を飲むこともやめます

次回の公判は、3月1日を予定している。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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