すべての人が安心して社会参加へ

誰もが快適に移動できるように、飛行機、列車、タクシーなど、さまざまな交通機関が協力した実証実験が始まった。

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全日空やJR東日本など、公共交通機関の事業者が連携して3日から始まった「ユニバーサルMaaS」の実現に向けた実証実験。

車いすユーザーが、快適にストレスなく移動できるサービスの構築を目指すものだ。

これまでも、利用者が航空券を予約する際、空港内などでの介助のため歩行や車いすに関するサポート情報を入力していたが、今回の実験ではこのサポート情報を目的地までに利用する電車、タクシーなど複数の公共交通機関一括共有することに。

万が一、予定の便や電車に遅れが発生した場合でも、リアルタイムでその情報が事業者間で共有されるようになっている。

実証実験に参加・五十嵐裕由さん:
(サポートを)当日その場でお願いすることが多いと思うが、それが非常に不安で仕方ない。サポートにかかる時間なんかも全く読めないので、さらに不安がのしかかってくるというのがあって、一括サポート手配は、しっかり運用ができればわたしたち“外出困難者”であっても、最後まで安心して旅行を楽しめるのではないかとものすごく期待をしている

2月末までの実証実験で課題を見いだし、本格運用に向けて検証が進められる。

全日空・平澤寿一上席執行役員:
ドアtoドアで各事業者が連携することにより、シームレスにつなげていくことを目指している。そのためには、ぜひとも企業・団体・産業の壁を超えて『共創』を実現していきたい

シームレスな企業間の協力が鍵

Live News αではマーケティングや消費者行動などを研究している一橋大学ビジネススクール准教授、鈴木智子さんに話を聞いた。

三田友梨佳キャスター:
誰もが移動しやすいユニバーサル MaaSが社会に根付くといいですね?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
ユニバーサル MaaSのポイントはシームレスであること、つまり快適な移動が途切れることなく続くことが大切です。利用する列車、タクシー、飛行機などがスマートフォンで予約から支払いまで行えて快適に移動できるサービスを一括して提供できないと本来のMaaSとはいえません。その実現は企業間の協力が鍵になります。

三田友梨佳キャスター:
企業間でどのような協力が求められるのでしょうか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
日本の交通事業の多くは民間企業が運営しているため、MaaSの推進にあたっては競合関係にある事業者間の協力が求められます。なかでも互換性のあるデータの共有と統一アプリの構築が鍵になります。例えば、今回の実証実験から得られた利用者の行動データや課題などの情報をどの企業もアクセスできるようにすることが大切です。さらにユーザーが利用する予約・決済アプリが企業ごとに開発されて乱立するのではなく、使い勝手の良い統一アプリが構築されることが望まれます

三田友梨佳キャスター:
企業間の協力には難しい面もあるかと思いますが、誰も置いていかない社会の実現のために連携の輪が広がるといいですよね?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
今回の試みのように、障がいのある方や高齢者、訪日外国人に優しい取り組みは、誰にとっても優しい場合が多いです。つまり、誰も置いていかないということは、誰にとってもメリットのある取り組みと言えますユニバーサル MaaSの実現は、一部の方たちに向けたコスト負担ではなく、あらゆるユーザーに向けたサービス向上のための投資ととらえることも出来ます。すべての人にとってストレスフリーな移動が実現することを期待したいです

三田友梨佳キャスター:
私たちの生活は様々な移動手段によって支えられています。すべての人がためらうことなく安心して移動できるように、デジタルを活用して今まで以上に個人に寄り添うサービスが広がっていって欲しいと思います

(「Live News α」2月3日放送分)